僕の才能


新しいことは怖い。
新生活が始まるこの季節、期待と不安が入り混じった、なんて表現をする人もいるけど僕は不安しかない。
何の特技も才能もない僕が新しい世界で通用なんかするわけが無い。

僕のことは僕が一番よくわかっている。

きっと何もできず人に迷惑をかけながら生きていかなければならない。
周りのみんなが羨ましい。
もし、僕に才能があったら色々なアイデアを出してたくさんの人の役に立てるように頑張るのに…。

僕には何も出来ない。

努力しろ、と言う人もいる。
僕だって努力はしてる。
でも僕みたいな人間はどれだけの努力をしたらいい?
もちろん何の才能がなくても努力をして成功した人もいる。
僕はそういう人も努力を続けられる才能の持ち主だと思う。
誰からも認めてもらえない努力を続けるのは苦しくなるくらい辛い。
それを続けられるのは素晴らしい才能だ。
そしてその努力を認めてくれる人が現れるというのも才能だ。


どっちも僕にはない。


きっと新しい世界でも僕の才能が開花することはない。

そう思うとみんなが不安まじりにも楽しみにしている新生活も僕にとっては地獄の門でしかない。
これからが地獄だと思うと憂鬱になる。
今すぐにでも逃げ出したい。
何故僕には何の才能のないのか。
誰しも一つは才能を持って生まれるっていうのに僕にはない。

そうか、もしかしたら、この後ろ向きな心が僕の才能がもしれない。

何に生かせるわけでもない僕の才能。
最悪の状態を想定する心の防衛本能。
この心は僕のために後ろ向きに作用する。
そう思うと僕のこの何の役にも立たない才能も少しは愛らしく思える。
この才能を大切にしよう。
人と比べて劣っていても僕は僕のまま地獄を渡るんだ。
選択肢なんてない。

だって、役立つ才能も逃げる勇気も持たない僕はもう地獄を渡るしか道はないから。

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