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新卒1年目で担当した新機能開発が「ユーザーに寄り添うものづくり」を教えてくれた

こんにちは。ninaru編集部の石川です。「ninaru」シリーズの各プロダクトの裏側や私たちの想いを発信するnoteをはじめました。

「ninaru」シリーズは、妊娠、出産、子育てに関わる人をサポートするプロダクトです。その中の子育てアプリ「ninaru baby」には、その日の天気に合わせて、最適な子供の服装や持ち物の提案をする「お出かけ子供服予報」という機能があります。

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実はこの機能のコンテンツ作成は、私が新卒1年目(というかエバーセンスに入社して約2ヶ月)のときに担当しました。

「またやりたい?」と聞かれたら、「いやさすがにもうやりたくないですね…」と答えてしまうくらいヘビーな仕事でした。でも同時に、エバーセンスが大切にしている「ユーザーに寄り添うものづくり」を実感した、1番楽しかった仕事でもあります。

私は今年で入社4年目。当時のことを忘れてしまう前に、エバーセンスのものづくりを何も分かっていなかった新卒1年目の私が、お出かけ子供服予報をがむしゃらに作った話を書いておこうと思います。

新卒1年目、なぜか任された新機能の開発

2018年5月、「ninaru baby」PO(プロダクトオーナー)の坂上に、「新機能の開発に参加してよ」と言われたのが、全ての始まり。

私はエバーセンス入社後「こそだてハック」というウェブサイトの記事を書いていました。内容は、妊娠・出産・育児に関わること。未婚で子供もいない私にとっては、全く知識のない領域です。とにかく勉強して、記事をきちんと書けるようになることに必死の毎日でした。

エバーセンスのプロダクトの中には、当時からいくつものスマホアプリもありましたが、当時の私はアプリの仕事については全く知りませんでした。当然「ninaru baby」の提供価値も、いまいち分かっていない…。

なのに、突然任されたアプリの仕事。しかも新機能の開発。

仕事を振られたけど、これから自分がやることも、目的も、スピード感も、なにも分からない。本当になにも分からないけど、とりあえず仕事を任されたからには頑張らないと…!という気持ちでした。

こうして迎えた、キックオフミーティング。

議事録を見返してみたら、お出かけ子供服予報の価値はこう書かれていました。

*天気の情報だけでなく、その天気だから何をするのか、という行動の提案をする
→そのアクションとして大きいものが「服装」
=「出かけるときに何を用意すべきか?その日の行動はどうすべきか?」を知りたい

そしてお出かけ子供服予報に載せるコンテンツは、次の4つと決まりました。

・天気予報(今日・明日・週間天気)
・子供の服装の提案
・持ち物の提案
・ワンポイントアドバイス

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▲お出かけ子供服予報の画面。このUI/UXを決めることからスタートしました。

私はこれらのコンテンツの内容、つまり服装やアドバイスを出すロジック、アドバイスの文章を全て考える担当。

いや、、今思い出してみても、考える事てんこ盛りです。

キックオフでは、社長の牧野が「お出かけのときに、子供の服選びすっごく困るんだよね。」「まずはスピード重視!手をかけすぎず、でも最低限の価値を提供しよう。」と言っていました。リリース目標は、本格的な夏が始まる前、つまり7月頭。

この時の私は、「とりあえず子供の服装の提案と、天気が分かればいいってことかな?」くらいの認識でした。スケジュールもタイトだし、限られた開発工数内でとりあえずできるものでいいんだろうな、と。

このせいで私は、後に大変苦しむことになります…。

いま思い返してみると、記事を書くために育児のことを勉強していたとはいえ、明確にママの気持ちは想像できていませんでした。だから、なんでこの機能を開発するのか、なにがユーザーにとっての価値なのか、きちんと腹落ちしていなかったのです。

子供の服装、考えるの難しすぎる…

開発をするにあたり、まずは社内のママにヒアリングするところからスタート。そこで初めて知ることがたくさんありました。

・月齢によって赤ちゃんの体温は異なるので、服装選びは変わってくる。
・ロンパースかセパレートかでも服装選びは変わってくる。
・夏は熱中症対策になにをしたらいいのか困る。出かけていいのか、出かけるなら保冷剤持った方がいい暑さなのか。
・赤ちゃんは汗っかきだから、どれくらい薄着にするか悩む。
・夏はエアコンが効いてるので、冷えてしまわないか心配。
・半袖1枚なのか、上着が必要なのか微妙な天気のときに困る。
・気温差があると困る。
・帽子は曇りでも被せるから、UVは常にチェックしている。
・抱っこ紐かベビーカーかでも服装は変える。

いや、、子供の服選び、大変すぎじゃないですか…?

