【詩】記憶のフチを焦がす
詩を読んでいる
13歳の
書いた詩を
ほそいほそい文字列が
わたしを記憶へとひいていく
学校は
きらいだった
けれど、好きだったところもあって
とおくから響く喧騒と
窓から放り込まれるチャイムと
廊下を打つ上靴のおと
それら全てに切り離されて
静かにじっとしている
わたし
屋上の扉の前
だれもいないそこには
たまに煙草を吸いにくるわるい先生が
埃っぽい踊り場
積まれた机に掘られたイニシャルと
窓の外には揺れる校庭
孤独なようで
孤独ではなかった
遠くのざわめきが
何より好きだった
隔絶された安心
あのころの私たちはひどく不安定で
片足立ちのコンパスみたいに
ゆらゆら
揺れては倒れてしまう
きれいな円も描けない
いびつで最悪なわたしたち
詩集をとじる
半開きの引き出しから
白檀のお香のかおり
お香は聞くものだと
語った古書店の主に
分けてもらった
抹茶色の
記憶と香りが綯い交ぜになって
あらたな記憶になる
初秋のできごと
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