３０日間の革命 ＃毎日小説２５日目

　それから加賀は、神原たちに革命についての計画を全て打ち明けた。その話を聞きながら、手崎はあることに気が付いた。

　（そっか。加賀先輩が私に話しかけてくれたのは、この計画のためだったんだ）

　内心とても嬉しかった。地味で目立たない自分に声をかけてくれ、このとんでもない計画の仲間にも誘ってくれた。正直、革命については何も想像は出来ないが、これから加賀と一緒に何かをやれるということだけで、手崎は断る理由が見当たらなかった。

　馬場は話を聞く前から心は決まっていた。ただ、自分以外にもメンバーを誘っていることは気に入らなかった。そして、坂本のとなりにいて、腹心的な存在になっている加賀も気に入らなかった。今は我慢をして、いつかそのポジションを奪ってやろうと、そう心の中で思った。

　神原だけは加賀の話についていけなかった。坂本や加賀は、人気者であり自分とは遠い存在だと思っていたが、より遠くの存在に感じられた。革命を起こすなんて大真面目に話されても、何をやるのかすら理解できずにいた。

　一通り革命についての話を終えた加賀は、更にこう続けた。

　「正直、今の話だけで理解してくれたとは思わない。でも俺は、ここにいるみんなの力が必要だと思っている。直感でもいいから、この場で参加するかしないかの返答をほしい」

　すると神原がすかさず口を開いた。

　「ちょっと待ってくださいよ。正直、今の状況を何一つ理解できていないです。それなのに今返答しろなんて無茶言わないでくださいよ。他の人だってそうでしょ？」

　神原は、手崎や馬場の方を見て言った。

　「いや、僕は参加しますよ。今日はそのためにここに来たんですからね」

　馬場は、何の迷いもないような口ぶりだった。

　「わ、私も参加しようかなと思ってます」

　手崎も馬場につづき、短い言葉で参加を表明した。

　「ちょっとちょっと、あなたたち話を聞いていました？　これは学校行事の話じゃないんですよ。下手したら退学なんてこともあり得るような話じゃないですか！　何でそんなに簡単に参加しようなんて言えるんですか」

　まさか二人がこんなにあっさり参加を表明するとは思っていなかった神原は、更に困惑した。

　「ならあなたは参加しなければいいじゃないですか。参加を強制している訳じゃないんだし、選択権はこっちにあるんだから」

　馬場は神原を追い込んだ。すると加賀が、

　「馬場君の言う通り、参加の強制はしないよ。確かに神原君が言うように、下手したら退学だってあり得ると思う。そんなリスクのある話だから参加しないっていうのも、もちろん大丈夫だよ」

　馬場とは対照的に、優しい口調で話した。

　「いやいや、参加しなくたって、あなたたちは学校で革命を起こすつもりなんでしょ。そしたらどっちにしろ、革命に巻き込まれるじゃないですか！　革命を思いとどまるっていう選択肢はないんですか？」

　「うん。残念ながら、その選択肢はないよ。学生全員を巻き込むことにはなっちゃうけど、それでも意味のあることだと思っているから」

　穏やかではあるが真剣な眼差しで話す加賀に、神原は少し気圧された。

　「……そんなこと言われたって、今すぐに答えなんてだせないよ」

　「なら、先輩は不参加ということでいいじゃないですか。こちらの二人は参加するって言ってるんだから、もう時間の無駄ですよ」

　馬場は変わらず神原を追い込むような口ぶりで話した。

　「馬場君、参加するもしないも強制はしないって言ったよね。だから、全員が自分で答えを出すまでは決められないよ」

　加賀と馬場の間に少しだけピリッとした空気が流れた。それを察知してか、手崎が口を開いた。

　「ま、まあまあ、まだ下校時間までは余裕があるので、もう少し考えても良いんじゃないでしょうか」

　すると神原は下を向きながら、拳に力を入れて話し始めた。

　「いいよ、わかったよ。僕も参加するよ。どうせ巻き込まれるなら、変な方向にいかないように、内部から君たちを監視することにする。僕も少なからずこの学校に窮屈さを感じていたからね。でも、過激なことだったり、納得できないことがあれば全力で反対するけど、それでも良いの？」

　いつしか、神原の言葉から敬語がなくなっていた。そして、加賀は穏やかな笑顔で答えた。

　「もちろん。神原君は、俺たちが変な方向に行きそうになったら、全力で止めてくれ。そして一緒に革命を成し遂げよう」

　こうして、加賀に呼ばれた三人は全員革命のメンバーに参加することが決まった。

　「よし、これで主要メンバーが決まった。明日、他のメンバーにも君たちを紹介したいから、放課後またここに集まってくれ」

　それぞれ別の思惑で参加することを決めた三人を加え、これから本格的に革命へと動き出したーー

▼３０日間の革命 １日目～２４日目
まだお読みでない方は、ぜひ１日目からお読みください！

30日間の革命｜takuma@note作家｜note

takuma.o