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#3 飛ばされた世界で『マイクラクエスト物語』

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#3-1 どこまでも続く砂漠

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三人の女神に「世界を救って」と頼まれ、光に包まれたと思ったら、見知らぬ土地…というか砂漠に降り立っていた。

暑いし、喉乾くし。
これ普通に死亡フラグじゃない?

砂漠放浪して、意識失って、通りがかったキャラバンに助けられるとかいうありがちな展開なのかな?

ひとまず枝を拾い、そこらへんに生えているサトウキビを収穫し、1本だけ見つけた木を採取して必要最低限のツール類をクラフトする。

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広い海の向こうに、木が生えている土地が見える。
でもどれくらいの距離かわからないで海を渡るのは危険だ。イカダを作れるほどもう木材は残っていない。

この世界がどれくらいのダメージ量なのか、空腹時にどうなるのかわからない段階でむやみに動くべきではなさそう。

ここはマイクラのゲーム内とはいえ、自分の思うマイクラのゲームとは違う可能性もある。慎重にいこう。

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うっすらとアカシアの村が見えてきた。そして手前に井戸がある。

ゲームのマイクラは、ただの水と海水にあまり違いはない。だが、どうやらこの世界は、真水と海水に違いがあるようだ。

モンスターにおびえながら暗い洞窟で喉を潤したが、いかんせん洞窟内は危険がいっぱい。なかなか水分の確保が進んでいなかったが、この井戸との出会いで命がまた延びたような気がする。

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手ですくって一口飲む。

あ…み、水だ…!

Eurekaは初めて、水の中に顔を沈めて水を飲んだ。

ぷはっと顔を上げると、先ほどよりしっかりとアカシアの村が見えた。

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体力は限界ではあるが、水分を摂れたことで力が湧いてきた。
これくらいの距離なら泳いで渡れるかもしれない!

#3-2 無人のアカシア村

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途中、イルカとの出会いがEurekaを勇気づけた。

イルカは泳ぎのスピードを上げるバフをかけてくれるので、イカダで海を渡らない時や水中を移動している際、非常にありがたい存在である。

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海水が染み込みずっしりとした洋服を軽く絞り、水切りする。

マイクラのゲーム内でよく見る、アカシアの村に到着した。
明るいアカシアの素材でできた数々の家。小麦やスイカの畑。暖色系のテラコッタ素材。本当に”あの”アカシアの村だった。

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「あの~、すみませぇ~ん。どなたかいらっしゃいませんか~?」

少しかすれた声でEurekaは村人がいないか呼びかけるも、反応はない。そう、村人の姿が見えないのだ。

まさか…全滅してしまったのだろうか?

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心配になり、次々と家の中の様子を伺う。やはり、村人はいない。

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村の横に小さな林や花畑があり、そこに村人がいるのかと思ったが、誰もいなかった。

おかしいな。モンスターにやられてしまったのかな。それとも、みんなでどこかに引っ越したのだろうか?

家に残っていたパンを食べ、牛から牛乳を搾り取り、久方ぶりのまともな食事にありつけたEureka。安心感からだろうか、がくっと体の力が抜け、へたりこんでしまった。

「冒険ってこんなに大変だったんだ」

充分な体力が戻るまで、Eurekaはこのアカシアの村で過ごすことにした。

#3-3 侵略された砂漠の村

アカシアの村の近くに、もうひとつ小さな村があることに気が付いたEurekaは、明るい時間に訪ねてみることにした。

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「あ…! 少ないけど、村人さんがいる!」
Eurekaはしばらく見れていなかった人間の姿に興奮し、思わず走り出した。

