メンターの言葉は一生モノの価値、社会起業塾2022メンバー募集、他「ETIC.ソーシャルイノベーションセンターNEWS」2022年6月14日号
こんにちは、田村千佳です。去年から始めたダンスに日々勤しんでいます。ETIC.では社会起業塾イニシアティブ(※以下、社会起業塾)という、社会起業家の創業支援プログラムの担当をしています。
社会起業塾は2002年から始まり、今年で20周年です。これまで140名の社会起業家にご参加いただきました。その卒塾生の皆さんから多くいただく言葉が、「メンターからもらった問いや言葉が、プログラム終了後も折に触れて思い出される」というものです。
社会起業塾のプログラムの特徴の一つが、メンター(先輩経営者・起業家)によるメンタリングです。メンターが、起業塾への参加者(塾生)自身や事業の進化のために、経営や事業に関する実践的なアドバイスをします。さらに、視座を引き上げ、ブレない軸や、課題の本質と向き合う粘り強さを塾生が身に着けられるよう支える役割を担っていただいています。今日は、塾生の心に残っているメンターの言葉をご紹介します。
「何のためにやるのか」繰り返し問われた期間は、一生ものの財産
昨年発行した「社会起業塾イニシアティブ インパクトレポート~19年間の奇跡と成果を振り返る」では、「メンターからのアドバイスや問いかけ」について、アンケート回答者の96%から「有効だった」と回答がありました。
一般的な創業支援プログラムでのメンタリングは、「ビジネスモデルの作り方」といった手段の磨き方が中心となります。しかし、社会起業塾のメンタリングでは、手段の方向性を定めるための「目的」をまずは深める事からスタートします。
メンターから最初に問われるのは、「なぜあなたはこの事業をしたいのか?」「あなたは一番誰に届けたいのか?」と事業の軸となる部分を深掘りすることです。
ビジネスモデルについてアドバイスをもらえると思ったら、根本について問われて、戸惑ったり、もどかしい気持ちになる方もいらっしゃいます。
しかし、事業の方向性を決める羅針盤となる「なぜ自分がこの事業に挑戦するのか・誰に届けたいのか」を徹底的に問われ、自分自身の中に軸ができあがっていくプロセスに価値を感じていただいています。
・「当時は『正直収益面でのアドバイスが欲しいのに』と思うことも多かったが起業家としての根幹であるなぜやるのか、何のためにやるのかを繰り返し問われた期間は、一生ものの財産だと思っています。」 認定NPO法人ReBit 代表理事 藥師実芳さん(2014年度卒 NEC社会起業塾生)
・「解決したい社会課題について、『本心でそう思っているのか』と何度も問われた。その結果、自分のなかに嘘があることに気づき、本当に実現したいことに向かえた」KUMIKIPROJECT株式会社 桑原憂貴さん(2015年度卒 エヌエヌ生命社会起業塾生)
悔しかった思いを手帳に
2020年度NEC社会起業塾生のNPO法人あなたのいばしょの大空さんは、24時間365日、年齢や性別を問わず誰でも無料・匿名で利用できるチャット相談窓口を運営しています。
大空さんが社会起業塾に参加していたのは、新型コロナウイルスが一番猛威を振るっていた時期。苦しい状況下に置かれている人が増えたことで相談件数も急増。それに伴い、ボランティア相談員を日々増やしていました。
急増するボランティア相談員の受け入れに対して、組織が耐えられなくなってしまうのでは?という心配を感じたメンターから、「立ち止まりなさい、何を急いでいるの。このまま行くと人が辞めるよ」という言葉をもらった大空さん。
「絶対にそんな結末にはしない!」とメンターからの言葉に対抗する気持ちが強かったそうです。一方で、メンターからの言葉の真意に、心の奥底で気づいていた大空さん。しかし、当時は本当に苦しい状況下に置かれている人が増えていた中、すぐに採用をストップするということに対して、大きな葛藤がありました。
悔しい想いを持ちながら、言われた言葉を手帳に書き、たびたび見返すことで自身の活動のエネルギーにしていたそうです。何度も見返して、その言葉に向き合い続けた結果として、通年採用から年4回の採用に変更し、当時のメンバーは変わらず働き続けているそうです。
