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NFTを活用した地域活性化の可能性 ~ 地域活性化、自治体関連ニュースピックアップ ~

今回は「NFTを活用した地域活性化の可能性」がテーマです。

毎週 1,000本 近く配信される地域活性化、自治体関連のニュースに目を通し、個人的に「これは!」と思ったニュースを要約&解説しています。日々多忙な地域、自治体に関わる皆様の情報収集や施策のヒントになれば幸いです。

今週は以下のニュースに注目。


■地方創生にもNFTを活用!人口800人の限界集落が錦鯉のアートを販売

人口800人の限界集落である新潟県長岡市山古志・旧山古志村が錦鯉をシンボルにしたNFTアート「Colored Carp」を発行。自治体公認プロジェクトとして関係人口創出にNFTを活用した初めての事例となりました。

このNFTは電子住民票の役割も兼ねており、電子住民専用のコミュニティチャット(Discord)にて、地域を存続させるアイデアや事業プランへの意見や投票がリアルタイムに実施可能です。近い将来はNFTを保有する電子住民が滞在できる施設や特別な体験の提供等、実際に山古志村を訪問した方が楽しめる価値づくりにも注力するそうです。

NFTとは

上記の中で頻出したNFT(Non-Fungible Token)というワード。「ニュース等で最近よく目にするけどよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。分かりやすく解説している記事が多くでているので、詳細な説明はしませんが(正:難しすぎて無理)、以下のような特徴を持った デジタル資産  なんだなぁと思っていただけばと思います。

デジタルデータが唯一無二であることを証明でき、保有の証明が可能
今までデジタルデータは複製が容易で、保有の証明が困難でしたが、ブロックチェーン技術を活用して「オリジナルはこの人が発行し、現在の保有者はこの人です」と証明書をつけることでデジタルデータにおいてもリアル世界の資産と同様、所有の証明ができます。

今回取り上げた錦鯉のNFTは発行数が10,000個とされているので、オリジナルデータはそれ以上この世に存在しないことが保証されます。もちろんNFTもデジタルデータなので所有者以外も閲覧したり、スクリーンショットをとることもできますが、それらのデータはオリジナルではありません。(デジタルデータのオリジナルを証明することで所有欲を満たすことができるのかという点は人によると思いますがそれは別の議論)

数量限定で生産される時計とかと同じようなイメージですね。どれだけ見た目がブランド品と同じであろうと、ブランドが生産した以外のものはコピー品。似て非なるものです。

「それが本物だと証明でき、数量が限定されている」状態で需要が高まれば価値もあがるため、NFTにとんでもない値段が付く場合もあります。

有名なのはTwitterのCEOが自身の初ツイートをNFT化し、オークションに出品したところ約3億円の値段が付いた事例。またBored Apeというプロジェクトでは絵柄が異なる10,000個の猿のアート画像をNFTで販売。レアな絵柄のNFTは約2億5,000万で売買されています。

今のところ投機の対象とみられることも多いためかなりバブリーな値段なのだとは思いますが、NFT技術はアート、音楽、コンテンツビジネス等様々な機会で活用されていくことが予想されるため、注目と期待でこのような高額な値段がつく場合もあります。

NFTは特別な体験やサービス、コミュニティへのアクセス権

上記のような市場の盛り上がりを受けて「持っていれば儲かりそう」「とりあえずNFT化すれば高く売れる」というイメージで注目されることが多く、NFT自体の物珍しさ(所有価値)に投資されるようなNFTですが、山古志の事例のように、NFTを特別なサービスや体験、コミュニティにアクセスできる権利(利用価値)として捉えると非常に可能性があるなぁと思いました。

NFTはデジタルデータのオリジナルを証明できるので、NFT自体を所有者限定コミュニティやサービス、体験へのアクセス権として利用することができます。既存の例でいうと、ゴルフ会員権を持つ人が自分の好きな時間にゴルフ場でプレーできたり、ファンクラブ加入者がライブの先行販売に参加できたりするようなものです。このような体験をデジタル上で拡張するとオンライン、オフライン問わず保有者だけの特別な体験や価値を提供することができます。

例えば楽曲をNFT化した場合、NFT保有者がアーティストの楽曲使用に伴う手数料の一部を得ることができたり、限定ライブに参加するといったことも可能です。さらにNFT保有者の権限が強い極端な例を想像すると、NFT所有者が選抜したメンバーや監督で球団を結成し、投手が投げる1球1球、指示をプレー中にリアルタイムでNFT保有者が投票で決定できるというリアル野球盤のようなことも不可能ではないと思います。

NFTは究極のファンコミュニティ、関係人口創出システムになりうる

すこし脱線しましたが、このようにサービスや体験、コミュニティ等、NFTの利用価値を発行元が丁寧に設計することで、今まで実現できなかったビジネスモデルや世界観を構築可能になると思います。

自治体や地域活性化の文脈で考えると、山古志のようにNFTの販売益で新たな企画やプロジェクトや課題解決を自主財源で進めることが可能になり、そのアイデアや意見を電子住民から募ったりプロジェクトを推進するための協力を得ることができる他、実際にその地域を頻繁に訪れる関係人口の増加に繋げることができるでしょう。

山古志住民会議のnoteでも下記のようにわくわくするような素晴らしい展望が語られています。

私たちは、この地に住む住民だけで山古志をつくることをやめ、地域住民800人+10,000人のグローバルなデジタル住民による独自の自治圏をつくりたいと考えています。(略)Colored Carpを接点に、より世界に開かれた仮想国家「山古志」づくりを目指します。世界初の試みです。10,000人のデジタル住民の知恵、ネットワーク、資源が集まり、現実の社会に関係なく、独自の財源、独自のガバナンスを構築し、持続可能な「山古志」が誕生します。

下記から抜粋&略

山古志のTwitterでは現地での活動を英語と日本語で頻度高く更新しており、コミュニティ形成を大切にしていることが伺えます。

https://twitter.com/nishikigoiNFT?s=20

クラウドファンディング+株式=NFT?

