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30日間の革命 #毎日小説38日目

 次の集会は、白の会の活動にとって大きな試金石となる。そう坂本は思っていた。学校行事でもないので、自主的に学生たちに「参加したい」と思わせなければならないということ。そして、何よりこの集会を成功させなければ、革命自体も達成するのが難しくなるということ。100人の気持ちを動かすことも出来なければ、自分たちで学校を変えることなんて到底できることじゃない。そう坂本は思っていた。

 そこにきて、更に不安な要素も増えた。森下の離脱である。自ら認めたものの、影響力の大きい森下が不在となれば、もちろん痛手となる。人数を集めるだけなら、馬場でも十分その役割は果たせるのだが、森下だからこそ、白の会の正しい認識を伝えながら、誠意をもって学生を集めてくれるので、集まる学生たちの意識も違う。事実、先の集会の後、不正確な噂が広まったのは、主に馬場が集めた1年生が中心となっていた。

 どんな噂であっても、白の会を認知してもらうことが優先だと考えていたので、今の時点ではそれも問題はない。しかし、次の集会後も、同様に変な噂が広まれば、不信感を持たれるのは間違いない。そうすれば、革命も失敗に終わることが見えていた。だからこそ、次の集会の人数集めはとても重要であった。興味本位で参加してもらうのではなく、ある程度は「学校を変えたい」という意識を持って参加してもらう必要があると坂本は考えていた。

 そして後日、森下を除いたメンバーが、放課後第二視聴覚室に集まり、再びミーティングを行った。

 「では、次の集会に向けて役割を決めていきたいと思う。まず現時点で私が考えた役割を発表するね。あくまで私の考えだから、意見があれば言ってね」

 そう言うと、坂本は黒板へ役割を書き始めた。

 「集会の内容を決めたり、計画を立てる計画班は、私と馬場君が。会場の確保や学校への申請はセトが担当。そして、セトにはもう一つ仕事をお願いするけど、神原君と手崎さんとで、集会への参加者集めの勧誘班をお願いしたいと思っているわ」

 この担当分担は、メンバーも想定していなかった。なぜなら、森下が抜けると話したとき、馬場がその代わりを務めるという話しだったからだ。それなのに、馬場は計画班に入り、その他のメンバーが勧誘班に入るという意外な分担だったことに、メンバーは驚いていた。

 馬場は当然、手を上げ意見を言った。

 「先輩、計画班に入れていただけることはありがたいのです。が、先日森下先輩にも参加者集めは僕が代わるとお伝えしましたし、何より坂本先輩自身がそのことを認めていたじゃないですか。それが変更になった理由を教えていただいてもよろしいでしょうか」

 馬場の言葉には少しのとげを感じらた。加賀もそれを感じていたが、確かに変更になった理由は聞きたかった。加賀自身も、馬場とペアになって動く予定だったので、すぐにそれが外れたことが意外だった。

 「ええ。確かにあの時は、馬場君に森下君の代わりをお願いしようと考えていたわ。でも、改めて考えたとき、次の集会には、2年生や3年生の人数をもっと集めたいと思ったの。だから、手崎さんや神原君に勧誘班に入ってもらおうと思って、この分担にしたわ」

 すかさず馬場が、

 「1年生の参加者は必要ないということでしょうか?」

 と坂本に少し詰め寄るように問いかけた。

 「いえ、そんなことはないわ。それに、馬場君のおかげで、前回の集会以降、1年生にはかなり白の会について認知してもらったと思う。だから、今回は馬場君に計画班に入ってもらって、1年生たちに響く内容を一緒に考えて欲しいと思ったのよ」

 教室には少し緊張した空気が流れていたが、坂本はいつもと変わらず、穏やかな表情で話していた。すると馬場も一瞬の間を置き、いつもの笑顔に戻り、返答した。

 「なるほど、そういうことですね。わかりました。まあ、僕も元々は計画班希望でしたからね。では、1年生にも魅力が伝わるように、しっかりと内容を考えましょう」

 鋭く詰め寄るも、一瞬で笑顔に戻る馬場と、どんな状況であっても、いつも通り穏やかな表情で話す坂本を見て、手崎と神原は少しの恐怖を感じた。加賀は、またこれから厄介なことが起こりそうだと不安を抱えて、次の集会に向けてのスタートを切った。


▼30日間の革命 1日目~37日目
まだお読みでない方は、ぜひ1日目からお読みください!

takuma.o


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