「お客様」と「ファン」と「サポーター」は何が違うのか
先日の私のツイートが一部で話題になっていたということなので、久しぶりにツイートの深掘りをしてみることにしました。
ここで私は意図的に「お客さん」と「サポーター」を分けて書いているわけですが、これに対し「自分はお客さんなのか、サポーターなのか?」という疑問を持つ人が出てきました。
「お客様」と「サポーター」はなにが違うのか
一般論はさておきとして、私が考える「お客さん=お客様」と「サポーター」の違いは、お客様が「自分がこの試合からなにが得られるか」を主眼に置いてスタジアムに来ているのに対し、サポーターは「自分がこの試合において寄与できることはなにか」に主眼を置いている、ということです(ちなみに「両方」という人も多いと思いますので、あくまで「一番の目的が何か」という前提で話します)。
端的にいうと「テイクしたい人」と「ギブしたい人」の違いです。アウェイに行くとか行かないとかは関係ありません(ツイートでは端折ってますが当然「アウェイにいかないサポーター」もいます。当たり前ですが)。
たとえ話をしますと、私は時々Bリーグやプロ野球を観に行くのですが、そのときの私は「お客様」だと思います。なぜなら、私が観戦する主目的は「ビール飲みながらスポーツ観戦して楽しい気分を味わいたい」とか「有名な選手を観てみたい」とか「会社のみんなでワイワイやってストレス発散したい」といった理由だからです。贔屓のチームもあるようなないような状態なので、勝敗にもこだわりません。負けても「楽しかったね」と言って帰ることがほとんどです。
一方、私がかつてJリーグを観戦していたときは、そういった「自分が楽しみたい」という気持ちよりも、微力ながらでもチームの勝利に貢献したいという気持ちが大きかったように思います。だから声を出して応援もするし、グッズもグルメも買うわけです。そしてもちろん、贔屓のチームが明確な状態なので、勝敗に激しく一喜一憂し、時には涙し、怒りが爆発してツイッターで苦言を呈したりもします。はっきり言って、楽しいことよりストレスのほうが多かったと思います。
ちなみに、(私の定義では)「お客様」と「サポーター」の間には「ファン」という層もあります。ファンは、お客様と似ていますが、違うのは贔屓のチームが明確なことです。
なぜあえて「お客様」から「サポーター」を分離するのか
私は現在、Jリーグクラブで集客部門を統括しており、とくに新規層の獲得に注力しています。つまりここで定義する「お客様」を頑張って増やしているわけです。
なにやら、ツイートへの反応を観ていると「お客様(お客さん)」の上位概念に「サポーター」があると考えている人がけっこういたのですが、少なくとも自分は(というかどのクラブの人もだと思いますが)そんなことは思っていません。ただ、スタジアムに来る目的が違うだけです。来場回数も座席の位置も関係ありません。
もっというと、来場者のすべてが「同じ入場料を支払っている人」と考えると、全員が「お客様」というのが正確な表現かもしれません。にも関わらずなぜ「サポーター」を分離して考えているのかというと、それこそがサッカーというコンテンツの特徴であり、強みだと思っているからです。
スタジアムに足を運んだことがある方ならわかると思いますが、サッカーのスタジアムには独特の雰囲気があります。この雰囲気は、サポーターなしでは作り出せません。
そして、その雰囲気でチームが勝ったり負けたりするのです。
間違いなく、舞台装置的な要素を鑑みても、選手のモチベーションに与える影響を考えても、サポーターはクラブを構成する一部です。Jリーグもあえて「ファン・サポーター」という言い方をしていることからもわかるように、サポーターは「お客様」であって「お客様」でないのです(この辺までは大方のJリーグサポーターには釈迦に説法かと思いますが)。
いったい何がチームを強くするのか
サポーターが「クラブの一部」であるとすると、サポーターが多いクラブは必然的に組織として強くなります。その理由を、私は「サポーターが多いとお金がたくさん集まるからだ」と思っていました。確かに、その側面はあります。サポーターが増えればスポンサー料も入場料収入も増えるので、そのお金で強化ができます。
ですが、実際にJクラブで働いてみて、必ずしもサポーターが多いからといって強くなるわけでもないんだなと思いました。強いクラブは、一言で言うと「熱量の総和」が高いのです。
どういうことかというと、サポーターを含む、フロント、ボランティア、スタッフ、監督、選手、その他関係者がどれほど真剣にチームを勝たせたいと思っているか、勝つことに固執して細かいことにもこだわっているか、その1人あたりの熱量の高さと人数を掛け合わせたものが、チームの「強さ」を決めているのではないかと。なんとなくぼんやりと、最近ではハッキリと、そのように考えるに至りました。
つまり、冒頭の私のツイートの「お客様をお客様のままにしておいても(チームが)強くはならないのではないか」というのは、1人あたりの熱量の話なのです。勝ち負けに固執しない人とそこに強くこだわる人とでは、集団になったときに差が出て当たり前です。人が真剣になることで生まれるエネルギーは計り知れません。いわゆる「熱狂」が生まれている状態です。
それは、何かあったらすぐ暴れるような先鋭的なサポーターを増やすと言う話でもありません。もっとロジカルに「チームを勝たせるにはどうしたらいいか」を考え、実践できる人を増やさないといけないのです。
そんな背景があり冒頭のツイートになったわけですが、それに対しIT業界を代表する経営者のお二人からこんなリプライをもらいました。
お一人目は、あの「モンスト」を作ったミクシィ社長の木村さん。
お二人目は、A8.netを運営するファンコミュニケーションズの柳澤社長。
あまりにもアドバイスが的確で絶句しました。
私は「サッカーの魅力が大事」と結論付けたというか、文字数の関係もあって安易な結論に「逃げた」のですが、二人はそれを見透かしてか、あえて違う角度からアドバイスをくれたのです。あんな断片的なつぶやきで、しかも二人ともスポーツ業界の現場の人じゃないのに、相当的を射ていると思いました。愚痴も言ってみるものです。
というかサッカービジネス、コミュニティ作りの達人のけんすうさんや家入さんあたりがやると、もしかしてめちゃめちゃうまく行くんじゃないの?っていう気がしました。
そう、プロサッカークラブはそれ自体が巨大な「コミュニティ」なのです。
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