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思い出戸締まり

思い出になるときって、案外あっけないのだなと、思った。


報われなかったあの日々が、遠くできらきらと光っている。
思い出にする。
簡単なようでどうしたっていつも脳内にへばりついていた彼より好きになる人なんてきっと現れない。彼の不幸より笑ってあげられる不幸なんてきっとない。私の悪い癖は、そうやって未来を封鎖して、未来を限定してしまうところにあるのだと知った。絶対なんてこの世にはないのに、それでも私は「絶対に」という言葉を乱用していた。まるでなにかの防御線のように。自分を守る何かしらの壁のように。

思い出すことがめっきりと減り、何食わぬ顔でラインに残っていた奇妙なやり取りを消した。
彼がいなくてもいいと思った。彼が私の生活に常にいる必要がないと心から思った。私は彼が好きだ。とっても好きだ。それに変わりはない。どこかで笑っていればいいと心から思っている。それでも、毎日思い出す必要はどこにもない。彼がいなくても生きていける。きれいな思い出でいい。たまに、思い出そうとしないと思い出せないような、そんな距離でいいと心から今思っている。まあ、どこかで笑っていてほしいと思うのは、惚れたもん負けだから、許してね。不幸を笑って流せる人だけれど、できれば幸せに笑っていてほしいとは、願っています。


こう思うようになったのは、私を好きだと言った人が居るからだ。


もう全部諦めていた。
私は私を愛してやれないし、つまるところ誰かを愛すこともきっと難しい、愛されるのなんてもってのほかだと、お得意の未来予言でそう思っていた。過去に私を好きだと言った人たちは、「好きだった。でも言えなかった。」が大半だった。言われもしないことに私はもちろん気が付かなくて、そして気の利いた返事もできなくて、「あ、そう。」と笑うことしかできなかった。もしくは、好きだと言ってくれるけれど、私が求めていないところまで踏み込んでくる人だった。もちろん長くは続かなかった。

私はお得意の未来予言で平気な顔をして、その人を傷つけていた。
傷ついたと言われたわけではないけれど、自分だったら傷つくなと思うからあえてこう書いている。一切合切絶対の進展がない関係だと公言した。
ところで、お前はさっきから一体誰の話をしているのだと言われそうなので、そもそもの私たちの話をするところから始めたほうがいいか。


私たちは、本当にたまたま、まるで奇跡か必然かのように、ものすごく広くて膨大な人間がいるオンラインゲームで出会った。

データセンターは4つ。
各データセンターにワールドが複数。何個あったか覚えてないので割愛。データセンターを行き来できるようになったのは最近。私はずっと海外ユーザーの多いデータセンターにいた。フレンドはいたけれど毎日話したりするような仲のいい人はおらず、いわゆるソロプレイヤーだった。ずっと一人だった。一人で毎日黙々と、現実逃避のようにゲームにのめり込んでいた。

データセンターを移動して遊びに行けるようになって、私は好きな配信者がいるデータセンターによく行くようになった。一緒にコンテンツを楽しんだりした。姿を見られるだけでも嬉しかった。配信に写り込んで楽しんでいた。そんな中、特に賑わっているデータセンターがあると聞いて、本当になんの気なしに、そこへ遊びに行ったのだ。

この広いデータセンターの中で、特になにかやりたいことがあったわけではなかった。ちょっと覗きにきた、というだけ。大量のパーティー募集に「すごい、都会だなあ。」とアホな感想を持った。せっかくだからどこか面白そうなパーティーがあれば入ってみようと思った。


そしてたまたま入ったパーティーで、私はその人と出会った。


自分のサーバーでもない。たまたま遊びに来て、本当に数多ある募集の中から、たまたま目についた1つだった。適当に選んだと思う。なぜなら募集文もなんにも覚えていないから。私はたまたまそのパーティーに入り、その場にいた人たちとフレンドになった。ツイッターも相互フォローになった。こんなことは今までなかった。話す内容が面白くて、最後に一緒に写真を撮った。「また遊びにおいでよ」と言われた。ツイッターで私の得意とするコンテンツのメンバーを募集していたので、得意だよと連絡をして、私はそのデータセンターに通うようになった。

