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絵とワードの物語 『青、蒼、碧』 


私はひとり、靴先で地面を弾きながら歩いている。
気持ちはすっかり土砂降りなのに、本当に雨が降っていたのは三時間前のこと。
早く家に帰ろう。
ふくらはぎに散った泥はねが乾いてしまう前に。
水溜まりを踏みつけそうになり、一瞬足が緩む。
反射した光が網膜をちりりと焼いた。
私は瞬きをして、その熱につられ顎を持ち上げる。

あお・・が、視界いっぱいに飛び込んできた。

埋め尽くされた青、蒼、碧、あお。
雨ですっかり埃の洗い流された空気は、遮るものなくその色を私の瞳に流し込んでくる。
ゆるり、その視界が歪んだ。
ああ、我慢していたのにな。
そんな言葉を脳裏に浮かべながら、頬を伝う熱を拭うことなく、私は空を見上げ続ける。
うつしとったそのあおを全身で受け止めて、あしたの私が笑えるように。



絵 はしもとあやね @enayacomic
文 ねきの@nekino_e



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