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『 華下の誓い 』 - 1分で読める深く心に残る物語

「うわっ!」
 大きな音にびっくりした僕の反応が可笑しかったのか、ぴかぴかと光る空を見上げたまま、きみは声を上げて笑った。
「相変わらず、花火、苦手なんだね」
 仕方ないでしょ。つい身体が反応しちゃうんだから。きみの陰に隠れなかっただけ、進歩だと褒めて欲しいくらい。
 少しだけ拗ねたのが伝わったのか、きみは花火を見上げたまま、僕の手を驚かせないようにそうっと握る。そのぬくもりは昔から変わらなくて、思いっきり頭を撫でてもらいたくなってしまう。

「ふふ、……思い出すなぁ、あの子のこと」
 きみの言葉にどきりと胸がはねる。遠いとおい目をしているきみが思っている存在のことを、僕は知っている。
 きみの足元で尻尾を振ってくるくる回ったり、嬉しいとジャンプして飛びついたり、……さいごのさいごに、きみの指先をぺろりと舐めたりしたことも、ぜんぶ。
「ごめんね、君はあの子じゃないのに」
 分かっているよ、大丈夫。僕は二度ときみを置いていったりはしないから。
「ううん、何も間違ってないよ」
 もう僕は犬じゃない、きみに護られてばかりじゃない。だって、ほら、こうしてきみの手を握り返すことが出来る。

 せっかくヒトの形になれたんだから、今度は僕がきみを護るよ。


絵 はしもとあやね @enayacomic
文 ねきの@nekino_e



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