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絵とワードの物語 『暑気に浮かれて』


 うちわが起こすそよ風が、彼女の肌を撫でていく。
 耐えきれない暑さに負けて空中を撫でた指先が、透明なグラスに注がれたメロンソーダを生みだした。
 見えない指先がディッシャーを掴み、器用にアイスをひとすくい、その水面に乗せていく。鮮やかな緑がきらり、グラスの水滴に反射する。
 部屋ごと季節を塗り替えることも出来るのに、彼女はグラスと同じように玉の汗をかきながら、椅子に腰掛けたまま、空中を漂っている。

「あっついなあ……」

 困り眉をしかめながらも、少しだけ嬉しそうに。
 ふわふわ、ふよふよ、なまぬるい空気の中で、彼女は今日もページをめくる。


絵 はしもとあやね @enayacomic
文 ねきの@nekino_e



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