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チームが迷ったときに立ち返るものを|『ninaru小学生』ができるまで。#6

10月リリースの新プロダクト「ninaru小学生」の制作内部をお伝えするnote。エバーセンスでインターンシップをする金が、開発に携わったメンバーへのインタビューを通して、アプリに込められた想いや制作の裏側に迫っていきます!

前回はこちら。

第6回目は、ninaru小学生の開発でスクラムマスター兼エンジニアを務めたガッキーさんです。

ninaru小学生の開発で取り入れた「スクラム」はチームにどんな効果をもたらしたのか、スクラムマスターとしてどのようにメンバーを支えていたのかについてお話を伺いました。

チーム意識を醸成する「スクラム」とは

ー 私は「スクラム」という言葉を初めて聞いたのですが、「スクラム」ってそもそも何ですか?
スクラムは、簡単に言うと「プロジェクトを円滑に進めるための枠組み」の一つです。毎日朝会をしてタスクの確認をする、ある一定の期間ごとにミーティングをする、などのフレームを設けて、開発を進めやすくするために取り入れました。

実際のスクラムの様子

ー「枠組み」ですか…。枠組みがあることで開発がうまくいくのでしょうか?
普通に開発をしていると、タスクの洗い出しや抜け漏れの確認をしたり、そもそも開発が予定通り進んでいるのかを確認したりする時間がとれなくなることが多いんですよ。

スクラムという「枠組み」に沿って開発を進めれば、みんなで確認をする時間が生み出されて、開発自体がブラックボックスになりにくいのが利点だと思います。

ー ふむふむ。
難しいですよね(笑)。それと、一定期間ごとに振り返りを行うので、改善がスピーディーに回っていく利点もあります。振り返りをいつするのか、どの頻度でするのかなど枠組み自体の改善も行っていくので、枠組みがどんどんチームにフィットしたものになっていくのも良いところですね。

ー スクラムの枠組み自体もプロジェクトやチームに合わせて変化するものなんですね。他にメリットはありますか?
開発にスクラムを取り入れることで、チームのコミュニケーションが増える点です。どうしたら改善するのかをみんなで考える枠組みがちゃんとあるとすごくやりやすいし、チーミングという観点から見てもめちゃめちゃいいことだと思っています。

前職では、みんなで改善のために話し合うことがあまりなかったのですが、今回スクラムを取り入れてみて、チームみんなでプロダクトを作る意識を自然と醸成できた感覚がありましたね。

ー なるほど!「スクラム」の良さがわかってきた気がします...!

開発の流れを整えるスクラムマスターの役割

ー 今回ガッキーさんが務められた「スクラムマスター」は、どんな立場ですか?
プロジェクトに関する雑務ならなんでもする人ですね。ファシリテーターというか、開発の流れを整えてあげるのが主な仕事です。

ー 全体を見て何でもする役割なんですね。
そうです。会議をいつ行い、誰が参加し、何を話し合うのかについての設定を行ったり、開発の進め方に関する改善の声を吸い上げたりするなど、全体の流れを整えながら、開発が円滑に回るように支援するのが役割です。

ー なんだかすごく難しそうに感じるのですが、前職でスクラムマスターのご経験があったんですか?
いや、ないです。初めてで。自分のキャリア的にも1回やってみたい想いがあったので、今回手を挙げました。

ー 初めてのスクラムマスターだったんですね!スクラムの中で特に重要だと感じたのはどんなことでしたか?
開発の最初に、「インセプションデッキ」というものをしっかり作り込むことですね。

ー「インセプションデッキ」とは…?
「インセプションデッキ」は、プロジェクトの全体像、目的や背景、優先順位、方向性などを定めたものです。これを定めることで、プロジェクトを進めていく中で迷った時の指針になったり、意見が割れたときの判断基準を得たりすることができます。

スクラムマスターが主導してみんなで作っていったのですが、最初に作り込むことがとても重要だなと感じました。

ー インセプションデッキの作成を主導するのも、スクラムマスターの大事な役割なんですね。

チームが迷ったときに立ち返るものを

ー 今回の開発では具体的にどんなことがインセプションデッキに記されていたんでしょうか?
いろいろ書いてあるので2つ紹介すると、まずは「やらないことリスト」を作りました。というのも、開発が進んで社内テストをした時に「こういうのあった方が絶対いいよ」と言ってもらうことが多いんです。

ただ全部を実現することは難しいので、やらないことリストを作ることで「それは今回やらないと決めて走ってるんです」と会話ができるんですよ。後からあれもこれも付け加えることはなくなるので、開発者がすごく走りやすくなりますね。

