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あなたは生きていますか?

ー【はじめての短歌入門 / 穂村弘】を読んでー


穂村さんの著書との出会いは、noteをはじめる少し前だったと思う。
手帳や日記に文章を書く時、長々と書き連ねるより凝縮した文にしたいと思ったのがきっかけだ。
それならば、詩もしくは短歌だろう。そして、穂村弘さんを知る。

この本は、短歌を読み解く体を取りながら、実は人生観を語っていくもの。
『僕らは二重に生きていて、「生きる」と「生きのびる」二つの観点がある。」これがこの一冊の肝。
ここにはっとさせられ、夢中になって読んだ。今まで「生きのびる」ことを優先して歩んでいたのだと。

私は比較的、感情より意味を重視して行動する質だと思う。「これをやって今後どんな役に立つ?」とか、「欲しいけど必要あるか」とか考えてしまうような。
そしてこれは、「生きのびる」側の視点だと気づいた。
「生きのびる」とは“良い学校に行って良い会社で出世して…”みたいなこと。
「生きる」には別の響きがある。それについて穂村さんの一文を引用する。

『どんな人生が良い人生なのかを決める事はとても難しいんだけど、1つの尺度として、次の日に覚えている思い出が一個でも多い人生がより良い人生なんじゃないの。その時一個も思い出せることがない人生はダメなんじゃないの」っていう考え方があります。
(中略)ぼく、会社に17年行っていて、その間ずっと「この駅で降りなければ、海に着く」って思ってた。海に行ったら、今日の事は一生忘れないだろうって事は、わかってた。』

海がとてもキラキラと感じられる。
その足を引き止める“私と仕事、どっちが大切なの”みたいな板挟み。

最後に、この本で印象に残った歌の二つを引用したい。

たはやすく宇宙よりかえる人のあり夕焼に家身失ふ人あり / 潮田澄

くす玉の残骸を片付ける人を見た / 又吉直樹



輝かしい場面、太陽のあたたかさだけでなく、沈みゆく夕暮れの価値を愛せる人になりたい。

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