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絵とワードの物語 『ころころ、みちびかれ』 


 同じ場所、同じ時間で、ほぼ毎日すれ違うその人を、何とはなしに覚えちゃったのは、仕方がないことだと思う。
 見た目の年齢的には大学生ぐらいでもおかしくないその男の子は、目の前が見えないくらいの大きな荷物を抱えていたり、メモを片手にキョロキョロしていたり、ぼさぼさ頭で走ってたりと、何かにつけて目立っている。しかも毎回茶色のエプロンをつけていて、目印としてもばっちりだ。
 今日もほら。
 あ、あ、なんて言葉をぼろぼろ落としながら、紙袋からこぼれ落ちたオレンジを追いかけてる。袋を気にしないものだから、追いかけるそばからまたひとつ、もうひとつと落ちていく。
 こん、と靴先にオレンジがひとつぶつかった。
 ちょっと迷ったけど、通行人にぺこぺこしながらスクワットを続けている彼があんまり可哀想だったものだから、拾い上げたそれをはい、と目の前に差し出してみる。
「あ、ありがとうございます!」
 間近で見るとちょっとカワイイな、なんて思っちゃったのが、私たちの始まりだった。



絵 はしもとあやね @enayacomic
文 ねきの@nekino_e



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