「あの時、相談員の採用を続けていたら、結果は違ったのかもしれない。どっちが正しい選択だったのかは分からない。だけど今がある」と、おっしゃる大空さん。その時メンターにもらった言葉や、大空さんの葛藤の末の決断は今でも忘れられない大きな事業の転換点となりました。
プログラム初日にもらった言葉に大混乱
今でも心に残る問い
2018年度花王社会起業塾生の学習支援塾ビーンズの塚崎さんは、不登校や、様々な理由で自信を失った「悩める10代」に向けた学習塾を運営しています。
ご自身の経験から、「子どもたちが自尊心をもって、主体的に頑張れる何かを見つけて生きていってほしい!」そんな願いを持って始めた活動に対して、社会起業塾初日で問いかけられたのがこちら。
「自尊心をもって、主体的に何かを頑張ることって本当に正しいのかな?」
この問いを受けた時、塚崎さんの頭の中は大混乱。すぐにはその言葉を受け容れることができなかったそうです。ご自身にとって大事だと思った価値観や考え方について、真っ向から「それって本当にそうなの?」と問われたのですから。
しかし、塚崎さんの中でこの言葉が胸にささり、少しずつ腹落ちしていったそうです。当時は「子どもの主体性」に重きを置いていましたが、今では「子どものありのままを受け止める」ことを一番大事にされています。ビーンズに来ると気持ちが楽になる、自分らしくいられる、そんな温かい場を創っていらっしゃいます。
問われ、考え、自分の選択をする場
私たちは塾生に、メンターからもらった言葉を鵜呑みにする必要はないとお伝えしています。
社会起業塾には4人のメンターがいるのですが、全員が同じことを言うわけではありません。さまざまな観点からアドバイスをもらうなかで、自分では気づいてない視点を指摘されたり、違う考え方に触れて頭が混乱することもあると思います。その結果、見えてくる気付きがあり、行動に移して仮説検証をする。このプロセスが、自分の事業の方向性を定める上で大事だと考えています。
社会起業塾イニシアティブでは、2022年度の募集を開始しました。今年は新たなメンターも参画し、オンラインと対面合宿を組み込んだプログラムとなっています。
\2022年度のメンター/
・小野 邦彦 氏(株式会社 坂ノ途中 代表取締役)
・今井 悠介 氏(公益社団法人 チャンス・フォー・チルドレン 代表理事)
・甲田 恵子 氏(株式会社 AsMama 代表取締役社長)
・大西 連 氏(NPO法人自立生活サポートセンター・もやい 理事長)
社会的な活動や事業を前進させたい方の、ご応募をお待ちしておりますし、
皆さんの周りで社会起業塾を活用いただけそうな方へのご紹介も歓迎です!
▼詳細は、社会起業塾イニシアティブのウェブサイトをご覧ください
- INFORMATION -
<社会起業塾イニシアティブ 20周年特別企画>
社会起業家によるトークイベント・個別なんでも相談会
●トークイベント、第一弾は【6月27日(月)19:00〜】
「今の活動から、どう次の一手を打てばいいのかがわからない。」
「自分自身の実現したい社会や、目の前に起きている社会課題に対して、
どのように事業を創ることができるのかわからない」
そんな起業したての方々のお声をもとに、先輩起業家の創業時の
試行錯誤したストーリーを聞くトークイベントです。
・どう事業を創ってきたのか
・これまでにどんな葛藤があったのか
・ビジョンやミッションはどう決めたのかなど、お話をお聞きします。
想いや情熱を事業として形づくっていくためにも、
先輩起業家のお二人からたくさんの気付きや学びを持ち帰ってください!
<開催概要>
『ビジネスプランをつくるその前に〜情熱を形づくる上で大事にしたいこと』
・日時 / 場所:2022年6月27日(月)19:00〜21:00@オンライン
・ゲスト
中山 勇魚 氏(NPO法人Chance For All 代表理事)
大原 学 氏(一般社団法人マツリズム 代表理事・マツリテーター)
・参加費:無料
・お申し込み / 詳細はこちら
●個別なんでも相談会、随時実施中!【無料】
社会起業塾に関心を持ってくださった方に向けて、
ETIC.スタッフによる「なんでも個別相談会」を開催しています!
