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SGLT2阻害薬間でのブランドスイッチはほぼ起きない?

こんにちは。株式会社ユカリア データインテリジェンス事業部の城前です。

先日、東京虎ノ門の霞が関プラザホールにて「医薬品マーケティングの“新常識”「電子カルテデータ」の活用最新事例」と銘打った、弊社主催の製薬会社様向けイベントを開催いたしました。

今回・次回の2回にわたり、そのイベントで行った講演の動画とその概要をご紹介します。

まず今回は、何かと話題のSGLT2阻害薬に関するテーマです。

SGLT2阻害薬の糖尿病以外への適応拡大に伴う処方の変化について、弊社ユカリア独自の中小病院電子カルテデータベース「ユカリアデータレイク」の分析腎臓内科専門医とのディスカッションから得られた知見をお伝えするものです。


【ポイント】

  • SGLT2阻害薬の処方患者に付与された病名は未だ大半が「糖尿病」

  • 一方、慢性腎臓病の病名は付与されていないが腎保護効果を期待した処方が増加

  • eGFRが低下した状態から投与開始される場合は、フォシーガが選択される傾向が強い

  • 一度処方が始まると、以降SGLT2阻害薬間でのブランドスイッチはほぼ起きない

  • そのため、フォシーガ以外のブランドの視点で見た場合、いかにCKD状態になる前の段階でファーストチョイスとしてシェアを獲得するかが重要


①SGLT2阻害薬処方患者の大半は、疾患名が「糖尿病のみ」の患者

まず、こちらのチャートをご覧ください。

SGLT2阻害薬投与時の病名

SGLT2阻害薬が投与された際にカルテ上で付与されていた病名を見てみると、「糖尿病のみ(グラフ色:緑色)」の患者が大多数を占めていることが分かります。

また、「糖尿病と心不全 両方(グラフ色:黄色)」の患者数は徐々に増加していますが、「心不全のみ(グラフ色:水色)」、「慢性腎臓病のみ(グラフ色:橙色)」のケースはほとんどありません。

適応拡大を経ても、現状の処方患者のボリュームゾーンはまだ糖尿病のみの患者のようです。

②SGLT2阻害薬の腎保護を目的とした処方は増えている

一方、別のグラフからは、医師が腎保護効果を期待して行う処方が増加傾向にあることも分かります。

eGFR60未満の患者におけるSGLT2阻害薬処方状況

これは、eGFR60未満の患者におけるSGLT2阻害薬の処方状況を示しています。eGFR60未満の患者数全体が増加していますが、そのうちSGLT2阻害薬が処方されている患者数(グラフ色:橙色)も増加していることが分かります。

これは、SGLT2阻害薬を腎保護目的で処方するケースが増えているためと考えられます。

③eGFR低下の段階で投与開始される場合、フォシーガが選択される

次に、SGLT2阻害薬の中でのブランド別の処方状況に着目すると、フォシーガにおいて顕著な傾向が見えてきます。

SGLT2阻害薬各ブランドの初回処方対象患者の変化

初回投与時のeGFR値とHbA1c値で患者をセグメント分類し、 2019年から2022年にかけての時系列での変化を追うと、多くのブランドはさほど変化が見られないのに対して、フォシーガだけが2021年7月以降、eGFR低値の患者にポジションが大きく変動していることが分かります。

これは、フォシーガの慢性腎臓病に対する適応拡大の影響が客観的な臨床の実態として現れたものと考えられます。

④SGLT2阻害薬間でのブランドスイッチはほぼ起きない

続いて、ブランド間のスイッチについて見ていきましょう。

SGLT2阻害薬間のブランドスイッチはあるのか?

結論として、SGLT2阻害薬に関しては、ファーストチョイスからのスイッチはほとんど起きないと言えます。
スイッチが発生したケースは全体の1割にも満たず、CKDになる前から処方されている薬剤は、その後CKDになったとしてもフォシーガやカナグルにスイッチされることはほぼ無いというのが実態でした。

⑤CKD状態になる前のシェア獲得が重要

なお、データから見えたこの実態を、弊社パネルの腎臓内科専門医とディスカッションしたところ、

  • フォシーガを糖尿病治療薬としての位置付けを超えて腎保護目的で処方するケースは周辺の医師も含め増えている

  • 薬剤ブランド毎のエビデンスには着目するものの、クラスエフェクトの認識により、最初に採用した薬剤から積極的なスイッチを行わない医師は多いと思われる

と、分析結果を支持するコメントをいただきました。

そうなると、製薬会社様にとっては、いかに「CKD状態になる前にファーストチョイスとしてのシェアを獲得するか」が極めて重要になってきます。

⑥どのような患者がターゲットとなるのか?

では、どのような患者さんをターゲットとすればよいのでしょうか?

どのような患者さんがターゲットとなるのか?

腎臓内科専門医と症例データを基にディスカッションを重ねた結果見えてきたのは、

  • 「医師なら誰もが躊躇することなくSGLT2阻害薬を使うことができる症例」には、既に概ね処方がされているのではないか

  • シェアを拡大していくには、上記のような「典型的な症例」だけでは足りず、「一癖あるが、検討次第でSGLT2阻害薬の処方対象となる症例」にターゲットを広げていく必要があるのではないか

という推論でした。
そういった症例の一例として挙げられるのが、以下のような患者さんです。

一癖あるが、検討次第でSGLT2阻害薬の処方対象となる症例、の一例

二型糖尿病以外に、免疫疾患、関節リウマチといった併存疾患があることに着目し、

  • ADLの低下、運動療法や体重コントロールの難しさという課題に対して、体重低下を狙ってSGLT2阻害薬を処方する

  • 大量の処方薬による腎機能の低下懸念という課題に対して、腎保護作用を狙ってSGLT2阻害薬を処方する

といった文脈で処方を促すストーリーが考えられます。

一般的に必ずSGLT2阻害薬が使われるケースではないが、使うことに意義があるようなターゲット患者像を医師に想起させるコミュニケーションが必要なのではないでしょうか。

弊社では、今回のような病院の診療状況や電子カルテデータの分析をさまざまなプロジェクトで行っておりますので、気になることがあれば以下のメールアドレスまで、お気軽にご相談ください。

株式会社ユカリア
データインテリジェンス事業部 pharma.biz@eucalia.jp

次回は、3回連続動画企画の最後、「狙ったポジションで処方を伸ばすために行うべき実践的なインタビュー調査」についての動画とその概要をご案内いたします。


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独自の電子カルテデータベース専門家(医療従事者・アカデミア)ネットワークを強みとした、製薬企業様のマーケティング・営業活動をご支援する調査・コンサルティングを行っています。
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お問合せ窓口:pharma.biz@eucalia.jp


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