ITエンジニアはどこにいるのか。
リモートワークでにわかに注目を集めているITエンジニア。しかし、一方でITエンジニアの求人倍率は高止まりを続けています。doda調べでは9.41倍と、ほぼ10倍になっています(2010年3月現在)。
なぜ、こんなことになっているのか。
理由は大きく3つ。一つはそもそもの人数が足りない。一つは求められるスキルと現状のスキルに乖離がある。そして、最後はITエンジニアが地域によって偏在しているからです。
■年を追うごとに人手不足になるIT業界
経済産業省の試算によると、2030年には16万人から79万人が不足するだろうとされています。
この試算がされた2018年の段階(発表は2019年)で、すでに20万人以上も足りていませんでした。その現状を考えると、少なくとも中位シナリオの45万人は足りなくなるだろうと予想されます。
足りていない理由はデジタル・トランスフォーメーション(DX)や「2025年の崖」と呼ばれるレガシーシステムの更新です。その代表と言われるみずほ銀行の基幹システムはようやく終わりましたが、大小様々な企業で同じような状況が行っています。
そのため、開発を請け負うSIer、そのSIerに人材を供給するSESや技術派遣が活況しているわけです。
それとともに、そのレガシーシステムを運用・保守するために、大勢の人材が必要になります。だから、未経験から採用し、運用・保守に当てているのです。これがいわゆる「IT土方」と呼ばれる存在です。
現状のシステムを運用しつつ、新しいシステム開発やDXによる変革もしなければならない二重苦に陥っているのが、IT業界です。
■求めるスキルと現状のスキルに乖離がある
もう一つの理由が、人材の”質”の問題です。欲しい人材は新しいシステム開発やDX(AIやIoT、クラウドなどのデジタル技術)に対応できるエンジニアに対し、現状多くいるのが枯れた技術を持つ業務系システムエンジニアです。
原因は簡単です。今まで運用・保守、あるいはレガシーシステムの機能追加などが開発の中心でした。そこで求められる技術はレガシーシステムに対応した古い技術(=枯れた技術)だからです。
しかし、ここ4~5年で状況は一変しました。もはやデジタル技術を導入しないと、ビジネス自体が立ち行かない状況まで来ています。企業は、AI技術者には新卒でも1000万円を払うとまで宣言しています。
まあ、分かっていながら自分の首が絞まるまで放っておいた企業自身のせいなので、なんにも言えませんが。
上記の記事にもある通り、デジタル人材は10%ほどしか存在せず、70%転職経験者であるとのこと。苛烈な競争が想像されます。
■ITエンジニアは東京にしかいない
そして、理由の3つめは「ITエンジニアの地域的な偏在」です。
経済産業省の「特定サービス産業実態調査」によると、ITエンジニアは約98万人です(平成30年時点)。業界が「ソフトウェア業」「情報サービス業」「インターネット附随サービス業」のみの数字なので、社内SE(情報システ部門)はカウントされていません。とはいえ、90%近くが上記の業界に所属しているので、社内SEは誤差と言ってもいいでしょう。
約100万人存在しますが、その50%近くの48万人は東京に勤務しています。ITエンジニアのほとんどが、東京にいるわけです。
・東京:約48万人(49%)
・大阪:約13万人(14%)
・神奈川:約8万人(8%)
・愛知:約5万人(5%)
・福岡:約3万人(3%)
このように、主要都市だけで80%になります。しかし、レガシーシステムの多い製造業が主体の大阪や愛知のITエンジニア数は少なく、レガシーシステムの運用・保守をしながら、DXもしろというのは過酷です。
この偏在によって、東京はかろうじてDXやデジタル技術の導入はできていますが、それ以外の地域は……
■IT業界自身が変革すべし
なぜ、こんな状況に陥っているかといえば、IT業界=SIer自身が「お客様のため」という金科玉条をもって、御用聞きに徹していたからです。自分たちのビジネスモデルがレガシーになりつつあるのに、それに目をつぶり、目の前の売上に飛びついたからです。
インターネット企業は、SIerとはまったく別のあり方なので、リモートワークも働きやすさも整え、エンジニアファーストといえる環境を構築しています。まあ、一方でエンジニアにへつらいすぎている傾向があり、売上を逃している部分はありますが。
また、ユーザー企業自身がITを軽視した結果でもあります。
このような状況を打破するためには、抜本的な変革がIT業界、ユーザー企業ともに求められます。
よろしければ、サポートをしていただけると嬉しいです。サポートが今後の活動の励みになります。今後、求職者・人事担当などに有益な情報を提供していきたいと考えています。