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コンセプトは、誰に何をいうかが9割

たとえば、世帯年収1000万円の50代夫婦をターゲットにした、A5ランクのステーキ(500g)を提供する高級店があったとします。あなたは流行ると思いますか。

おそらく多くの人が潰れそうと思うでしょう。なぜなら、50代夫婦の多くに500gステーキを食べたいニーズがないからです。たとえA5ランク(最上級)であっても。500gのステーキなんて食べたら胃もたれしますよ。100gや150gで十分です。

上記のようなターゲットと訴求のミスマッチは求人にも多くあります。しかも、多くの人たちは表現でなんとかできると勘違いしています。


表現だけでは採用できない

ここで明言します。表現だけで採用成功はできません。

仮に、表現だけで採用できたとしても、遅かれ早かれ、採用した人は辞めるでしょう。羊頭狗肉のとおり、「騙された」「失敗した」と思うからです。頑張るべきは表現の仕方ではなく、コンセプトーーつまり、誰に何をいうかです。

(1)欲しい人材を定義する
(2)自社の魅力の中で、その人材が望む要素を探す
(3)魅力がないのであれば、つくる

魅力の発見・再定義

やるべきことは、たった3つです。(1)ターゲットは、経営課題に紐づくので変更するのは難しいでしょう。だから、ターゲットが魅力と思う要素がないのであれば作るしかありません。給与を上げるのか、制度を変えるのか。いずれにしろ、現状のままでは採用はできません。

もしかしたら、自分たちが気づいていない魅力があるかもしれません。気づかない魅力を見つけるのが求人広告の営業や制作の仕事です。魅力発見に彼らの協力を得られると、採用成功に一歩近づけます。

魅力発見や再定義できる営業や制作が良い営業・制作です。現状できていないようであれば、付き合う企業を変えたほうがいいかもしれません。

ただし、値下げ交渉だけしているようなら別です。提案にはコストがかかるので、値下げ交渉(コストダウン)が全面に出れば、彼らもコストカットし、顧客の要望に応えます。そのとき、最初に犠牲になるのが魅力発見・再定義の提案です。提案するためには調べ、考える時間と労力がかかっています。値下げは労力に見合わないので、値下げだけを要求する企業には、どの転職サイトもそこまでしません。

誰に言うかで、何を言うかも変わる

話を戻し。誰に何をいうかの合致度が、採用成功に繋がります。だからこそ、大切なのは誰に=ターゲット、何を=魅力の明文化・定義づけです。この2つが定義されていなければ、求人で何もいえません。また、チグハグなコンセプトのため、求めるターゲットに伝わることもありません。

たとえば、自分で考えて提案したい営業に対し、ルート営業でお客様の要望だけ聞いていればいい簡単な仕事と訴求しても、何も響きません。彼らがほしいのは「裁量」や「提案の幅・自由」だからです。彼らにふさわしい仕事と評価を訴求しなければ、いつまでたってもほしいターゲットからの応募はないでしょう。

ターゲットが転職で何かを変えたいのか

転職とは、転職者が自身の抱える「不」を解消したくてする行動です。年収1000万円の人に年収600万円を稼げますといっても無意味ですし、第一線で活躍しているエンジニアにエンジニアになるための研修制度が整っているといっても反応しません。

ここまででなくても、ターゲットと訴求がズレているケースはよくあります。特に20代の若者をターゲットにした場合です。働きやすさを全面に押し出すケースが多いですが、彼ら・彼女らにとって「働きやすさ」は前提です。単純な数字だけ出しても、それほど響きません。それよりも、働きやすい会社であなたは「こう」変わると訴求したほうが効果的です。

わかりやすい例はiPhoneのCMでしょう。基本的にiPhoneを持つことで、あなたの生活はこう変わりますと訴求しています。つまり、新たな生活を提案しているのです。

これが「あなたも憧れのiPhoneを持とう」だと、効果は半減します。なぜなら、ユーザーはiPhoneのある生活を期待しているのであり、(言い方が悪いですが)iPhoneそのものがほしいわけではないからです。

もっといえば、自分だけのメリット(=ベネフィット)が何であるかを明確にしないと、20代は反応しません。

このように、誰に言うかで、何を言うかも大きく変わります。コンセプトを無視して、マスにのみ訴求すると、結局、誰にも刺さらない求人になります。だから、誰に何を言うのかは、とても重要です。

魅力がなければ、つくればいい

基本的には、自社に存在する魅力に刺さるターゲットにすべきですが、先述のとおり、経営課題によっては難しい場合があります。その場合は、新たに魅力を作るしかありません。会社・組織が変わらなければ、目指すターゲットの採用はできないのです。

もし、第一線で活躍するエンジニアを採用したければ、給与・報酬体系・環境など、業界の最低水準を満たした上で、彼ら・彼女らが求める魅力をつくるべきです。

働き盛りの30代エンジニアの平均年収が500万円なのに、450万円で提示したら、そりゃ誰も応募しません。応募しても、スキルが足りないのは当たり前です。できるエンジニアは平均年収よりも上なので、600万円前後が基準になります。450万円しか提示できないのであれば、それに見合ったスキルのターゲットに変更するしかありません。

あるいは、年収450万円だけれど、残業ゼロ、年間休日130日、有給取得率90%、男性の育休取得率100%、炎上案件ゼロと、業界最高水準の働きやすさを訴求できれば応募は来ます。

業界の最低水準を超えることは重要ですが、マイナスを埋めても有り余る魅力があれば、その限りではありません。まあ、そういう会社は求人を出さなくても応募が集まるんですが。

まとめ

以上のように、誰に何の魅力を提示するのか、コンセプトがしっかりしていれば応募で苦しむことはありません。ターゲットと訴求の組み合わせが間違っているから、あるいは訴求の精度が低いから、応募が来ないことがほとんどです。

コンセプトが正しければ、100%応募が来るかと言われると難しいのが、求人の水物たる所以なのですが、とりあえず掲載していたときと比べれば、格段に効果が変わります。

あらためて、自分たちが目指すターゲットと、そのターゲットが魅力に思う要素は何かを考えると、最高成功に一歩近づけるのではないでしょうか。

よろしければ、サポートをしていただけると嬉しいです。サポートが今後の活動の励みになります。今後、求職者・人事担当などに有益な情報を提供していきたいと考えています。