我が子の健康のために、お出かけのときの服装にこんなにも悩んでいることを知り、しっかり調べて適切な服装を提案しなければと強く思いました。

月齢ごとに赤ちゃんの体温が異なることを考慮し、生後0〜5ヶ月、6ヶ月〜11ヶ月、1歳以降で服装の提案ロジックを分けることにしました。提案する服装は、最高気温とUVの掛け合わせで判定。そのロジックは、ママに様々な気象条件ごとに実際に着せる服装をヒアリングして作成しました。

また、服装は生後0〜5ヶ月はロンパース、6ヶ月以降はセパレートで提案することにしました。

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服装のデザインは、初段は男女兼用に。ママたちが見てテンションがあがるような、こういう子供服ほしいな〜と思ってもらえるような、かわいいデザインを作ってもらいました。

次は、服装の他に提案する持ち物を考えることに。ママたちに聞いてみると、子供とのおでかけには持ち物がたくさんあるとのことだったので…

私「必要なもの全部提案しておけばいいですよね…足らない方が困るし。」

ママたち「いや、人によって持ち物は違うから、中途半端に提案されても困るんだよね。」

そうなのか……。

「持ち物」として提案するのは、みんなが共通して悩む物に絞り込もう。色々考えた結果、傘と上着だけを提案することにしました。雨が降ったとき、傘を持たずにレインウェアを着るという場合もあるだろうけれど、「雨が降るよ」ということを示すための「記号としての傘」という位置づけです。

日本全国の天気予報をひたすら調べる日々

次に着手したのが、ワンポイントアドバイスのロジック。

しかし、参考にするものがない。子供の服装を選ぶための天気予報なんて、存在しない。そこでとにかくテレビの天気予報をたくさん見て、私はお天気お姉さんよ!!という気持ちで、この天気のときに何を伝えるか?を考え続けました。

「アドバイスは、複雑にすると開発に時間がかかる。でも、簡易的に服装とアドバイスを一対にするなど中途半端に出すのはリスクだね。」

牧野にこう言われていたので、複雑すぎず、でも天気予報に則したアドバイスのロジックを考えなければいけませんでした。

さらに、ワンポイントアドバイスの内容は、「その天気だから何をするのか?という行動の提案」でないと意味がありません。

いや、もう、考慮することが多すぎる…。正直パニックでした。

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試行錯誤した結果、このように、天気に紐づいた行動に関する一文と、気温または熱中症指数に応じた行動に関する一文を組み合わせて出すことにしました。

このロジックできちんと正しい内容をアドバイスできているかを検証するために、過去の天気情報にあてはめて、様々なパターンでシュミレーションをしました。私は気象予報士を目指しているのか???と思うようになるほど、頭のなかは天気でいっぱいでした。

「このくらいでいいか」じゃ、だめだった。

こうしてどうにか仕上げたコンテンツたち。開発も間に合って、いざ牧野チェック!

しかし、私の作ったワンポイントアドバイスの文章とロジックをみた牧野は、こう言ったのです。

「うーん、惜しいね。1週間伸ばすから、やり直そう。」

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この時の衝撃を、今でも覚えています。

牧野がキックオフで言っていた「まずはスピード重視!手をかけすぎず、でも最低限の価値を提供しよう。」という言葉。

私のつくったロジックとアドバイスは、「最低限の価値」を提供できていないと判断されました。

「雨がいつ降るかは、何時に降るのか知りたい。お迎えのときに降るの?それとも夜に降るの?雨時々くもりなら、曇りになるタイミングにお出かけしたいよね。」

ママがお出かけの時に何に困っているのかは、分かっていたはずなのに…いや、たぶんその理解度は浅かったのです。ママがどんな時にこの機能を使うのか、提供すべき価値は何なのかが、私はまるで分かっていませんでした。

