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30日間の革命 #毎日小説41日目

 高校3年生の夏は、進路を決めるとても重要な時期となる。それは坂本や加賀たちも変わらない。進学するのか、それとも就職するのか。その選択を迫られていた。

 武蔵中央高校では、毎年6月中旬に三者面談が行われる。保護者が学校へ来て、担任との面談を行う。

 加賀家でも、この話しは避けて通れなかった。

 「ちょっとセト、あんた勉強とかしてるの? 進路とかどう考えてるのよ」

 最近、夕食のときには必ず1回は母親から進路について聞かれていた。三者面談の日が近づいていたからだ。

 「うーん、まだ考え中だよ」

 加賀の返答も、いつも決まって曖昧なものだった。

 「えー。もう、大学行こうと考えてるなら早めに言ってよ。学費だって準備しなくちゃいけなんだし、私立ならなおさらだよ。お兄ちゃんは奨学金借りて進学してくれたんだよ。あんたはどうするのよ」

 「だってほら、大学無償化とか最近ニュースでやってるじゃん。なんとかなるでしょ」

 「それだって、色々と基準とかあるでしょ。あんたちゃんと調べてるの?」

 母親からの質問攻めに、加賀は少し苛立っていた。

 「あーもう、ちゃんと調べるって。まだ6月だし、夏休み中になんとかするよ。それに大学行くって決めた訳じゃないし」

 「もうすぐ三者面談でしょ? その時なんて話すつもりなのよ?」

 「あー、もうだから、質問ばっかりしないでよ。俺だって色々忙しいんだから。はい、俺もう全部食ったから部屋戻るよ。ごちそうさまでした」

 そう言うと、逃げるように自分の部屋へと戻っていった。

 「お兄ちゃん、何かピリピリしてるね」

 加賀には中学2年生の妹がいた。

 「はぁ、まったく何考えてるんだか。食器くらい片付けていきなさいよね。うちだって、お父さんもお母さんも働いていて、ごはん食べさせるだけで精一杯なんだから、マリも大学行きたいなら早めに教えてね」

 「はぁーい」

 加賀は、共働きの両親と、妹の4人で暮らしていた。大学3年生の兄は、関西の大学へ進学し、現在は1人暮らしをしている。兄は自ら奨学金を借りて大学へ進学していた。父親は工場で勤務しており、夜勤もある。母親は派遣で事務の仕事をしていた。

 「あー、三者面談かー。どーしよーな。革命起こそうとしていますなんて言ったら、先生も母さんも驚くだろうな」

 加賀は自分の部屋で悩んでいた。

 「実際、革命なんて起こしたら進学とかどうするんだろうな。まあ、学校をひっくり返すんだから、進学なんてできないか。となると就職か? まだ働きたくないなぁ。まじで三者面談どうしよっかな」

 加賀の三者面談は、明後日に迫っていた。


▼30日間の革命 1日目~40日目
まだお読みでない方は、ぜひ1日目からお読みください!

takuma.o 

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