「プログラムについて具体的に知りたい」
「今の事業ステージでプログラムが活用できるか知りたい」
「事業について相談をしたい」
「エントリーシートの書き方を相談したい」などどんなことでも構いません。
少しでも気になることがある方は、ぜひお申し込みください。
●詳細はこちらから
<7月3日(日)エントリー締切!>
東京都が主催する400字で世界を変えるスタートアップコンテストTOKYO STARTUP GATEWAY 2022 を開催
ソーシャルイノベーション、リアルビジネス、グローバルを
見据えた起業など、分野を越えて、「東京」から世界を変える
若き起業家を輩出する日本最大級のスタートアップコンテストです。
今年で9期目を迎える本コンテストは、起業をめざす
15歳から39歳までの個人が、400文字のアイデアでエントリー可能です。
優秀で実現可能なビジネスプランなど、初めは必要ありません。
「こんな世界や世の中をつくりたい、みてみたい。」
その、あなたに秘めた夢・情熱こそが全てのはじまりです。
育成型のコンテストとなっていますので、この場に集まる仲間や応援団と共に、真に世界を変えていける力を、この場で思い切り磨いていってください。
世界を変えるのは、きっと一人ひとりの情熱です。
これまでの発想や想像力を超えて、これからの10年、これからの100年を
大胆に描く皆さんからのアイデアを楽しみにお待ちしています。
◆エントリー受付期間:2022年5月10日(火)〜7月3日(日)23:59
◆コンテストへのエントリー・詳細はこちらから
大英帝国勲章受勲ヴィディヤマラ・バーチ氏とジェレミー・ハンター氏によるオンライン・セッション The Compassionate Warrior(ザ コンパッショネート ウォーリア)
この夏、日本で初めての、マインドフルネスの歴史に名を残す実践者、
ヴィディヤマラ・バーチ氏とジェレミー・ハンター氏を迎えたオンライン・セッションを開催します。
ヴィディヤマラさんは、イギリス在住のマインドフルネスとコンパッション(思いやり、情、慈愛)の先駆者で、35カ国以上にいる600人の認定講師を通してマインドフルネスとコンパッションのセッションを届けるBreathworksの共同創業者でもあります。
充実した、幸せで、有意義な人生を取り戻すのに役立つツールを伝えたいと願い、世界に向けて働きかけ続けています。
その功績が認められ、今年、イギリス王室より大英帝国勲章を受勲しました。また、英国で最も影響力のある障害者の一人でもあります。
ジェレミー・ハンター氏は、米国のピーターF.ドラッカー大学院の准教授であり、MBAや米国内外のエグゼクティブに、マインドフルネスやセルフマネジメントを教えています。その傍ら、過去7年にわたり、200人を超える日本のソーシャルリーダー向けにマインドフルネスのセッションを届けてきました。ETICはその運営事務局をしています。
そのお二人を講師に迎える今回のテーマは、The Compassionate Warrior(ザ コンパッショネート ウォーリア)です。
直訳すると、Compassionate(コンパッショネート)「思いやり・情・慈愛のある」Warrior(ウォーリア)「戦士・勇士」。
どんなに困難な状況でも、愛に満ちた力を発揮する人というイメージです。
時には、相手のためであっても耳の痛いことを伝えなければならなかったり、万人にとって必ずしも嬉しいことではないような、困難な決断が必要な場面があるのではないでしょうか。
その時に、目を背けずに、本当に望むことを叶えるための行動を「コンパッション」からとれるかが問われているのではないかと考えています。
この類い稀なる機会を、ぜひお役立てください。ご参加、お待ちしております。
<セッション概要>
・日時:2022年7月22日(金)午後2時00分~午後6時30分
・会場:オンライン(Zoom)
・対象:
ジェレミー・ハンター教授 Special Session for Social Leadersに参加したことのある方、ETICの各種プログラムに参加したことのある方
・参加費:35,000円
※早割りチケット:6/22までのお申込みされた方は30,000円
・定員:20名( 最少催行人数10名)
◆プログラムの詳細はこちらをご覧ください。
◆お申し込みはこちらのフォームからお願いします。
Editor's Note - 編集後記 -
こんにちは!川上果穂です。約1年の産育休をいただきこの4月より復帰いたしました。その間にちゃっかり住まいを東京から瀬戸内海が見える広島に移しました。仕事と子育ての両立の大変さを身にしみて感じる今日この頃です。また、産前と同じく、社会起業塾イニシアティブの企画・運営とコーディネーターを今年も担当します!
今回のメルマガで紹介させていただいた、社会起業塾のプログラム内で、起業家の皆さんがメンターからもらった心に残っている言葉たち。いかがでしたか?誰しも心に残っている言葉があると思います。このメルマガを通して、そういえば自分にも…と思い出したエピソードがあればぜひ教えてください!
冒頭にもありましたが、社会起業塾は多くの方々のご協力・ご支援のもと、20周年を迎えることができました。本当にありがとうございます。そして、2022年度はメンターの新規参画など新たなフェーズへと舵を切る1年となります。
ここに至るまで、改めてチームで社会起業塾の価値や存在意義とはなにか、起業家のみなさんに卒塾後はどうあってもらいたいか・どうなってもらいたいか等々の対話を繰り返し、イチから検討を重ねました。やっと今年度の内容が固まり、エントリー開始を迎えることができたのが1週間前。すでに感慨深いのですが、今年はどんな起業家のみなさんとご一緒できるのかとても楽しみです!
発行元:
NPO法人ETIC.ソーシャルイノベーション事業部
incu@etic.or.jp
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