結局そのメンバーたちの会話用のグループにまで入れてもらい、毎日データーセンターを移動するようになった。
仲のいいフレンドが増え、毎日毎日くだらない話をしながらコンテンツでバカなことをして遊んだ。オンラインゲームってこんなに楽しかったのかと実感した。


キャラクター同士を結婚させることができるので、私はふるさとを出て、キャラクターごと移動して、その人と結婚した。

そしてお得意の未来予言が出る。
「一切合切絶対の進展のない、バカとバカの結婚です。」と言った。その時は心からそう思っていた。この人の中身が男でも女でもどっちでもよかったし、キャラクターの見た目がとても好きだったから結婚した。中身の性別を無視して、話や価値観がよく似ているなと思っていたから結婚した。

病気のことや、誰にも言えなかった秘密を、私はこの人にべらべらと喋った。こんなことは今までになかった。関係が続くであろう人には絶対に言えなかったはずのことを、本当にたかが外れたように、きっと、本当はずっと誰かに聞いてほしかったから、べらべらと話した。話すことができたから、結婚した。(ついでに言うと周りがやたらいつ結婚するんだとやたら言ってきたのもある。なんでだ。)

この人は、私が笑い飛ばしてほしいところはうまく笑い飛ばし、本当は真剣に聞いてほしいであろうことは、きちんと汲み取って真剣に話を聞いてくれた。
話すと言ってもチャットで打っているだけだが、朝方まで何度も話をした。
私の、特大の秘密。それから、病気。生きていくことが億劫で、生活するのは面倒で、仕事にはまともに行けなくて、だけど多分、生きていたいと思っているんだということ。死にたくて消えたくてたまらないけど、本当は、生きていたいんだと思うということ。

大半はどうでもいい、くっっだらない話なのだが、時たま二人でそんな話をした。その人はバカにしなかった。私はそれが、それはそれは嬉しかった。ただ気が合うだけ。キャラクターの見た目が好きなだけ。仲のいいバカ同士。それに間違いはなかったけれど、他の仲のいいフレンドたちよりも特別な人になった。


好きだと言われた。


本当はきっと出会ったときから好きだった。自分からたまたまパーティーに入ってきただけの人にフレンド申請なんて送らない。ツイッターのフォローなんて送らない。だけどなんでかあのときはすぐに申請もフォローも送っている自分がいた。だけど一切合切進展がないと断言されたから言いづらかった。でも知っていてほしいと思った。人間としてとても好き。だけど、恋愛的な意味でも、すごく好き。内面を知って、内面がすごく好き。死にたくなってしまうけれど、生きたいと思っているお前が好きだ、と。

もう全部、諦めていたのだ。
私は私を愛してやれないし、つまるところ誰かを愛すこともきっと難しい、愛されるのなんてもってのほかだと。だから驚いた。向けられる感情は友人愛だと信じて疑うことすらしなかった。ついでに出会ってから半年以上経っていたので、自分のバカさ加減、能天気加減にも心底驚いた。私は私が嫌いであることに代わりはないけれど、それでもその向けられる愛情がすさまじく嬉しかった。言葉に表すのが難しいけれど、本当にただただ驚いて、そして、嬉しかった。

知っていてくれればいい、進展は望まないから、と付け加えられたとき、私の無駄な未来予言のせいだなと改めて思った。だけど私は嬉しくて、本当にたまらなく嬉しくて、毎日毎日頭の中がその人でいっぱいになった。私を否定しないあの人は、私を好きでいてくれる。こんなに素を出して、引くであろう私の爆弾を話しているのに、離れていかないで、むしろ好きだと言ってくれる。私よりいい女性なんて世の中にごまんといるのに、それでも私がいいのだと言ってくれる。誰が嬉しくないんだろう。嬉しいに決まってる。


