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逆噴射プラクティス(小説)

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2018年10月開催の逆噴射小説大賞に投稿した作品をまとめております。 2019年追記:逆噴射小説大賞2019(第二回)に投稿した作品を収録しました。 2020年追記:逆噴射小説… もっと読む
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#小説

白いあなたを探してわたし

 確かに〈ボイノワ〉は眼鏡に続く新時代の発明品だ。  もともとボイノワは『Voice Noir』と…

復路鵜
6か月前
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土蔵は下へと旅を紡ぐ

 ふらふらしていた俺が故郷に戻ったのが二年前。  実家の祖父と土蔵掃除を始めたのが三時間…

復路鵜
6か月前
54

ビーイング・ドローイング・ビューイング

 手元にはiPhoneで撮影した空の絵。俺は模写に入る。が、集中力は二十分が限度だ。雲の輪郭が…

復路鵜
1年前
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ティターニア

 佐々がピアノを鳴らすと、「ド、レ、ミ」と透き通った声が響いた。  ずいぶん前だが、佐々…

復路鵜
1年前
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『新渡道中膝栗毛 あるいは少女悪人掃討紀行』第一話

1  故郷の新渡県にてフィールドワークしつつ、修士論文用のネタを探していた静海は、いま100…

復路鵜
2年前
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エルフォルビア

 ギルドカウンターに《エルフキラー》の手配書が張り出されたのは二週間前だ。エルフ族ばかり…

復路鵜
2年前
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アリと破滅とキリギリス

「俺は五十年後を知っている」と先輩がいった。  僕と先輩は裏通りを歩いている。たったいま、都内の非合法カジノで数百万円を儲けたばかりだ。賭け方から何まで先輩の指示通りに進んだ。  新ネタにしてはつまらないのでスルーしていると、先輩が続けた。 「あのカジノは明日、サツの摘発で潰れる。この前行った別なところもそうだ。だからタネも丸わかりだ」 「確かにアドバイス通りでしたけど……もっと笑える言い方ありません?」それができたらオーディションに合格してるな、と先輩が苦笑した。

少女奔走要塞学校

 わたしはリクソウさんを追い越し、高射砲横の白線に立つ。日差しが強い。日傘を持参したほう…

復路鵜
2年前
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あなたに捧げる物語 第一話

1  チバが得体の知れない朗読の仕事を引き受けたのは、日当五万円だったからだ。仕事が来な…

復路鵜
3年前
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フロム・バベル

《バベル》三層にようやくたどり着いた。探索に向かう傭兵が多くて、あたしは何回か誰何された…

復路鵜
3年前
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ボーン・ザ・ゴーン

 光が射す場所はオタワだ。そこからシュロたちは逃げる。  光の所在は大気圏に設置された宇…

復路鵜
3年前
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亡骸を背負い重ねて積む稼業

 朝方の三時五十八分、雑居ビルを爆破した。今回の抗争はノームとドワーフのいざこざとして処…

復路鵜
3年前
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奨励会を抜けてアヴァロンへ

「アヴァロンは三段階に分かれる。序盤は九掛ける九のボードでチェスに似たゲームが行われ、駒…

復路鵜
3年前
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あなたに捧げる物語

 チバが得体の知れない朗読の仕事を引き受けたのは、日当五万円だったからだ。仕事が来ない声優にとって五万円は生命線だ。マネージャーを通さない依頼でも。 「ラー、シゥワーズ、シゥワーズ……」チバはあらゆるものを無視して現場入りした。雑居ビル、付き添いの大男、日本語ではない台本。そして彼の前に座る、全身が包帯で包まれた老婦人。仕事と金がなければ環境を選べない。  老婦人は椅子に縛られていた。唸り、足をばたつかせる。  大男は「優しげな声で読み聞かせをしてほしいんです」。 「