【LGBTQ】LGBT法案、3案提出で審議入り見通せず。理解深まることに期待。

5月26日、日本維新の会と国民民主党は、LGBT法案(議員立法)を国会に共同提出した。すでに提出されている法案で使用されている「性同一性」(与党案)、「性自認」(議連案)という文言を「ジェンダーアイデンティティ」に改めている。
ジェンダーアイデンティティという文言について、「国際共通語としてもすでに使われている」と説明している。

与党案・野党2案の正式名称

LGBT法案の正式名称は以下のとおりである。ここでは、維新・国民両党が国会提出した法案を中心に内容を確認する。また、関連記事を掲載しておく。

・与党案(自民・公明)【”性同一性”案】
 「性的指向及び性同一性の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」(要綱法律案:衆議院HP)

・議連案(立民・共産・社民)【”性自認”案】
 「性的指向及び性自認の多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」(要綱法律案:衆議院HP)

・維新・国民案(維新・国民)【”ジェンダーアイデンティティ”案】
 「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」
「性同一性」を「ジェンダーアイデンティティ」に変更し、性の多様性に関する国民の理解が必ずしも十分でない現状について明記するなど、与党案を修正した内容になっている。
また、国民民主党は、この修正案を「性多様性理解増進法案」と呼び、通称使用している。

日本維新の会、国民民主党各党HP(法案提出について)
2023年5月26日(金)【性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案(維新・国民)】提出のお知らせ(日本維新の会HP)
【法案提出】「性多様性理解増進法案」を提出(国民民主党HP)

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維新・国民案、新項目「措置の実施等に当たっての留意」、「全ての国民がー」

維新国民案には、「措置の実施等に当たっての留意」の項目が追加された。条文には、「ジェンダーアイデンティティにかかわらず、全ての国民が安心して生活することができるよう留意する」と明記されている。
両党は、トイレ・公衆浴場の使用など女性の権利侵害を与党・議連案の問題点として挙げていた。また、シスジェンダーの権利保護の視点が欠如していると指摘しており、「シスジェンダーへの配慮規定」を盛り込む方向で調整していた。
だが、新たな差別を生むとの指摘の声に対応し、シスジェンダーの文言を使用せず、「ジェンダーアイデンティティにかかわらず、全ての国民」という形で権利保護の内容を定め、対案を提出している。

ジェンダーアイデンティティ

ジェンダーアイデンティティ(gender identity)は、日本語訳すると性同一性・性自認である。
「性同一性」を性同一性障害に限定した解釈がされることで対象が狭められる問題や、「性自認」と”自称”を混同する問題が、与党案・議連案に対する意見として挙がっている。「ジェンダーアイデンティティ」であれば、そうした問題が生まれにくいという意見がある。

性の多様性と権利保護、両方の理解増進

LGBT理解増進法案をめぐって、様々な観点で議論されているが、意見はまとまっていない。性の多様性の理解増進が重要であることは共通する。
だが、この法律における性的マイノリティの権利保護の観点が希薄化しないことは、性の多様性に寛容な社会を実現していく上で重要だ。
その後の具体的な対応でも議論が続くことは想定されるため、LGBTQなどの性的マイノリティの権利保護とその必要性を確認できる形にしておかなければならない。
性の多様性と権利保護の内容について、両方の理解を増進する議論が国会でおこなわれた上で成立することが重要だろう。

様々な観点で議論されることで、理解が深まることが期待されるが、3つの法案が並び、審議入りの目途は立っていない。

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