レジ袋有料化に伴いブチ切れた同僚を見て気づいたこと-まずは正しく知ることが大事-

「なぁなぁ、コンビニとかでもレジ袋が有料になるって知ってる!?」

ある日のこと、突然、仕事中の私に同僚がものすごい剣幕で話しかけてきた。

「あ、そうですよね。いよいよ7月1日から始まりますね。」

「ありえへんくない!?スーパーはまだ許せるとしても、コンビニまで有料になるなんて。もはやコンビニエンスじゃないやん。そんなんコンビニの意味ある!?もう絶対、そのせいでコンビニの売上落ちると思うわ。袋もくれないコンビニなんか二度と行ってやるもんか!って感じやんなぁ!」

「………。え…?」

胸にたまっていたものを一気に吐き捨てるように言った彼女の勢いとは対照的に、私はあまりにビックリしすぎて言葉が出ず、唖然とした。と言うのも、何の疑問もなく、レジ袋有料化をすんなり受け入れていた私とはまるで真逆の意見があっちの方角から飛んできたせいで、その言葉をかみ砕くのになかなかの時間を要したから。相槌さえうまく打てなかったのだ。


そもそもレジ袋有料化は既に周知の事実だと思い込んでいた私。まさかまだ知らない人がいたなんて。しかも彼女は一家の家計を預かる主婦。スーパーにも毎日のように行くだろう。確かにコンビニやドラッグストアなどはこれまで無料だったところがほとんどかもしれないけれど、スーパーなどは随分前から前倒しで有料化していたところもあったはず。これまでどんな意識で買い物に行っていたのだろうとふと気になり、聞いてみた。

「スーパーにエコバッグとか持っていかないんですか?」

「スーパーには『よし、今から買い物に行くぞ』と思って行くから、ちゃんと袋を持っていってるよ。でもコンビニとかは何気なくふらっと入ったりするやん。そのタイミングで袋なんかわざわざ持ってないやろ?」

うーむ…。しかもスーパーに持っていく袋というのはエコバッグではなく、以前もらったレジ袋を使いまわすとのこと。私の想像をはるかに超えてくる答えだった。でもまぁ確かに、これまでエコバッグを持ち歩く習慣のない人の立場で考えてみると、なるほどなぁとも思えてくる。

他に彼女の言い分としてはこうだった。
・エコバッグをわざわざ持ち歩くなんてめんどくさい。(そもそもエコバッグ自体持っていない。)
・エコバッグをお金を出して買うなんて嫌だ。
・これまで無料だったレジ袋が急に有料になることで、どんどん搾取されていると感じる。
・レジ袋のために毎度毎度3円やら5円やら出すのはもったいない。
・これまでは一部のスーパーだけだったのに、コンビニやらドラッグストアやら、どこもかしこもそれに乗っかってきている感じが許せない。
・コロナで衛生面を配慮しないといけないんだから、レジ袋は使い捨てを前提にしたほうが良いのではないか。

とまぁ、出てくる出てくる…。私も自分の考えを言いたい気持ちはあったものの、なんだか興奮している彼女に言っても伝わらない気がしたし、むしろ火に油を注ぐことになりそうなので、この時はいったん場をおさめた。


(経済産業省のHPより)


私はもやもやした気持ちのまま、彼女が言ったことを後でゆっくり考えてみた。そして、(あの時は、「なんて自分の都合しか考えない人なんだろう。プラスチックごみのせいで、どれだけ海が汚れているか、野生の動物に影響が出ているか、そういうことは考えられないのかな…」と思ってしまったけれど、もしかしたらこれは彼女に限った問題ではないのかもしれない…)なんて、ふと。つまり、彼女があそこまで言うってことは、ある程度一定数の人が同じように考えているのかもしれない、と。

そこで一つの疑問が。
『彼らはなぜレジ袋有料化にそれほど目くじらを立てて抵抗するのか?』

別に本当に3円や5円を出し渋っているわけではないだろう。自分の好きなものや楽しみのためであれば、金額を気にせず購入したり、気前良くお金を払っているのだろうから。エコバッグだってわざわざ欲しくないと思っていたとしても、いろんなデザインのものがあるのだから、ちゃんと探せばお気に入りのものが見つかるに違いない。

