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マレーシア人が転職する意味

 マレーシアでは頻繁に転職することが日常化しています。日本の考え方とは全然異なるため、マレーシアでビジネスをする人は注意が必要です。彼らはなぜ転職をしていくのでしょうか。

 結論から言うと、ずばり給与と実力を上げていくため。いくつもの会社で働くことで経験を積み、キャリアを積んでいくという考えのほうが強いのです。

 マレーシアで転職をすることをJob hoppingといいます。たいがいは2~3年ぐらいすると違う会社に移っていきます。マレーシアではこれは非常に普通なのですが、日本の特に中高年以上の人から見るとこれは「異常」に見えるらしい。

 日本でも最近は若い世代を中心に転職を繰り返す人が多いですが、それでも日本の社会ではまだどこか転職はタブーな雰囲気が残っている気がします。終身雇用がすでに崩壊している昨今で一生で一つの会社にいるということは今では考えられないと思うのですが、それでも日本の地方の会社だとこの考えはまだ残っているようです。

 日本の地方の会社が海外に進出してくると、この考えでマレーシア人を雇うことから経営者とローカル従業員の間の考え方が全く異なることがあります。日本人経営者はマレーシア人の転職に批判的なコメントをするのですが、しかし、それは的を得ていません。

 マレーシアでは終身雇用という制度がそもそもありません。いつクビにされるかもわからない状況(もちろん雇用法があるので、突然の解雇は違法になります)で、そのためには個々人が切磋琢磨して仕事の経験も積んでいく必要があるのです。

 転職をすることは給与が上がっていくことを意味します。給与が低い会社に転職することはありえませんし、給与が上がった会社に行くということはそれだけその人の職歴や実績が買われたということになります。転職ごとに給与を上げていくのは、いわば自分を向上させ、社会で認めてもらうためでもあるのです。

 一方で、ほとんど転職をしないマレーシア人もいます。マレーシアでは転職をしない人は「あまり仕事ができない人」と見られます。それはどこかのサイトでも書いてありましたが、一つの会社にしかいない人というのは、その会社の職人になってしまうことでもあります。長く同じ会社にいる人は「他の会社では使えない人」とのレッテルが貼られてしまうのです。実は逆にこうなるとマレーシアでは転職ができなくなってしまう可能性も高く、同じ会社に5年以上いると転職をしようとすると不利になってしまうおそれもあるのです。

 もちろん10年以上働いて社内のポジションがあがっていき、その会社の取締役にまで登ればこれは話は別です。しかし、何年もずっと同じポジションで課長や部長止まりだと意外に転職というのはマレーシアでは難しくなっていきます。自分でビジネスを起こさない限り、その先はその会社でずっとやっていくしかない選択肢に陥ります。そんな状況なんです。

 僕もこれまで転職をしてきていますが、以前にマレーシアの人に「すごい」と言われてことがあります。当時は何がすごいのかよくわからなかったのですが、つまり上記の理由からなのです。転職をしたほうが実はマレーシアでは有利で、箔がつく。

 おそらくこれはマレーシアだけの話に限らず、他の国も同じではないでしょうか。日本がある意味で特殊な環境なのだと思います。終身雇用の会社って海外ではまずありえません。確かにマレーシアでも試用期間を経て正社員になっていきますが、たとえ正社員になったとしても、そこであぐらをかくことはせずにある程度の経験を得てしまえば、次に行ってしまう。もちろん社内の人間関係で去っていく人もいますが、多かれ少なかれ数年でいなくなってしまうのです。

 海外に進出する日系企業はそんな中で大変苦労はされているのですが、もともとそういう認識の上に立ってやっていかないとダメなんです。なので、「すぐに転職してしまう」と批判するのはポイントがずれている。ただ、本当にその社員のことを大切に考え、その会社で働くことで居心地がいいと思ってもらえればずっといてもらえることにはなりますが、そこは給与だけでなく、福利厚生の面でも相当腐心しない限りは難しいでしょう。要は人間どうしのコミュニケーションが大切かと思います。

 


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