記録地獄から抜け出す方法 ~How to get out of “recording hell”~

 最近、ある実践者から「支援記録が溜まって、夜遅くまで時間がかかってしまいどうしたらいいか」と相談をいただいた。
 そこで「少しでも参考になれば」と私自身の記録術を紹介したところ、意外にも「参考になる」とのことであった。
 今回は、そんな加藤の記録術を少しだけ紹介させていただく。


〇メモをしておく

 「何をバカなことを」と思うが、記録作成に向けて事前にメモをしておくことは、意外に大事である。
 相談してくれた実践者は、「日中はバタバタと訪問し、夕方、事務所に戻ってから思い出しながら記録を書く」とのことであった。
 ここで注目したいのは「思い出すという作業が発生している」という点である。加えて「どんな項目を書くか」ということも考えながら書くという。  
 それなら、特記事項、支援を通した決定事項、日付等の事実など、メモをしておくと「思い出す」という作業もいらず、また漏れもなくなるだろう。

〇どこに入力するのか

 次に、事前メモを「どこに入力するのか」である。
 私は、スマホの「LINE」画面に入力することにしている。
 具体的には、グループLINEを作って、自分自身「だけ」を招待してトークを開始する。そしてそれをピン止めして、一番上に表示されるようにしておく。
 そして、そのグループLINEへトークを送信する。これだけで、自分専用のメモトーク画面ができる。
 LINEは常に使うアプリであり、開く度に目に触れるため、備忘録にもなるのである。
 これが意外と便利で、メモ自体に「それを行う日時」が決まっているメモは「リマインダー」アプリがいいが、そうではないちょっとしたメモは、私は何でもこのLINEメモトークに入れている。
 そして、そのメモの行動をするごとにメッセージを消していき、基本は、いつも何も入力されていない状態を保っている。

〇どうやって入力するか

 さて、次に、どうやってメモを入力するか、である。項目だけであれば、LINEにそのまま「手入力」で打ってもいいが、長文を入力する場合は、「音声入力」を活用している。例えば、移動中、歩きながらでも入力ができ、便利である。
 例えば、論文の構成を考える時や講演の原稿を考えるときなど、まずは「思いつくままに話してみて、それを音声入力で文字化していく」ということをする。そしてそれをWordへコピペし、校正することもある。

〇いかに早く入力するか

 さて、移動中に「LINE」のトーク画面で支援記録のメモを入力できたとしよう。そしていよいよ、事務所へ戻って記録作成、である。
 ここでは、いかに早く記録を書くかについて書いていきたい。

 まずは、自分の「型をつくる」ことが重要である。
 例えば、
・日付
・誰と、何を行ったか(本人、家族と面接、関係機関と支援会議、等)
・誰が、何と言ったか(本人の主訴、支援会議の目的、等)
・どのようなことが話されたか(記録に残しておくべき特記事項等)
・何が決定したかや、今後の方向性、役割分担(こちらからの声かけ等)
・次の予定(次回の面接日、他の関係機関の動く予定)

 このような「型」ができると、記録はとても早くなるだろう。
 ここでのポイントとしては、「いかに短く書くか」である。たくさんの文章を書くのは、正直、そこまで頭を使わなくても、また誰にでも書けるだろう。いかに短く、漏れなく、わかりやすく書くかが重要である。
 また記録は、「何のために書くか」を意識して書くことも必要であろう。
 時には備忘録として、時には後から事実を確認するために、時には引継ぎ時に経過がわかるように、時には証拠資料として、、、など、記録を書く目的は決して一つではない。
 これらの目的を意識しつつ、日々訓練することで、記録を作成するスピードはあがっていくだろう。

〇いかに楽に入力するか

 加えて、「辞書入力」を活用することも必須である。
 例えば、「あ」→「ありがとうございました。」「ありがとうございます。」などの定型文、
 「かとう」→「加藤 昭宏」などの人名、
 「や」→「→」 (これを打つときは、や、や、やと打った。笑)
など、よく使う言葉は、全て辞書登録をしておこう。
 住所、メールアドレス、電話番号などもそうである。これらをいちいち打っていたら、それだけで日が暮れてしまうのである。

〇まとめ

 色々と、「記録地獄から抜け出す方法」を書いてきた。
 最後に強調したいこととして、なぜ、「記録を書く時間を短縮するか」である。これは、(もちろん、いかに早く家に帰るかもあるが)1番は「相談にかける時間をきちんと確保するため」である。
 ソーシャルワーカーの仕事は、相手の話を聴き、不安を受け止め、アセスメントを行い、社会保障制度等を活用しつつチームアプローチを基盤として伴走していくことである。
 関係機関との連絡調整も重要であるが、まずは「対象者との面接」が最も重要である。
 
 しかし、「帰ってからまだ記録を書かないと・・・」ということをワーカーが感じていると、相談者が「まだ話をしたい」「聴いてほしい」と思っていても「今日はこのくらいで・・・」と面談を切り上げてしまうことにもつながってしまうだろう。
 ソーシャルワーカーには、様々な「雑多な仕事」が舞い込んでくることがある。もちろん、記録作成は「雑多な仕事」ではないが、「面接」にかけられる時間を(物理的にも・心理的にも)きちんと確保するために、また自分自身が早く帰ってリフレッシュする時間を確保するためにも、このような“How to”が少しでも参考になれば幸いである。


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