営業時代の話part⑮
おはようございます!
今日は「営業時代の話」をお送りします!
▼第1話はコチラから!
それでは本日もよろしくお願いします!
※登場人物、企業、団体は全てフィクションです。
●見定め
「今日はフルコースでいく」
社長のその一言に私たちの笑顔は引きつった。フルコースが何を意味していたのかはわからなかったが、確実に帰るのが遅くなることだけはわかった。そしてカウンターからママがウイスキーの入ったグラスを持ってくる。
「よし、飲もう!」
社長は上機嫌でそう言うと、グラスを高く掲げ乾杯をした。私はウイスキーが苦手であったが、ここは飲むしかない。そう思い、少しだけ口に含んだ。あの独特の香りが口の中いっぱいに広がる。やはりウイスキーは苦手だ。少しだけ顔をしかめながらも何とか一口飲み込んだ。
「ならまずは自己紹介からだな。君たち、ママに挨拶しなさい」
社長はグイっとウイスキーを口に含み、私たちにそう言った。
「は、はい! え、えーと……。私は佐藤健太と申します。こ、この度、転職でこちらの会社に入りました。よ、よろしくお願いします!」
私はなぜか緊張し、上手くしゃべれずにいた。その理由はママの視線である。相変わらずタバコをふかせながら、目を細くしてこちらを見ている。まるで、見定めをされているような感覚だった。次に本村さんも私と同じように簡単な自己紹介をしたが、本村さんは少し酔っぱらっているようで、堂々と話をしていた。すると、
「何か、こっちの男の子、ちょっと頼りなさそうね。大丈夫?」
とママが社長に言った。私の心にズキっと痛みが走る。
「そうなんだよ。今日もさ、会社で少しプレゼンみたいなのしてもらったんだけど、まあ頼りなくてね。ちょっとコイツを男にしてやってよ」
社長は半分笑いながらそう答えた。
「へー。佐藤君はさ、何でこの会社に入ろうと思ったの?」
「……は、はい。え、えーと。営業という仕事で自分の力を試したくて転職しました」
私は先ほどママが言った「頼りなさそう」という言葉に、意外に大きなダメージ食らっていた。なので、この質問に対しても、はっきりと答えることが出来なかった。
「……へー、そうなんだ」
ママは一言だけそうつぶやいた。まるで、もう自分に興味がなくなったような感じで、再びタバコをふかした。
(や、やばい。……もう帰りたい)
私は心の中でそう泣きそうになっていた。
To be continued…
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