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求人広告の中の人が語る、ブラック求人キーワード

結論から言えば、「このワードが出たらブラック企業」というキーワードは存在しません。転職系のアフィリエイトサイトに掲載されているキーワードには、たしかに疑わしいワードもあります。

ただ、その言葉一つをもってブラック企業と判断するのは危険です。以前にも紹介したとおり、キーワードよりも「具体性」があるかどうかのほうが判断としては正確です。

ここでいう「ブラック企業」とは、違法な労働条件・環境、パワハラ・セクハラなどのアンモラル行為が行われている企業のことを指します。

単純に給与が低い、休みが少ないなどの条件の悪い企業は指しません。条件の良し悪しは業界やビジネスモデルに起因するため、上記のブラック企業とは関わりがないからです。

では、ちまたで言われる下記の言葉は、本当にブラック求人ワードなのでしょうか。

キーワード(1)未経験歓迎

「未経験歓迎」はスキルが必要な職種なのに、未経験でもいいのはおかしい、という論調です。

しかし、その論調はまったくの的外れです。実態は応募が来ないから未経験まで下げているにすぎません。応募が来ない理由も3Kなどの不人気職種、給与や条件が悪い、勤務地が辺鄙など、さまざま。あるいは、研修体制が整っているから未経験でも大丈夫という企業もあります。そういう企業は若い人がほしいから未経験歓迎をうたっていることが多いです。

未経験歓迎だからブラック企業、というわけではありません。

キーワード(2)少数精鋭

少数精鋭も似たような背景です。小規模な組織、人が少ないとネガティブな言葉を(企業か営業・制作が)嫌うため、少数精鋭と言い換えています。人が少ない理由は、やはり未経験歓迎と同じ理由です。

ただ、少数精鋭と記載する企業は、経験者がほしい傾向にあります。研修体制がなかったり、未経験を育てる余力がなく、小規模な組織・チームになっているというのが現状です。

キーワード(3)若手が活躍中

若手が活躍中は活躍しているというよりも、若手に来てほしいから書いているケースが多く見かけます。

若手が一人でもいれば「若手が活躍」と書いているパターンです。そうすることで、オジサンが多い職場でも若手が応募してくれるだろうという誉められない方法です。

ただ、ブラック企業だから書いているわけではありません。

少子高齢化が進んでいる今、若手の存在は貴重です。しかし、経済状況で新卒採用を止めて、特定の年代が少なかったり、(特に中小企業では)新卒採用に失敗し、若手が採用できていないことがあり、その補填として中途採用で若手がほしいという理由です。

キーワード(4)アットホーム

ブラック求人ワードの代名詞、アットホーム。しかし、以前にも書いたとおり、具体的に書けることがなく、雰囲気は悪くないからアットホームと書いているケースがほとんど。

いいことを言わなければというプレッシャーが生み出した言葉です。

なぜ「アットホーム」がブラック求人ワードになったのか。おそらく「やりがい搾取」が原因です。やりがいを与える代わりに低賃金・過重労働させる企業は、メンバー同士の結束が高い場合があります。しかし、やりがいと結束以外に言えることがないので、求人広告にはアットホームという具体性にかける言葉を記載したのが始まりではないかと考えています。

キーワード(5)ノルマなし

ノルマなしはやや怪しくなります。売り上げ目標が別の言葉にされている可能性があります。たとえば、予算など。

営業にノルマに相当するものがないわけがありません。にもかかわらず、「ノルマなし」とうたう企業は怪しむべきでしょう。

ただ、個人ではなくチームで追いかける会社や既存顧客だけで売上が立っている企業、独自のビジネスモデルを確立している企業など、ノルマがない企業も少なからず存在します。なぜ、ノルマなしなのか、詳細は確認すべきです。

キーワード(6)幅の広すぎる給与

幅の広すぎる給与は、おもに二つの理由があります。一つはメンバー、リーダー、マネージャーなど、幅広いポジションを募集しているためです。

二つめは経験・スキルによって幅がありすぎるため、記載されているパターンです。スゴい高いスキルを持っていれば40万円出すが、未経験は18万円しか出せない、など、応募者を見て決めるというもの。

