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30日間の革命 #毎日小説94日目

 この場にいる全員が注目する中、坂本はゆっくりと口を開いた。

 「私は今、この学校の長い歴史の中で最も重要な決断を下すであろう瞬間に、こうして皆さんの前に立って話せることを嬉しく思います。もしかしたら、この学校だけではなく、この日本の全ての教育にも関わることかもしれません。

 約150年前に、日本という国は大きく生まれ変わりました。新しい時代を切り開くべく、多くの人たちが動き、犠牲になり新しい日本の夜明けを夢に見ました。それから150年。今の私たちは、かつて彼らが夢を見た日本になれているのでしょうか。そんな昔の人がやったこと、私たちには関係ないですか? 今の日本がどうなろうと無関心でいられますか? 誰かが敷いたレールの上を歩くことが正解なのでしょうか。

 それだけじゃない。いつ、どこでも、誰でも気軽にインターネットで交流できます。でも、ネット上では無責任な言葉が多数飛び交っています。ただ、どんな発言をしても基本的には良いと思っています。匿名だって構いません。でもね、責任は持つべきです。その発言によってどんな影響が出るのか考えたことがありますか? 自分が書き込んだことで、誰かが傷ついたりしても無関係ですか? 

 私はそんな状況を変えるべく、今この場所に立っています。今こそ、私たちは変わらなくてはいけません。これから、また新しい時代がやってきます。それも、今までにないほどのスピードで。その時に、私たちはどうなっているのでしょうか。恐らく今のままでは取り残されるでしょう。だから、変わるなら今しかないんです。今まで通りが一番楽です。でも、その道を選んではいけないのです。

 今この場にいるみんなの中にも、変わろうとしている人はいます。苦しいこともあったけど、何とか立ち上がろうとしている人もいます。困難な選択と分かっていても、自分の足で立ち向かおうとする人もいます。だから私は信念をもって活動を続けていきます。きっとこの状況は変えることができるし、変わるだろうということを信じて。

 私には夢があります。私たち一人ひとりが責任を持って自分の将来を決められるようになること。

 私には夢があります。いつの日か、学校が本当の意味で「自ら学び、自ら考える力などの[生きる力]を身に着ける場所になる」ことを。

 私には夢があります。学校という場所が、お互いのことを認め合い、笑顔が溢れる場所になることを。

 みんなが自由と責任を持って過ごせる場所にするために、この学校からその鐘を鳴らしましょう」

 演説を終えると、坂本はその場で深くお辞儀をして、壇上から降りた。会場は静寂に包まれていた。そして、そのままの雰囲気で集会は終わりを迎え、夏休み最後の登校日を終えたのであった。

 坂本の演説は、馬場の演説とは対照的に抽象的であり、具体的に生徒会の話を一切行わなかった。なぜそのような演説にしたのか、後から加賀は坂本に聞いてみたが、いつも通りニコッと笑顔を見せるだけではぐらかされた。

 いよいよ夏休みが終わり、生徒会長を決める投票が行われる。


▼30日間の革命 1日目~93日目
まだお読みでない方は、ぜひ1日目からお読みください!

takuma.o

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