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「こ、こんにちは」

言葉が通じるとか、敵だと思われるとか、そんなことはもう頭になかった。ただ、純粋に、誰かとの出会いが嬉しかった。

砂漠村の住民は、Eurekaの姿を見ると、若干の警戒はしつつも、丁寧な挨拶を返してくれた。

「こんにちは。あなたは旅人…かい? ここいらの者じゃないね」

Eurekaは信じてもらえるかわからないが、ことの顛末を話した。すると意外にも、Eurekaの話をすんなりと受け入れた。

「そうかい、あなたは、やはり”旅人”なのだね」

古くからの言い伝えに、どこからともなく天からの使いが訪れ、世に光をもたらしてくれる、というものがあるそうだ。その使いは”旅人”の風体なのだそうだ。

「困った人を助けろ、と言われました」

Eurekaの言葉に村人は大いに納得した。

「そうさね。”旅人”は、世界各地を旅しながら、様々な奇跡を起こす使いなのだよ」

「…何か、困っていることはありますか?」

おずおずと尋ねると、村人はぽつりぽつりと、この世界の災いについて話し始めた。

#3-4 侵略され奪われていく人々

いつ頃からだろうか。”侵略者”と呼ばれる蛮族が色々な村を襲い始めた。ある時は食糧だけ奪い、ある時は家畜をも奪い、そして最悪なケースとして、村ごと亡ぼし何の罪もない人間を殺しているという。

侵略者

最初に見つけたアカシアの村も憎き”侵略者”の手によって、滅亡の危機に瀕したそうだ。

畑を荒らされ、家畜を殺され、女子供を奪われ、働き盛りの男は奴隷として連行された。避難用の洞窟に身を隠せた者は助かり、残った者は手を取り合い、アカシアの村を棄て、別の場所へ…。

「わたしらは、運のよいことに、商売に長けていてね…。それで絶滅は免れたんだが…。やはり他所んとこと同じように、若い者はどこかに連れていかれて…残った者はおいぼれや弱い者だけ」

聞くと、近くのジャングルの森に生るココアやスイカの品質が良く、村の特産品として高く売れていたようで、そこに目をつけた”侵略者”は、一定の金額を納めれば村は襲わない、と約束したらしい。

「そろそろ収穫時なのだけれどね、いま動ける者がいなくて…」

砂漠は突然足元が崩れることがある。残った村人の中でも体力があった者が、残念なことに、その事故に巻き込まれてしまい、森へ収穫に行けなくて困っているという。

Eurekaはその収穫の役を申し出た。

「わたしが行きます!」

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迷ったら最後だと言わんばかりの深いジャングルの森。
Eurekaは明るいうちにと、カカオとスイカを探す。

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あのココアなら手が届きそうだ。

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順調にスイカも収穫していく。

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無事にココアとスイカを収穫したEurekaは、遠目に、おどろおどろしい建物を見る。

ダークオークの建物…。ひょっとして、あれが”侵略者”の砦なんじゃないの?

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村人に収穫物を渡すと、とても喜んでくれた。ココアとスイカの収穫なんてよく考えたら地味ではあるが、こんなことでも喜んでくれることを知り、Eurekaの心が明るくなった。

「あ、陥没した場所だ」

村の中に陥没事故の痕であろう大きな穴を見つけた。

「明日、ここ埋めようかな」

この村の復興のため自分にできること。
色々な案を考え巡らしていると、行商人が村を訪問してきた。

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「おお、相変わらず素晴らしいココアとスイカだ。この村で採れるブランドは、貴族様たちの大のお気に入りでね。わたしも危険を顧みて買取にくる意義があるってもんだよ」

行商人はニコニコと人の好さそうな笑顔で、お金がぎっしりと詰まった袋を渡してきた。結ばれた紐の奥に、ダイヤやエメラルドが見えた。

こんなに価値があるんだ…ここのココアとスイカ…。

夜空

村の空き家を借りて、今夜はここでゆっくりと休ませてもらえることになった。

窓の外から見える満天の星空。砂漠を放浪していたときは、こんなに美しい夜空が広がっているなんて気づいていなかったなぁ…。

ひょんなことからマイクラの世界に入り込んでしまったEureka。重い瞼をこすりながら、現実世界ではなかなかお目にかかれない夜空をずっと眺めていた。


つづく

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