実際のやらないことリスト

ー やらないことを決めることで必要なものに絞った開発ができるんですね。
そうです。もう1つは、「エレベーターピッチ」というものを作りました。

ー エレベーターピッチ…。この言葉も初めて聞きました。
エレベーターピッチは、エレベーターで誰かと乗り合わせて「どんなアプリ作ってるの?」と聞かれたときに、端的に説明できるようにプロダクトの目的や特徴をまとめたものです。これには、アプリを作る意義が詰まっているので、迷ったときに立ち返ることができますね。

実際のエレベーターピッチ

ー なるほど。アプリの重要な要素について端的にまとめているんですね。これらのインセプションデッキが具体的に役に立ったと感じたのはどんな時でしたか?
特に、学習チェック機能の開発が難航していたときですね。例えば、学習チェックの画面を開いたときに学習内容の理解を確認するボタンがあるのですが、その文言を「できる」か「できた」のどちらにするべきかとても迷っていたときがあったんです。

一見すると言葉遊びのようですが、実は「学習チェックは誰が見る機能なのか」とか、「どうしたら目的を達成できるのか」を見失いかけていたから迷い込んでいたんですよね。そんなとき、エレベーターピッチがあったおかげで、本来の目的に立ち返ることができました。

学習チェックの理解を確認する「できる」ボタン(左)、ボタンを押すと花丸が出現(右)

ninaru小学生のエレベーターピッチでは、学習チェックについて「『小学生の保護者が』使う『子供の学習進捗管理アプリ』」と最初にチームで決めていたので、それを踏まえてどんな言葉が画面にあったらいいのかと再検討できましたね。

あとは、「ドリルに直接書き込めたらいい」「ドリルのほかに付録があったらいい」などの意見も出てきたのですが、それらは最初に「やらないことリスト」にいれていたので、迷う原因にならなかったのも良かったです。

ー そもそものアプリの目的に立ち返ることで、様々な課題が解決できるんですね。
そうですね。まぁ多くの問題はインセプションデッキを見せたからといってすぐ解決するわけではないんです。でもインセプションデッキがあることによって、何のためのアプリだったのか、誰のためのアプリだったのかという根本の部分を考え直すきっかけにできたので、最初にしっかり作り込んでおいてよかったと感じましたね。

アプリの社内テストの様子

スクラムマスターとエンジニア、兼務の苦悩

ー 今回の開発で「スクラムマスター」として苦労したのはどんなことでしたか?
スクラムマスターをやりつつ、エンジニアも兼ねていたので、自分の立場がよくわからなくなることがありました。進捗管理の毎朝のミーティングで自分が「エンジニアどうですか?」と聞いて、「間に合ってないです」と自分が答える状況になっていました(笑)。

「なんで間に合ってないんですか?」とか、「じゃあ、次どうするんですか?」という話も自分で自分に問いかけている感じになってしまって。スクラムマスターとして、これでちゃんと回せているのかと思ったり、焦燥感もあったりで大変でしたね。

ー 1人2役の劇みたいになっていたわけですね…(笑)。
そうですね(笑)。今回新しい開発用フレームワークとして使ったFlutterを、エンジニアの3人がほとんど触ったことがなく、半分以上が素人集団で始まったので技術のキャッチアップもだいぶ大変だったんです。最初は全然うまく進まなかったですね。

ー 大変な開発序盤だったんですね。開発の中盤・終盤にかけてどのように解決していったのでしょうか?
一旦スクラムマスターを交代してもらいました。Flutterのキャッチアップが進み、少し落ち着いた段階で自分がスクラムマスターに戻りました。実は、エンジニアとスクラムマスターを兼務することは、良くない例で挙げられることが多いんです。今回実際に経験してみてやっぱり辞めた方がいいなと思ったことも学びのひとつですね。

子どもが苦手な人にこそ届いてほしい

ー最後に、ユーザーさんに向けて一言お願いします。
ninaru小学生は、わざわざ自分から調べなくてもアプリを開いたら必要な情報を教えてくれるので、子どもが苦手で何から調べたらいいかわからない方ほど使ってほしいなと思います。

自分自身、娘が今1歳なんですが、ぶっちゃけ僕あんまり子どもが得意じゃないんですよ。赤子って未知の生物感がすごいし、わからないことだらけです。昔から親戚の集まりとかがあっても一番年下で、子どもに慣れていないんですよね。

だからこそ、育児を助けてくれるツールはすごい便利だなと思っています。僕のような人間が持ったら幸せになるアプリだと思うので、そんな人に届くと嬉しいですね。

インタビューを終えて

「チームにフィットするように形を変えていけるのがスクラムの良いところ」と話すガッキーさんがとても印象的で、常にチームにとって一番よい形を模索していた開発期間だったんだなと思いました。「スクラム」の開発に参加したことがない私に丁寧に説明してくださり、ありがとうございました!

次回はアプリ新規開発に携わったエンジニア代表として、スティールさんにインタビューします。

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