お出かけ子供服予報は「その日の天候に対して、我が子の健康のために最適な服装や必要な物がわからない」というママの不安に寄り添う機能。

ワンポイントアドバイスで欲しいのは、ただの天気の情報ではなく「だからどんな行動をしたらいいか?」という提案です。

エバーセンスのものづくりで大切にしているのは、ユーザーに「寄り添う」こと。この機能を使うママのことを考えたら、アドバイスの言葉ひとつひとつにもっとこだわるべきだし、おせっかいと思われるくらい丁寧に具体的に「今日はこうするといいですよ」って伝えてあげるべきなのです。

なのに私は、この機能を使うユーザーのことが、どこか他人事でした。いつの間にか、期限までに完成させることが目標になっていた。

自分の考えの甘さを、痛感しました。

徹底的にユーザーに寄り添うために。全て作り直した。

「惜しいね」なんてもう絶対言わせないんだから!!!!!

負けず嫌いな私は、徹底的に見直すことにしました。

目指したのは、ママが知りたい情報がきちんと提示される、毎日使ってもらう価値のあるアドバイス。「一旦開発の大変さのことは考えなくていいから、マックスで考えてみよう」、そう言われて考えられるパターンを全て洗い出しました。

雨が降るタイミングは天気マークだけは信用できないから、降水確率も考慮しよう。猛暑の時期、熱中症に気をつけてねと毎日同じアドバイスが続くのもちょっと嫌だから、できるだけ条件を細かく分けよう。

その結果、この6つの要素をかけあわせてロジックを作りました。
・天気の条件
・熱中症指数
・UV
・3時間天気の最高気温
・3時間ごとの天気マーク(9時・12時・15時・18時)
・3時間ごとの降水確率(0-6時・6-12時・12-18時・18-24時)

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▲判定条件ありすぎて横にひたすら長いスプレッドシート…

その結果、全部で3,605個のアドバイスを書きました。

たとえば…
①天気マークは晴れ、3時間ごとの天気で15時に雨マークあり、熱中症指数2、最高気温28℃の場合
「朝は晴れていても、15時頃に雨が降りそうなので、お出かけは午前中がおすすめ。過ごしやすい気温でも、こまめな水分補給で熱中症を予防しましょう。」

②天気マークは曇り、熱中症指数4、最高気温が32℃の場合
「曇りですが熱中症になる危険があるので、お出かけはなるべく近所がよさそう。出かけるときは、日陰でこまめに休みましょう。」

③天気マークは雨時々晴れ、6時〜12時の降水確率50%以下、12時以降の降水確率60%以上、熱中症指数2、最高気温34℃の場合
「今日は昼頃から雨が降りそうなので、お出かけはお早めに。気温がかなり高いので、日中の外遊びは短めが良いでしょう。」

こんな感じで、条件を詳細に分けることでアドバイスをより具体的に丁寧に。限られた文字数のなかで、最大限伝えられることを書きました。

さらに、3時間ごとに天気情報が更新されるのに合わせて、アドバイスの文章と提案する服装が更新されるようにしました。なぜなら、お出かけ子供服予報を見る時、ユーザーは「これから」の情報を詳しく知りたいから。天気の情報だけでなく、服装とアドバイスも更新するべきと考えました。

11時更新用に1,571個、17時更新用に30個のアドバイスを作成。週間天気予報用にさらに210個…この結果、ワンポイントアドバイスは全部で5,416個になりました……もはや気合いでしかない。

途中でやけくそになりかけましたが、実際の天気にあてはめてアドバイスを検証し、ママたちに読んでもらい、納得できるまで修正しつづけました。

ちなみにこのとき、私の夢にはスプレッドシートがでてきました。文字の羅列で不気味なシートになっていたので、会社の先輩に「なに作ってんの…?こわ…」と言われることもありました(私はこの時にスプレッドシートが嫌いになった)。

こうして作り直したアドバイスは、無事牧野のOKをもらいました。エンジニアが超特急で開発し、本格的な夏が始まるギリギリのタイミング、2018年7月18日に無事リリースされました。

しかし。

お出かけ子供服予報の開発は、これで終わりではありません。

取り急ぎ作ったのは夏用のロジックだけ。子供の服装は、季節ごとに提案する条件もデザインも変わってくるものです。

夏用をリリースした直後に、秋用のロジックと服装デザインを作りました。その後、冬用・春用を作り、最初の夏用ロジックを改良。まるまる1年かけて、ようやくこの機能の開発が完了したのです。

