マクロ経済変数から読み取れること

 私はマクロ経済変数が好きではない。少し前だが、1月6日付の日経新聞「経済教室」に、その理由を端的に明言している件を見つけた。

#日経COMEMO #NIKKEI

それは次の一節である。

マクロ経済指標は経済全体の平均パフォーマンスを示す

 マクロ経済変数の一例として、一定期間における経済活動の規模を測る指標に国内総生産がある。これは当該期間に国内の生産者らが産出した付加価値の合計である。

例えば、事業者AとBからなる国があるとする。今期の事業者Aが産み出した付加価値が50単位、事業者Bが産み出した付加価値が50単位とすると、閉鎖経済の想定のもとで、今期の国内総生産は100単位になる。

ここで来期の国内総生産が150単位になれば、「国内総生産が今期から来期にかけて50%上昇した」と人々は歓喜するだろう。一方で、来期の国内総生産が100単位のままであれば、「危機の最中、経済は堅調だ」と人々は安堵するかもしれない。果たしてこれらの反応はもっともらしいと言えるだろうか。

来期の国内総生産が100単位のままであることは、事業者AとBの付加価値がそれぞれ50単位のままであることを必ずしも保証しない。事業者Aの付加価値が0単位に落ち込み、事業者Bの付加価値が100単位に増加している場合もある。国内総生産の値を見ている多くの人々には、それらを区別する術はない。

このようにマクロ経済変数自体から見た経済状態と、個々の事業者の経済状態は一致するとは限らない。このようにマクロ経済変数から読み取れることは限られており、しばしば私は物足りなさを感じている(当然のことながら、このことを考慮した経済学の研究は日々進展している)。

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