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新時代のリーダーシップ論~時代の変化に対応できる組織・企業へ〜

変化のスピードが速い時代、リーダーに必要な力とは?オンラインでの仕事が増えた現在、浮彫になってきた問題は、もともと問題としてあったこと?

■CROSS VIEW「新時代のリーダーシップ論」


スコラ・コンサルトのプロセスデザイナー・簑原麻穂さんが提唱する新しい経営理論「全員参画経営」の核である「トータル・フォーメーション」の視点と、ラグビー協会理事であり、コーチのコーチをしている中竹竜二さんの「全員がリーダーになる時代」という考え方を掛け合わせて、「新時代のリーダーシップ論」についてクロスビューしていきます。


■リーダーはその時々で変わるということが重要

簑原さんが提唱する「全員参画経営」というのは、階層を活かしながら、メンバーが自発的にチームを組み、柔軟に運営される組織のことです。

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特徴としては4つあります。

1、個性や持ち味(強み・弱み)が尊重され、強みが活用され、弱みは補い合う
2、階層は存在するが、メンバーは柔軟に、自発的に動き、経営に参画する3、リーダーシップは分散され、その時々に相応しい人がリードする(主役の交代)
4、組織と個人が対等でフラットな関係

全員参画経営

リーダーシップは分散され、その時々に相応しい人がリードするという考え方は、まさに、新時代のリーダーシップ論なのだと思います。これからの時代、リードするという言葉が意味するのは、決して、表舞台に立つことだけを指すわけではないのが、ポイントだと思います。

そう考えると、例えば、役職が固定化されている組織に属していたとしても、リーダーシップが分散されるということは、可能なのです。仕事をしている中では、いろいろな局面が出てくると思います。その時々によって、主役の交代が行われるというのが、まさに全員が参画している組織ということになるのでしょう。

■企業風土改革の最後は、自分が主役と思っていた人が脇役にも回れるようになること


通常、部署間での対立は、構造的にも起きやすいものですが、「企業風土改革をしていくフェーズにおいては、それぞれの部署・部門が一体となり、フォーメーションを組めるようになる」と、簑原さんは言います。

簑原さんが支援に入った、ある建設会社の例です。

いろいろな改革を経て(中略)
連携や協力、共創というフォーメーションを組みながら仕事をし始めるようになった。

さらに、彼らの仕事に対する誇りや価値が高まったのは、自分たちの果たす役割を認識し、ゼネコンにスムーズに工程のバトンを渡せるよう、主役を活かす脇役という役割を認識したためだった。それまで彼らは現場で自分たちが主役だと思っていたが、時に脇役のポジションを取りながら、共に最高の仕事ができるフォーメーションをつくったのだ。

結果的に、前年度までは7億のマイナス利益だったのが、その年は5億の利益をだすことができた。

「全員参画経営」簑原麻穂著

主役と脇役はタイミングによって変わる、それも自然に。
自然に自分の役割が見えて脇役に回ったり、主役になったり(表立って引っ張るという意味だけではない)できることこそが、新時代のチームのフォーメーションとして重要なのでしょう。

■リーダーは責任があるのではなく、責任感があること


ラグビー協会の理事も務める中竹さんは、「リーダーの役割だけでなく、リーダーの制度も変わってきている」と言います。

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最近はマルチリーダー制が成功するとわかってきて、スポーツの世界でも導入が顕著になってきました。ラグビーワールドカップでは、31名の公式枠中8人がリーダー(という役割)だったことがその一例です。

これだけのリーダーがいるため、ある試合ではキャプテンが控えに回るということもありましたが、そのことに誰も違和感がありませんでした。

私の定義としては、リーダーとは責任があるのではなく、責任感がある人のことだと考えるとスムーズなのではないでしょうか。リーダーは役職ではなく、役割の名称に過ぎないということです。

リーダーというのは、常に最高の場所にいることを望まれるものです。でも、キャプテンだって調子の悪いことがあるのですから、責任感のあるリーダーがたくさんいる、全員がリーダーとしての責任感があれば、チームとして強いのは間違いがないと思うのです。

「オフ・ザ・フィールドの子育て」中竹竜二著


「全員がリーダーになり、全員がチームに参画する」ということこそが、強い組織、強いチームの一つの特徴と言えそうです。


■リーダーの定義は自分で、自分たちで決める


中竹さんは、「ステレオタイプのリーダー像ではなく、自分らしいリーダー像、自分たちのチームらしいリーダー像を決めるべきだ」と提唱しています。

中竹さんによると、人が失敗する理由の一つとして、○○らしさに引っ張られるということがあるそうです。

リーダーが、世間一般的に言われる、本にも書いてあるようなリーダーらしいことをやった上で失敗したとき、周りから、あまり責められることはないはずです。
しかし、リーダーを、一般的な役割の定義に当てはめてしまうことは、これだけ多様性、多様性、個性と言われている現代に、自分らしさをなくしてしまうことにつながってしまわないでしょうか。そして、結果的に、自分らしさをなくすことによって、ベストパフォーマンスができないとしたら……。

