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テキストをカラテする

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テキスト創作の成果物とその紹介
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#小説

我が背の春よ

我が背の春よ

 厳冬の大地に紛れる私の白い被毛は、遠目の追手を躱すに向いている。背に跨るバナルは、しゃくりあげながら、私の進むに任せていた。

「父さん、大丈夫かな」

 鼻をすすったバナルが、手袋越しの幼い手で私の額を撫でる。私は返事の代わりに、額から突き出る六角柱の結晶を光らせた。我々角犬のオスは角の大きさで序列を決める。私は特別に立派な角と体格を持つ角犬として創られ、そのおかげでここまで逃げ延びたというの

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古木の番

古木の番

 甘い香の匂いが汗で消え、合わない沓で踵から血が滲む頃、マホは、山の祠に辿り着いた。刺繍が入って重たい花嫁装束から手を放し、深く息を吸う。紅樹独特の胸がすく香りが、病んだ肺に満ちる。おまえには、この匂いが薬になると、姉はよく言っていたものだ。

「大丈夫だよ、私は幸せだから。あなたも体を治して、どうか幸せに」

 山の加護と引き換えに、ヌシに差し出す「つがい」が姉に決まった。里の衆が報せと「誠意」

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【短編小説】山野辺ゆきみと篠井研/冬

【短編小説】山野辺ゆきみと篠井研/冬

 始業式のあと、下駄箱で靴を履き替えたけんちに「よう」って挨拶したら、けんちは最初、知らない人用の顔でアタシを見た。それから、「は?」って言って、目をパチパチさせた。

「べゆみ、髪」

 アタシの髪は、肩甲骨にかかるぐらいあったんだけど、新学期が始まる前に、耳が隠れるぐらいに揃えて切っちゃった。

「なん……なにそれ」

 アタシが自分の長い髪が大好きなのを、けんちは知ってる。

「姉ちゃんとケ

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【短編】庸川姐妹、再会に遊ぶ

【短編】庸川姐妹、再会に遊ぶ

 汎州は胡門府、庸川区。幅広の川による水運で豊かな土地は人の流れも早く、栄える街独特の揉め事も多い。

 そうした揉め事を解決する街の顔役のひとつに、馮家がある。あまたの食客を抱え、赴任してくる官吏よりも重んじられる一家である。

 その馮家の末娘である馮夏杏は、川沿いの森で木の幹を蹴って、人影を追っていた。

「返せえ!」

 数丈先の相手に大きな声を張り上げ、夏杏は、真新しい剣の鞘を握りしめた

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山野辺ゆきみと篠井研

山野辺ゆきみと篠井研

 学校帰り。

 校門前でわたしを呼び止めたべゆみと、がんセンターの真ん前にあるデイリーヤマザキで買ったアイスを食いながら、川沿いの遊歩道をだらだら歩いている。やすらぎ堤とかいうのんきな名前だけど、わたしとべゆみがここを歩くのは、あんまり楽しいことがない時だ。

「あー、姉ちゃんの車どっかで壊れねーかな」

 べゆみは学校指定の鞄を振り回す。わたしはそれを足を止めて避ける。べゆみの担任は置き勉禁止

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飛盗千里

飛盗千里

 夏だと言うのに、廟には紙銭の雪が降っていた。

 その雪を無遠慮に踏みつけ、《飛盗千里》墨火間は棺の前に立つ。弔問客たちは、盗人風情が堂々と、それもしたたか酔って闖入した事に、驚きと怒りを露にした。

 目元が酒精で赤く染まる火間は、片手で三升入る酒甕をあおる。酔いでもしなければ、この場に立つことすらできなかった。

「……趙孤舟、趙大侠よ」

 火間は豪奢な棺を甕で殴った。馥郁たる青竹の香りが

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あわいのデバッガーズ

あわいのデバッガーズ

「あのォ、ここ、無敵のアレイさんの事務所っすか?」

 自宅兼事務所のインターフォン画面に、IKEAのクソでかい青鞄を肩にかついだ、ニットワンピース姿の赤鬼が映っている。

 新手のバグか?

 無敵のアレイ、こと、私、坂本亜鈴はボンヤリそう思いながら、口から現実的な警告を発した。

「警察呼びますよ」

「待ってくださいっす! ちょっと待って!」

 赤鬼がそう言いながら、IKEAのクソでかい鞄

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青島Capriccio①悪食ハンス

青島Capriccio①悪食ハンス

 アルプにも好みの味は色々あるが、ハンスは特に、困り果てた若い女だけが持つ、鋭い苦味を愛していた。

 その悪食が災いし、悪い卦に当たることあまた。今回もそうらしかった。

「僕は帰るぞ。好きに始末をつけ給え」

 幼い美貌に似合う冷たい声で言い残し、ハンスより2世紀(ふたまわり)年上の朋友、ドミニクは窓から逃げた。この朋友は、ハンスを必ず一度突き放す。ここが膠州湾租借地と呼ばれる頃から、ずっとこ

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