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【TAM第1話】朝の光

 トーキョーに射す朝の光。
 熱を感じない、けどまだどこか夜の名残が透けて見える、そんな光。
 こうやって丁度良い高さのビルの屋上に座って目を閉じれば、ビルを反射して「コオ……」って音が聞こえてくる。

 そんな中を、誰かが歩いているのを見かけた日には、僕はそっとその人のそばに飛び寄って「おはよう」って話しかける。 もちろん、僕の事は見えないし、声だって聞こえやしない。 でもそれがまた楽しいんだ。
 つまらなそうな顔をしてるけど、この人だって「都会の一部」になってる自分の事、嫌いじゃないんだよね。

 見つめていたビルに、最初の電気が灯ったら、今度はそっちへ飛んでくんだ。 大抵は何をやっているのか分からないけれど、ずっと見つめているうちにその人の気分になってみたりして。
 1日だけならいいけど、毎日こんな暮らしは辛いだろうな……なんて思いながらね。

 だけど、そうやって過ごしているうちに、人間になってみようかな? なんて気持ちがたまに湧いてくる。 きっと、僕よりもっと強くそう願った天使がこうやって目の前で人間として生まれ変わっているのかも? なんて最近ぼんやり思う事もあるんだ。

 なんてね、そうやって色々考える、気楽な自分が好きなんだ。 誰からも気を留めてもらえない。 けどそんな生活が好き。
 それに僕が人間だったとしても、ここに住んでいたら、誰も気を留めてくれる人なんていやしない気がする。 そういう街だから。

 でも、冷たいけれど、ここは誰かの思いが見え隠れして成り立っている。 綺麗な光ばかりじゃないけれど。
 こうして、いろんな想いを溶かしながら希望と現実の始まる街の朝を今日も僕はずっと眺めてる。

【作者感想】※読みたい方だけお読みください
感想とか書こうと思ったものの、無理に書くほどのものがありませんでした。。(初回なのに…)
ただ、シリーズを通して天使の性格や心理的なものはもちろん、空の感じやイメージしてる肌感覚を何とか描きたくていっぱい想像して頑張ってました。

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アンニュイな気分になりたい時、ほんの少し自分から離れたい時におすすめです。

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