もちろん、リーダーとしての”責任感”を持つというような、心構え的なことは必要です。しかし、個人の多様性、チームの多様性ということの本質的な意味を考えていくと、実は、「リーダーとはこういう仕事をする人」という定義をはっきりと当てはめない方が、実は、上手くいくのではないでしょうか。

チームの長が変わるとチームの雰囲気は、必ず変わります。同じ仕事をしていても、同じ仕事を求められていたとしても、その雰囲気は必ず変わるのです。

つまり、自分らしさを出さないというのは、結局、無理な話なのです。
だから、リーダーは向上しなくてもいいということではありませんが、リーダー自身が自分らしさ、自分の凹凸を認め、チームメンバーの凹凸も認めることができれば、チーム全員が自分らしさを活かすベストパフォーマンスをすることを可能にし、全員が目指すべき○を作る方法というのが見えてくるのではないでしょうか。

■リードする対象を変えてみる


それでも、やはり、リーダーの思考回路としては、「リーダーである自分は立派であらねばならない」と思ってしまいがちだとは思います。そこで、リーダーの定義をするときに、「リードする対象を、まずは”自分”としてみてはどうか」と中竹さんは言います。

リードする対象が自分であるとなれば、自分なりのリーダーの定義、自分たちなりのリーダーの定義が、新たに見えてくるのかもしれません。

■複数の組織に属する時代は、リーダーのあり方、チームのあり方が多様な方がうまくいく⁉


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これからは、複数の仕事をする、いろいろなチームに属して仕事をするというケースがますます増えていくと思います。

それぞれのチームがうまくいくかどうかは、そこに属している人たちがそれぞれの個性や強みを活かし、最大のパフォーマンスを発揮できるかということにかかってきます。

ですので、自分らしさ、自分の凹凸に良い悪いを決めず、自分の強みも弱みもさらけ出し、仲間といかにタッグを組めるかが重要になってくると思います。

これから、時代の変化に対応できる組織・企業というのは、”時に主役(リードする人)が変わり”、”全員がリーダーとしての責任感”を持ち、それぞれが自分らしさを発揮している組織だと言えそうです。


【参考著者】


―中竹竜二( Nakatake Ryuji )

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株式会社チームボックス代表取締役
日本ラグビーフットボール協会理事

1973年福岡県生まれ。早稲田大学卒業、レスター大学大学院修了。三菱総合研究所を経て、早稲田大学ラグビー蹴球部監督に就任し、自律支援型の指導法で大学選手権二連覇を果たす。2010年、日本ラグビーフットボール協会「コーチのコーチ」、指導者を指導する立場であるコーチングディレクターに就任。2012年より3期にわたりU20日本代表ヘッドコーチを経て、2016年には日本代表ヘッドコーチ代行も兼務。2014年、企業のリーダー育成トレーニングを行う株式会社チームボックス設立。2018年、コーチの学びの場を創出し促進するための団体、スポーツコーチングJapanを設立、代表理事を務める。
ほかに、一般社団法人日本ウィルチェアーラグビー連盟 副理事長 など。
著書に『新版リーダーシップからフォロワーシップへ カリスマリーダー不要の組織づくりとは』(CCCメディアハウス)など多数。

―簑原麻穂( Minohara Asaho )

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スコラ・コンサルト プロセスデザイナー
泣く子も笑わせる関西出身。 JASに就職し、チーム連携と新商品開発による
顧客価値アップを実現したのち、JALとの統合プロジェクトにも参画。 リーダー育成や教育のしくみづくり、組織・システム統合、 新サービスの開発など組織の機能と マインド両面の変革を 要求される多数のプロジェクトに貢献。 その後、事業の成長と 人材と組織の関係をつきつめるべくスコラ・コンサルトの門をたたく。 積み重ねてきた幅広い経験から、中堅企業の尖ったサービスに専心する喜びと、 大企業で大きなシステムを動かす醍醐味、 どちらにも鼻が利く。加えて、経営者である父や引き継いだ兄との対話で磨いた感性が武器でリアリストでありそこはかとなくストイック。次世代経営者の良きアドバイザー兼温かみある伴走者として、中堅企業の尖ったサービスに専心する喜びと、大企業で大きなシステムを動かす醍醐味、 どちらにも鼻が利く。 加えて、経営者である父や引き継いだ兄との対話で 磨いてきた感性が武器で、 リアリストでありそこはかとなくストイック。 次世代経営者の良きアドバイザー兼温かみある伴走者として、粘り強い支援が特徴。経営者やリーダーの悩みや葛藤を受けとめながら、真の強みをとことん引き出す。その上で、事業をもう一段階成長させるために必要な要素を独自のバランス理論で見立てて、 人の持ち味・能力・経験の組み合わせで構築する。「組織の変革を成功させるために は、男女を問わず、人の強みを活かし合える環境が大切」。そこにある素材で最高の料理をつくる。

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