大手企業の場合は下限、それも新卒給与しか書いていないのと同じ理由です。大手企業は書けない、出したくないで、新卒給与だけ記載するということが少なくありません。

中小企業はいい人が来れば、その金額を出すから載せるということが多いです。月給の上限を高くして、求職者に期待させて、というやり口はきいたことがありません。

むしろ、求職者が考える金額で釣ろうとするパターンは給与例です。あくまで例なので制限がないため、理論上は可能な金額(でも、実際には出さない)を記載する企業は確かにいます。

トラブルの元なので、最近は止めましょうと提案することが多いですが、掲載企業・営業・制作のモラルに依存しているので、まったく存在しないとは断言できません。

キーワード(7)大量採用

大量採用は判断が難しいといえます。大量採用している事実は間違いありませんが、それが業績好調や事業拡大で募集しているのか、人が辞めていくから募集しているのか、求人だけでは判断できないからです。

後者であればブラック企業の可能性は高いですが、大量採用=ブラック企業とは断定できません。

キーワード(8)稼げる/高収入

稼げる/高収入も大量採用と同じです。稼げるのは事実です。しかし、多くの人が稼いでいるのか、ごく一部の人だけなのか。分布、中央値など判断できる情報が掲載されていればよいですが、掲載している求人はほとんどありません。

たとえば、投資用不動産の営業は確かに稼げます。福利厚生などは良くないケースが多いので、求人では稼げる打ち出ししかないのも事実です。そのため、求人的には間違っていないことになります。しかし、稼げる人は一部なので、そこに入れるかは本人の努力次第です。

また、給与が低い・高いは、ビジネスモデルに起因することが多く、高いからブラック企業とはいえません。

キーワード(9)写真がイメージ

写真がイメージなのは、ブラック企業とあまり関係性はありません。企業は協力的ではない、社員が忙しくて撮影できない、社員が嫌がる、などが主な理由です。

最近ではプライバシー問題で社員の写真を使うのを躊躇する企業も少なくありません。

ただ、写真の提供に協力的ではない企業は、社員間の仲が良くない、会社への帰属意識が低い、社内における人事の立ち位置が低いなど、組織コンディションが良くない可能性はあります。

キーワード(10)裁量労働制・固定残業代

裁量労働制・固定残業代=ブラック企業ではありません。確かに悪用している企業が存在するという話は聞きます。しかし、この制度を採用している企業=ブラック企業というのは乱暴な論理です。

求人上で悪用しているかを見抜くのは無理です。面接でどのように運用されているか。実際の労働時間や残業時間などを聞き、判断するしかありません。質問し、口ごもるようなら怪しいといえます。

キーワード(11)横文字の分かりづらい職種名

ハイパーメディアクリエイターなどの、分かりづらい横文字職種は怪しんでよいでしょう。たいていの場合、不人気職種を隠すために横文字でオシャレ風に見せている可能性が高いです。

大学の学部・学科名がまさにそれです。カタカナではありませんが、都市○○学科は元土木学科であるケースがほとんどです(あるいは土木学科とほかの学科を合併)。

意味をぼかし、カッコ良い名前にすれば応募が来ると考えているわけですから、あまり誠実な企業とはいえないでしょう。

キーワード(12)幹部候補

幹部候補も横文字職種と近しい使われ方です。似たような職種名に店長候補があります。理由はどちらも同じで、メンバー募集やスタッフ募集では来ないから、役職を少しでも高く見せようとしているのです。

応募が来ないからやっているというケースが多いですが、求職者に誤認させて応募させようとしている行為は感心できません。ブラック企業とまでは言えませんが、「良い企業」といえるかは難しいところです。

自分たちの論理を押し付けてくる企業に、要注意

以上のように、この言葉がある求人は即ブラック企業、ではないことがお分かりいただけたと思います。ただ、怪しい言葉は存在し、その言葉が複数使われている場合はブラック企業の可能性は高まります。

ブラック企業は自分たちの企業論理を押しつけてくるケースがよく見られます。求人だけでなく、面接などで世間の常識とかけ離れている企業論理をいわれたら要注意です。

世の中の常識や業界の平均などを調べることが、ブラック企業を見分ける一番の方法かもしれません。

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似非教授
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