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2022年読書振り返り

急にnoteロゴが変更されたとのアナウンスがあったので、いつものタイトルテンプレートが使えなくなっちゃいました。まあ、とりあえずしばらく空タイトル画像でいきましょう。(※この後2023年1月5日に突貫工事で新しいテンプレートを設置)

というわけで、年末振り返り企画です。

今日は今年の読書を振り返っちゃいます。
今年も色んな本に巡り会えて幸せでした。
書評もいっぱい書かせていただきました。今年はけっこう充実してた気がします。

では、江草的に良かった本、印象に残った本をピックアップ!

ダニエル・サスキンド『WORLD WITHOUT WORK』

比較的最近読んだというのもありますが、やっぱりまず印象に残ってるのは『WORLD WITHOUT WORK』ですね。

「AIの進歩で仕事がなくなる論」は今や珍しくなくなりましたが、ただ「じゃあ教育の充実やリスキリングで新たな仕事を得られるよう頑張ろう」みたいな努力主義的楽観論での見方が優勢です。

そういった楽観論に水を差して、「ほんとに仕事がなくなっていく」ということの意味と、それがどういう世界につながりうるのか、私たちは一体どうしたらいいのかを描き出した一冊。

全体に丁寧謙虚な押し付けがましくない姿勢が好感を持ちました。

「未来の働き方」というのは個人的にもとても興味があるトピックでありまして、とても勉強になりつつ面白かった書籍として、栄えあるトップバッターでのピックアップです。

↓書評も書いてます。

國分功一郎『暇と退屈の倫理学』

続いては『暇と退屈の倫理学』。これもとても面白かったです。

「暇のなかでいかに生きるべきか、退屈とどう向き合うべきか」を問うてる本書は、「暇」や「退屈」という誰もが身近な概念を題材にしながら、何事も考え抜く探求の楽しさを教えてくれます。そして読後には「暇」や「退屈」のとらえ方が変わってしまう。
そんな哲学の醍醐味が存分に発揮されてる一冊です。

こう聞いて「仕事やら何やらで忙しくって退屈するような暇なんてないよ!」と憤りたくなる方こそ、むしろ読んでいただきたい良書です。
憤るのは、あなたの欲してる「暇」、感じてる「退屈」とは何かを掘り下げてみてからでもいいでしょう?

『WORLD WITHOUT WORK』が指摘した「仕事がなくなっていく世界」においてはますます「暇」と「退屈」との付き合い方が人類的な課題となってきます。
今後の世界における基礎教養として、広く読まれてほしい本として推し推しです。

オリバー・バークマン『限りある時間の使い方』

お次は『限りある時間の使い方』。

(なんかピックしてる本のジャンルがだいたいかぶってる気もしますが、読みたい本というのは読者のその時の気分にかなり影響されるのでまあ仕方がないのです)

今でも書店で平置きレベルで販売されてるようなベストセラーの本書。
さすがベストセラーになるだけあって、とても良い本でした。
先にとりあげた2冊よりも、読みやすい文体、読みやすい文量なのも広く受け入れられた要因でしょう。

「タイムパフォーマンス」を意味する「タムパ」という言葉が流行ったり、YouTube動画だけでなく映画やドラマまで倍速視聴するような「ファスト視聴スタイル」が出てきたりと、現代社会では時間あたりの効率をなんとか高めようという空気が色濃くあります。
その空気に待ったをかけるのが本書で、そういった時間あたりの効率を高めようとする生き方は罠なんだと喝破します。

みんな薄々「タムパ」や「ファスト○○」にモヤモヤを感じてはいたけれど、このモヤモヤが何なのか分からない。そこを私たちと同じ目線の高さで言語化し紐解いてくれる本書がちょうど激刺さりしたのでしょう。

江草もグッサグッサ刺さってしまった人間の1人でして、本書に感銘を受けてその後「時間との向き合い方」を考え直すようになりました。(その結果、妻にも「まるで別人になった」と褒められたレベル)

読みやすさ、手にとりやすさもあいまって、みなにオススメできる一冊です。

アンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

今年は小説でも最高レベルの作品に出会えました。SF小説『プロジェクト・ヘイル・メアリー』です。

これはほんとに面白くって、「ページを繰る手が止まらない」「寝る間も惜しんで読む」というのはまさにこの本のためにある言葉と思うほどの読書体験でした。読み終わった時は感動のあまりしばらく呆けてましたからね。

何かを語ろうとするとすぐさまネタバレになる作品なので詳細は書けませんが、あの『火星の人』と同作者だけあって、問題解決型志向の理系脳の方々には心底たまらない作品だと思います。

舞台設定もSFらしい壮大なスケール感と綿密な説明により十分に説得的なリアリティを伴っていて、それでいてストーリーも先が読めない波乱万丈で飽きさせない。超弩級のエンタメに仕上がっています。

江草以外でも読んだ人はみなことごとくオススメしてますし、Amazonの星も約3000レビューで5つ星中で平均4.8点を叩き出すとてつもない高評価水準です(下巻)。

「SFは苦手」という人以外は超々オススメです。

まあ、とりあえず読みましょう。

その他良かった本

一つ一つとりあげるとキリがないのであとは羅列で済まさせてもらうと、他に『消費ミニマリズムの倫理と脱資本主義の精神』『世界は贈与でできている』『給料はあなたの価値なのか』『仏教思想のゼロポイント』あたりは再読したいレベルの良書でした。
それぞれ書評も書いてます。

来年も良い本に出会えますように

というわけで、豊作で何よりの一年でした。

本を読んで、その感想を書いて、他の人が書いてる感想も読んで、その本を買って、その本を読んで……という「書く」「読む」のサイクルがとても楽しい。

けっこう頑張って読んではいるのですが、時間に制約はありますし、他の人のオススメを聞いた途端につい買ってしまうことも多いので、積読は増える一方です。

まあ書籍にもあるように『積読こそが完全な読書術である』とも言いますから、積読こそ読書好きの醍醐味のひとつでしょう(なお、この本そのものを江草は絶賛積読中です)。

来年も良い本に出会えますように。


なお、ご参考までに昨年の振り返り記事も貼っつけときます。(noteでなくブログで書いてた時代の記事)


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