【出版のミライ⑥】お金のかけどころ=払いどころ=価値が変わる?
【エッセンシャル出版社の考える「出版のミライ」⑥】
20年くらい前は携帯電話はあっても、スマホのように情報を得る機械としての機能がありませんでした。その時は、テレビやラジオ、新聞、雑誌、本でしか情報を得ることができなかったのですが、今やスマホを開けば、情報は受け取りきれない程になっています。以前は有料だった情報が、今や無料でいくらでも手に入れられるようになっているのです。
こんにちは!エッセンシャル出版社の小林です。
私が、”本づくり”をしていく上で、日々、どのようなことを考え、どのような目的で本をつくっているか、記事風に残していきたいと思います。
【プロフィール】
大学卒業後、年中~小学校6年生までの子を対象とした塾、花まる学習会に入社。将来メシが食える大人になること、魅力的な人になるということを教育理念の事業で、授業や野外体験の引率などを行う。授業など子どもたちに関わる傍ら、広報部、講演会事業、ブロック責任者などあらゆる業務にも携わる。現在はエッセンシャル出版社で、本づくり、広報など、出版業に関わる全てに携わる。
エッセンシャル出版社: https://www.essential-p.com/
1、メインコンテンツは無料 ∞ 周辺コンテンツは有料
お笑い芸人をしたり、絵本作家をしたり、オンラインサロンを運営している西野亮廣さんは、メインコンテンツ(絵本)を無料で公開して、その周辺ビジネス、たとえば制作舞台裏&営業戦略を公開するオンラインサロンや書籍、絵本のミュージカル化、個展の開催などでお金を生み出すということをしています。
本を作って出版している身からすると、「何に価値が生まれ、何が無料化していくことが社会の流れなのだろうか?」ということは考えなくてはいけない大きな課題です。
メインコンテンツは無料という点について、俯瞰して、かつ真逆のところに価値を見出すとすると、
◆メインコンテンツは無料
◇周辺コンテンツは有料
になるという考え方が成り立つのかなと思います。
どういうことかというと、たとえ、どんなにインプットしたとしても、それをどう自分というフィルターを通して、どうアウトプットするのかで大きな差が生まれるのではないかと思うのです。つまり、どうアウトプットされるかが、結局、インプットしたものの価値になるのです。
そうすると、例えば、
◆教材(インプットするもの)は無料で提供
◇実践(アウトプットすること)は有料でサポート
ということも考えられるということです。
2、メインコンテンツは有料 ∞ 周辺コンテンツは無料
もう一点、西野さんは、「無料の情報と有料の情報の価値の違い」についても話しています。有料の本や有料のサロンでの話などから、良質な仕入れをしているとも言っていました。たしかに成功されている社長さんなどは、「本を読む量(インプット量)が違う」とよく言われています。少なくとも、成功されている方は、良質なインプットをしているのだと、考えられます。
こういう場合は、逆に、有料でインプットしてもらう代わりに、アウトプットのサポートが無料であれば、価値として、捉えていただけるのかもしれません。
◇「情報をインプットしてもらうところ」は有料
◆「アウトプットするためのサポート」は無料
どちらにせよ、有料に値する有益な情報、貴重な情報は、出版社にはたくさん集まってきますし、持っていると思います。
出版社にとっては、その情報をどのように届け、どのようにアウトプットのサポートをしていくのかということが、一つのキーポイントになるのかもしれません。
今、エッセンシャル出版社が試みているものとしては、例えば、『あり方で生きる』の著者・大久保寛司さんの「あり方研究室」という、対談や一人語りラジオ番組の運営があります。
この企画は、「あり方で生きる」という有料の本を買っていただいた方にとっては、無料のアウトプットのサポートの一つになっているのだと考えています。
3、本が読まれても世界は変わらない?
例えば、自己成長を促すために、どんなに「スゴイ!」と言われる本を読んだとしても、どんなにそれを熟読しても、また類書をいくら読んだとしても、なかなか自分が変われないということはよくあると思います。結局は、どんな情報を受け取っても、自分というフィルターを通して、どうアウトプットさせるかということ次第で、人生に大きな開きが出てしまうということなのでしょう。
エッセンシャル出版社は、本の価値を、「ただ読んで楽しんで終わるものから、体験するもの」へと変えていきたいと考えています。
本を、「体験する本」という付加価値がついたものに変えるためには、本を一人で集中して読むものから、皆で会話をしながら作成していくものに変えるという発想もありなのではないかと思います。
また、読者がアウトプットしていけるための、読んだ後のサポート、読み方のサポートをしていくということは一つ、現実的にすぐできるポイントになってきそうです。
私が子どもの頃の話ですが、インプットするものは同じでも、自分というフィルターを通してアウトプットされる質の差を感じた出来事がありました。
中学生の時の話です。
中間テストや期末テストの問題で、ある先生が、「教科書には書いていないけれど、類推すればわかるのではないか?」という問題を1問、2問入れてくるということがありました。
私は、なかなかそういう問題を解けなかったのですが、確実に、そういう問題を得点にできる友人がいました。結果の見た目の点数は大して変わらなくても、こういう問題をいろいろな知識を組み合わせて、類推して、「こうかな?どうかな?」と考えられる力がある子と自分とでは大きな差があるな…と、子ども心に感じました。
それから、「教科書に書いてあることを覚えることだけでは意味がない、物事は繋げて考えるべき、物事の原因を知る、文化を知る、そういうことをしないと、意味がないんだ」と考えるようになりました。
何が言いたいかというと、やはり、自分というフィルターを通して考えるということ、アウトプットの質を高めてこその良質なインプットになるのだろうということです。
今の私は、何かを学ぶセミナーに出るときには、「確実に吸収してやる!」という気持ちで出ています。もちろん、高いセミナー、安いセミナーなど、いろいろありますが、「何からでも学べる」ということを意識して、取り組んでいます。そして、学んだことをすぐアウトプットし、実践していくことで、セミナーなどの学びを良質のインプットに昇華できるように心がけています。
(まとめ)
価値というのが、ある意味、「お金の払いどころ」だとすると、
「本の価値はどこにあるのか?」という問いについて。
1、メインコンテンツ無料 ∞ 周辺コンテンツ有料
2、メインコンテンツは有料 ∞ 周辺コンテンツは無料
このほかにも、「お金の払いどころ」が変わる視点はいくつかあると思います。
3、コンテンツにお金を払う ∞ 個人・人にお金を払う
4、一人・黙読・集中して深めるというコンテンツにお金を払う ∞ 複数人・会話をしながら・横と繋がっていくというコンテンツにお金を払う
これから、2021年に向けて、もちろん、これまで通りに、本質的な「本のあり方」や、この時代に必要な「本の内容・可能性」についても考えていきますが、さらに、「その本というコンテンツを、読者の方にどう生かしてもらうのか?それぞれ個々人のフィルターを通して、どんなアウトプットに繋げてもらえるのか、そのサポートとして何ができるのか?」という点も、考えていきたいと思います。