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営業時代の話part⑪

おはようございます!

今日は「営業時代の話」をお送りします!

▼第1話はコチラ

それでは本日もよろしくお願いします!

※登場人物、企業、団体は全てフィクションです。

●焼肉

「この後飯でも食いにいくか」

仕事が終わると、本村さんと私は藤橋さんから食事へと誘われた。そう言えば入社してからまだ会社の人たちと食事を共にしたことはなかった。それに、今日は少し落ち込んでいたので、ちょうどいい機会だと思った。

「お待たせ。今日、何か食べたいものとかある?」

藤橋さんは我々にそう尋ねる。

「僕は少しお腹が空いたので、ちょっとガッツリ系なお店が良いです」

「私もお腹が空きました!」

私と本村さんは正直にそう答えた。こういう時はもっと気を使うべきなのかもしれないが、我々ゆとり世代にはそんな気遣いは出来なかった。

「おお、いいね。なら焼肉でも食いにいくか! 良いところ知ってるからついておいで」

藤橋さんは近くに馴染みの焼肉屋さんがあることを教えてくれた。私たちは藤橋さんの後をついていく。1週間経ってもまだ丸の内に慣れていない私は、どんなお店に連れていってくれるか少しだけワクワクしていた。

「ついたぞ。ほら、入った入った」

藤橋さんは私たちをお店の中に入るように促した。

「は、はい! 失礼します!」

そう言いながら入ったお店は、確かに焼肉店だ。しかし、私が想像していたものとははるかに違うものだった。何故なら、全員”立っている”からだ。立っているとはつまり、スタンディングの焼肉店だったのだ。

「珍しいでしょ、立ち食い焼肉。でも安心して。味は確かだから」

少し困惑している私たちをよそに、藤橋さんは楽しそうな表情を浮かべてそう言った。

「大将こんばんは! 新人連れてきたよ!」

「おぉー! 藤橋ちゃん! 久しぶりだね。元気してた?」

店の奥から、この店の店長らしき人があらわれた。前掛けをし、頭にはねじり鉢巻きをし、口ひげをたくわえている。まさに”焼き肉屋の店長”と言わんばかりの風貌である。

「最近忙しくてね。それこそ、我が社に待望の新人二人も入ったから、今日は紹介に来たんですよ」

「そうだったんだ。それにしても、やけに若い人入れたんだね。御宅の会社、年よりばっかりだから平均年齢下げにいったの?」

「そう! その通り! さすが大将、わかってるね」

二人は軽快なトークを飛ばしていた。まだお酒も入っていないのに、普段会社では一切みたことのない笑顔とトーンで話す藤橋さんに我々は少しだけ圧倒されていた。

「よし、今日は会社のことは気にせず飲み食いしようぜ。二人ともビールでいい?」

「は、はい! ありがとうございます」

「大将! とりあえず生3つ!」

「はいよー!」

店の中には、藤橋さんと大将の声が響いた。

To be continued…

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