仕事が終わって最初に確認するのがあの人からのメッセージになった。
仕事中にふと考えるのがあの人になった。
ゲーム中、今日は何をしているんだろうとフレンドリストを確認するのがあの人になった。週末は、また朝までお話ができるのだろうかとそわそわするようになった。


一切合切の進展はないと私は心から思っていたはずだった。知っているだけでいいと言われたとき、少しだけ突き放されたような気持ちになったのはあまりにも身勝手だと思った。私の頭の中であの人が占める部分が大きくなった。私は私のことが好きではない。愛してやることも認めてやることもできない。だけどこの人は平気な顔をして私を認めるのだ。いやどんな表情でチャットしてんのか知らんけども。

告白、と言っていいのかわからないが、公表されてから意識し始めるなんて、まあ中学生みたいなことをしているわけだが、もうアホなので許してほしい。たぶん言われなかったら永遠に気づかなかったと思う。それくらい自然に、あの人は私を愛してくれていた。言われなかったら、私はその優しさに甘えて、ずっとずっと気づかずに、そしてその好意を嬉しいと思うこともなく、また死の淵でふらふらと息絶えそうになっていたのだろうと思う。


思い出の話に戻るが、この人とそうして話をし、連絡を取るようになってから、彼のことを思い出さなくなったのだ。


冒頭に書いたとおり、どうでもよくなったわけではない。だけどいなくてもいいのだ。生活に根付いていなくていいのだ。彼より大切な人がいる。もっともっと真剣に考えたい人がいる。連絡が来ないかなと、そわそわするのは彼ではなくてあの人なのだ。今何してるかなと考えるのは、彼ではなくあの人なのだ。

あの人には、「前に進めたんだね」と、言われた。
そう言われて、ああそうか、私は前に進めたのかと思った。ずっと固執していたものから開放されて、開放される道を選ぶことができたのかと思った。こういう言葉のチョイスに私はいつも救われていた。ちょっとだけ予想できないところもまたいいのだ。「こうくるかな、あれそうきたか。」と思うときもあれば、「今から絶対こうやって言ってくるぞ、ああほらやっぱり言った。」と笑うこともある。あの人も私に素で対峙してくれている。それが伝わるから、私は気が楽で、そしてバカにされないから、居心地がとてもいいのだ。

しばらくnoteを書いていなかった。
久々の近況報告はこんな感じである。相変わらず読みづらく伝わりづらい文章だけれど、結論から言うと私は今幸せである。ちなみにお仕事は1ヶ月お休み中。まあ1ヶ月で復活できそうなくらいには元気にやっている。

好きな人ができました。
少し卑怯な「好き」な気がするのは気のせいだろうか。なんとなく罪悪感を持ってしまうのは、私が私を認めていないからというのと、言われてから意識し始めた中学生っぷりを発揮していることが原因だと思う。もうこればっかりは仕方ないのでそこもまるっと自分で認めてやるしかない。あ、ちなみに付き合ってません。書くの忘れてた。

本人も読んでいるのであえて書くが、やっぱり私を好きになるなんてお前、ちょっと、いや、大分変わってるよ。未来予言で傷つけるし、自分勝手だし、すぐ死の淵に歩いていくし。可愛くも美人でもスタイルおばけでもなければ、優しくもないし。

だけど、ありがとう。

おかげで私、今日も笑って生きられそうです。
お前が望むみたいに、生きていてよかったと思いながら日々を終えている気がします。
嬉しいから、あのスクショは絶対消さないでお守りにするね。

いつもnoteを読んでくださってくれる方たち、どうもありがとう。
少しだけ元気になって、少しだけ笑顔が増えて、少しずつ、生きようと前を向き始めている私の日記でした。

うーん5000文字。なっげえな。もうちょっとまとまらないもんかね。


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