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30日間の革命 #毎日小説93日目

 馬場は演説が終わると深く一礼した。そして、マイクを坂本へ渡すとき、「お疲れ様でした」と声をかけた。完全なる勝利を確信していたからだ。そもそも馬場がなぜ白の会に反旗を翻したのか。きっかけはやはり手崎の一件だった。

 最初の集会が終わったあと、馬場と手崎はそれぞれ別の形で周囲から注目されるようになった。馬場は、1年生にも関わらず坂本や加賀といったメンバーと肩を並べていたことでその知名度や影響力を更に向上させていた。対する手崎は、地味で目立たないのにでしゃばっているとマイナスな方向に捉えられていた。それを噂で聞いた馬場は、この機会を利用して「坂本越え」を狙う計画を立てた。

 まずは手崎の問題を大きくすることから始めた。この学校では女子バレー部が強い力を持っていることを知っていた馬場は、女子バレー部に目をつけされるため、橋田加代子に近づき手崎の噂を流した。それにより、馬場の思惑通りに女子バレー部のキャプテンである江藤に目をつけられた手崎は、より過酷な状況へと追い込まれていった。この問題を坂本に気づかれないように、当時交際していた仙波を相談に行かせ、目を逸らしていた。

 そして、手崎の相談にのりながら信頼を得ていくと同時に、女子バレー部の江藤にも接近した。江藤はこの学校で強い権力を持ちたいと思っていたので、馬場との思惑も一致し、交際する形で結託したのだった。仙波には形式上別れるという話をし、いまだにつながりを持たせていた。

 女子バレー部と手崎の問題が解決すると、予想通り馬場の株は一気に急上昇した。江藤と交際をしていることもそのタイミングで公表することで、もはや知名度と影響力は坂本を超えるものになっていた。白の会は夏の集会で100人を集めることになっており、このタイミングがベストだと考えた。ここで一気に坂本をつぶす。馬場はそれを実行に移したのだった。

 馬場の想定通りに自体は動いており、今日この場で坂本が何を話しても、生徒会長の座に戻ることはないと確信していた。中学の頃から憧れており、見向きもされなかった自分が、今では本人を追い詰めている。そのことが馬場にとっては何よりも嬉しかった。勝ち誇った顔でマイクを渡すと、坂本は笑顔で受け取った。その時の笑顔が、馬場にとっては一生忘れられないと思うほど、儚く、そして美しかった。

 坂本はマイクを持つと、会場全体を見渡した。その数秒間、会場は沈黙に包まれた。この場にいる全員が坂本に注目し、一種の緊張感が沈黙と共に流れていた。

 坂本はゆっくりと口を開き、演説を始めた。

▼30日間の革命 1日目~92日目
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takuma.o

 

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