ちなみに、季節ごとに服装とアドバイスを出すロジックは少し変えていて、秋冬は熱中症ではなく乾燥指数をベースにしてますし、冬は豪雪地帯とそれ以外で雪に関するアドバイスの文言が異なります(北海道で雪が降るのと、東京で雪が降るのは、住む人の危機感が全然違うので)。

長い長い旅でした。

ひとりでは無理。いい仲間がいたからできたこと。

新卒1年目の私が、泣きそうになりながらもこの仕事を最後までやり遂げられたのは、「いいものづくりに向き合う、いい仲間」がいたおかげです。

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▲リリースの瞬間。楽しそう。

服装のデザインを担当したデザイナーのハニさんは、どんなイラストならかわいいか、ママのテンションが上がるのかを、一緒に考えてくれました。デザインセンスが皆無な私は、プロってすごいな…としみじみ思いました。こういうのがいい、を絵にしてくれるのって、すごい。

「工数」という概念を教えてくれたのは、ハニさんです。当初私は、毎日使う機能なので、服装のデザインの種類はなるべく豊富にしたいと思っていました。季節を重ねるごとに依頼するデザイン数を増やそうとする私に対して、その都度「これって絶対に必要?もう少し減らせない?」と聞いてくれました。「いや、数は多い方がいいじゃん…」と無邪気に考えていた私に、かけるべき工数と効果をきちんと考えることを教えてくれました。「限られた工数内で最大限できるものはなにか」を一緒に考えて作ってくれて、本当にありがとうございます。

そしてエンジニアの方々にもたくさん助けてもらいました。最初のロジックから大幅に変えてしまい、今思えば1週間で開発するようなものじゃなかったと思います。でも当時の私は、エンジニアと一緒に仕事をしたことがなかったので、開発において何が難しいのかよく分かっていませんでした。(開発の大変さは気にしなくていいって言われてたし…)やり始める前に相談しろよという話なのですが、ユーザーにきちんと価値を提供したい、その思いだけで突き進んでいました。

「なにこれ?どういうこと?」とエンジニアの江上さんに何回も聞かれ、そのたびに説明をし、チェックして、バグの修正を依頼して…を延々と繰り返しました。ロジックが複雑すぎて江上さんが発狂してたのを今でも覚えていますが、「一生懸命考えたロジックでしょ。開発するよ」と言って、妥協せずに開発してくれたことに感謝です。あと、リリース後にお寿司を奢ってくれてありがとうございます。

機能を作るにあたり、この条件ならどんな服を着せますか?としつこく何回もヒアリングしても、嫌な顔せずに教えてくれたママ社員のみなさん。大量のメッセージをチェックしてくれた坂上さん。

ひとりでは、絶対にこの機能を作ることはできませんでした。みんなが「いいものづくりをする」という思いをもっていたから、私も突き進むことができました。

いいものづくりって、楽しいんだ。

この仕事大変だったよ…という話をここまで書いてきましたが、振り返ってみると、ユーザーにより価値を届けるために新しい機能を作るのは、最高に楽しい仕事だったなと思います。

ただひたすらに、ユーザーに向き合うこと。アイデアがどんどん形になること。どれもわくわくするものでした。

夢にスプレッドシートがでてくるくらい1日中仕事のことを考えていたけれど、途中でやめたいなんて思わなかったんです。壁にぶつかりまくったけど、完成したときの喜びは大きかった。

そして何より、ユーザーが喜んでくれることが、最高に嬉しい。

お出かけ子供服予報は、ありがたいことに多くのユーザーに使っていただいています。私はユーザーひとりひとりの顔を見ることはできなくて、あくまで数字上でしか把握できませんが、SNSやアプリのレビューで「この機能便利!」という言葉を見かけるたびに嬉しくなります。

機能は作ったら終わりではなく、より多くの人に使ってもらうことも同じくらい大切。でも、この機能の存在に気づいていないユーザーがまだまだたくさんいます。今スマホに「ninaru baby」が入っている方、右上の「天気」ボタンをぜひ押してみてくださいね。

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この経験があったから、私はこの4年間「ユーザーに寄り添う」ことを忘れずに、日々仕事ができていると思います。担当するサービスは変わっても、ユーザーに寄り添うことを忘れずに、楽しく、ものづくりに向き合っていきます。

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気になった方は、ぜひ育児アプリ「ninaru baby」をダウンロードしてみてくださいね。