『新渡道中膝栗毛 あるいは少女悪人掃討紀行』第一話
1
故郷の新渡県にてフィールドワークしつつ、修士論文用のネタを探していた静海は、いま100年前の故郷のほとりにいる。場所は実家がある新渡市の旧中尾地区の外れだ。なぜわかるのかというと、郷土史に載っていた写真そのままの風景だからだ。
湿地とはつまるところ、泥で覆われただけの湖に過ぎないことを静海は悟った。遠くには樹木が数本立っており、他は平原である。ぬるい風が吹いていく。掘っ立て小屋が見えたが、休憩中の男たちが賭博に興じていた。というか、その掘っ立て小屋に出現した静海は