ではなぜか。それは、レジ袋が有料化になった背景や理由を知らないからなのではないか。また、どんなメリットがあって、どんなデメリットがあるのか。そして、その収益は誰のものなのか。この政策は誰が得をするものなのか。こうやって改めて考えてみると、私もちゃんと理解できていないことに気が付く。環境問題改善のためだとかムダを無くそうだとか、なんとなくわかった気になっていただけだったのだ。なんともお恥ずかしい。


というわけで、今回のことはとても良い機会だと思い、自分でもレジ袋有料化についていろいろ調べてみたので、それを以下に少しご紹介。

①目的・・・海洋プラスチックごみ問題や地球温暖化などの解決に向けた第一歩として、レジ袋有料化を通して消費者のライフスタイルの変革を促す。
②背景・・・日本は「使い捨てプラスチックの1人当たり使用料」が世界2位。プラスチックごみに対する世界的な取り組みが進む中、レジ袋有料化によって、日本も環境問題を重要視しているという姿勢を国内外に示す狙いがある。
③メリット
 ・海洋汚染防止(例えば、大阪湾にはレジ袋300万枚が沈んでおり、水質の悪化だけでなく、海洋生物への影響も懸念されている)
 ・地球温暖化の抑制(焼却の際に発生する二酸化炭素が削減されるため)
 ・石油資源の消費抑制
 ・ごみの減量化による処理コスト削減
④デメリット
 ・消費者の購買意欲減少とまとめ買いの増加
 ・万引きを助長する可能性増(消費者が商品をむき出しで持ち帰る)
 ・店舗による宣伝機会の損失(これまではレジ袋に宣伝効果があった)
⑤諸外国の導入例
 ・イギリス、スペイン、オランダ・・・それぞれ2015年~2018年に有料化
 ・フランス・・・2016年に使用禁止
 ・アメリカ・・・130以上の市・郡で使用禁止
 ・中国・・・2008年に有料化(一部使用禁止)
 ・アフリカ・・・25ヶ国で使用禁止
⑥売上の使途・・・価格とともに、事業者側が各自設定(イオンやダイエーなど、環境保全活動のため各自治体に寄付している事業者も)


こうして見てみると、消費者にとってはあまりメリットが無いことに気がつく。もちろん、地球環境への配慮や、ごみの削減、使い捨て文化を見直す、などはそれだけでどれも大義であり、それが回りまわって私たちの暮らしを良くすることに繋がっていくものではあるものの、なかなかそれを個人のモチベーションに落とし込める人は多くはない…かもしれない。そういう意味では、よりわかりやすい、お得感を感じられるような個人のメリットを打ち出しながら進めていく必要があるのだろう。

これはコロナ対策にも通ずるところがあって、感染対策をとるか、経済対策をとるか、その判断はかなり難しいところがあったけれど、結局どちらもバランス良く進めていくしかないわけで。レジ袋有料化はここまで大きな話ではないにしても、環境問題対策をとるか、世帯ごとの経済対策(つまりは個人のメリット)をとるか、やっぱりうまくバランスを取りながら対応していくのが良いのだろう。マスクをしない人を見てあれやこれや言う人がいるけれど、エコバッグを持たない人を見つけてもあれやこれや言わないようにしたい。どちらにしても、長いスパンで取り組んでいく問題なので、あまり無理しすぎず、過敏になりすぎず、広い視野をもつように心がけていこう。


さて今回、同僚のある言葉がきっかけとなり、自分でもいろいろ調べて感じたこと。それは盲目的にただ「正しいとされることを行う」ことが大事なのではなく、まずは自分で「正しい情報を知る」ことが大事なのだ、と。やっぱり知らないことがまず何よりも問題なのであって、そこから誤解を招いてしまったりもする。私もちゃんと「知る姿勢」を持ち続けようと改めて思わされた。
そしてその上で、自分の中の良心に基づいて行動を選択していくこと。それがエシカルな消費活動ってことなのだから。

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