さて、NFTプロジェクトを行う目的の1つとして「資金調達」というところも大きいと思いますが、既存の資金調達手段とはどう違うのでしょうか。あくまで個人的な意見ですが、NFTは「クラウドファンディング」+「株式」の良いところをうまく組み合わせた仕組みのように理解しています。

クラウドファンディング
熱意と計画、ストーリーがあればできれば誰でも資金調達が可能。プロジェクトの途中結果共有したり、出資者限定の体験を提供したりとファンコミュニティを醸成しやすい。

株式

発行元の企業やサービス&プロダクトの価値が向上した際に、所有者が自身の株式を自由に売買できる。所有比率によって経営や企業の方向性に大きく関与できる。

クラウドファンディングのような性質を持っていることは上で述べたことで想像しやすいかと思いますが、NFTはそれに加えて、発行元自身やその製品、サービス、コミュニティの価値を向上させることができれば、所有者は購入時より高い金額でNFT売却し利益を得ることができます(=裏を返すと初期購入者は安い金額で価値を受けることが可能)

またNFTは2次流通があった際、発行元も収益を得られる仕組みを実装可能なため、売買が活発になれば発行元も取引に応じて手数料を得ることも可能です。従来にはない資金調達やマネタイズの手法として確立できるかもしれません。

NFT所有者が得ることができる利用価値の設計によっては発行元の方向性や事業に大きく関わることも可能です(重要プロジェクトや企画決定権の保有、投票)このあたりも株式に似ていますが、NFTの場合、所有者にどこまでの権限や利用価値を与えるのかは発行元が自由に設計できます。

NFTを活用したまちづくりの可能性

NFTを所有していることによって得ることができる体験や価値をうまく提供し、それに共感、価値を感じてもらえる関係者を増やすことができれば、NFTの価値も向上し、その販売益や関係人口のアイデアやノウハウをうまくまちづくりに活用できる可能性が生まれます。今まで首都圏に集中していた様々な資源を地方にも振り分けられるようになるでしょう。

例えばDMO(観光地域づくり法人)が地域の観光資源をNFTアート化して販売し、観光客や関係人口と継続的な関係を構築する場合、以下のようなことが体験を提供できそうです。

もしもDMOがNFTプロジェクトを実施した場合…

旅マエ

・SNSや限定コミュニティにて地元事業者や地域職員等と交流を深め、その地域の特色や目指す方向性について知見を深める
・地域の細かいデータにアクセス可能
 - 地域事業者が抱える課題の一覧
 - 事業計画・企画書類
 - 予算書

旅ナカ
・地元食材をふんだんに使ったNFT所有者限定のコース料理を堪能
・地元農家から伝統的な栽培方法を学んで一緒に収穫体験
・地域づくりの会議に出席し、観光戦略やマーケティング&プロモーション、商品開発を一緒に検討

旅アト
・市場に出回らない希少な食材をECで購入可能
・開発に携わった商品の販売益の一部を受け取り可能

NFTの地域、自治体活用例

NFTはデジタルアートやゲーム、楽曲等のコンテンツの世界で注目されることが多いですが、地域や自治体向けのNFTサービスやプロジェクトも数多く進行しています。

地方文化財、国宝、絵画のNFT化による地方創生を図る「NFTown」
株式会社ゼノトゥーンが提供する企業・団体・地方公共団体向けのリアル・バーチャルイベントにおけるNFT販売事業支援サービス。文化財や伝統工芸のクリエイターコラボによるNFT化・作品の販売を通じて、文化財・国宝等の修繕費や保存コスト、伝統工芸の承継といった問題の認知拡大と同時に、地方創生・地域活性化を図る。

XENOTTONのHPより

ふるさと納税の返礼品にNFTを活用
北海道・札幌市のスタートアップ「株式会社あるやうむ」はふるさと納税の返礼品にNFTを採用するソリューション(ポータルサイト&コンサルティング)を提供。自治体の観光資源をNFTアートとして販売することで聖地巡礼需要を喚起し、交流人口増加に繋げる。

あるやうむの事業や代表の創業経緯はSpotifyでも解説されています。

このように自治体におけるNFT活用の機運や支援サービスは徐々に整ってきています。NFTはそもそも概念が分かりにくかったり、要素技術が高度なため「やってみたい」と思っても何から始めたらよいか分からないことが多いと思います。このためNFT活用を支援するサービスや企業が充実することでNFTプロジェクトにチャレンジできる地域や自治体も増加するでしょう。

現段階ではNFT化や販売支援などを行う事業等が多いですが、NFTの利用価値等を支援できるようなサービスも徐々に増えてくると思います。

まとめ

長くなりましたが今回の記事でお伝えしたいことは以下になります。

・デジタルデータの所有権を証明し、売買もできるNFTが注目されている
・世界初。NFTを活用した地域づくりに取り組む新潟県山古志に注目
・NFTを単なる投機対象ではなく、特別な体験やサービス、コミュニティへのアクセス権として捉える
・自治体や地域づくり団体はNFTの利用価値を向上させることでファンや関係人口を創出できる可能性がある

NFTの本質を理解し、利用価値をうまく提供できれば地域におけるNFTプロジェクトはとても魅力と可能性にあふれたものであると期待しています。

P.S
山古志のNFT「Colored Carp」の購入方法は同電子住民の方がまとめているので以下を参考にしてみてください(このような動きも電子住民と共同で作成するNFTプロジェクトならではで素敵ですね)


【注意】
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