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【第2回コラーゲンの世界】私たちの体は"らせん"でできている

らせんといえば二重らせんを持つDNAを思い浮かべる方も多いかと思いますが、私たちの体の筋肉や皮膚を構成するコラーゲンもまた複雑ならせんでできています。

前回、第1回ではコラーゲンのざっくりとした構造や、コラーゲンとゼラチンの違いなど簡単な紹介を行いました。

この第2回ではもう少しコラーゲンのらせん構造を掘り下げて紹介したいと思います。

それでは奥の深いコラーゲンの世界を一緒に見ていきましょう。

コラーゲンの構造のカギはアミノ酸

前回のおさらいをするとコラーゲンを構成する3本の糸(ポリペプチド鎖:α鎖)はそれぞれアミノ酸がつながってできた高分子であると説明しました。

コラーゲンの構造をしっかりと理解するためのカギを握るのはこのアミノ酸です。

アミノ酸とは体の20%を占める大きな分子の総称です。私たちは体内でこのアミノ酸を合成したり、食事によって外から摂取することで体を形成しています。

人の体のタンパク質は20種類のアミノ酸から作られているといわれていますが、中でも最も重要になってくるのがグリシンというアミノ酸です。

グリシンとは何?という話になるとだいぶ込み入ってくる上にここではあまり重要ではないので、こいつが大事なんだぐらいの感覚で良いと思います。

前述したようにアミノ酸がつながったポリペプチド鎖にはあるルールがあります。

それはグリシンが3個ごとに現れるという点です。つまりグリシン-アミノ酸X-アミノ酸Y-グリシン-アミノ酸X-...という順番でグリシンが登場するということです。不思議ですね。

ちなみに残りのアミノ酸X、Yにはその他のアミノ酸が入るようです。ただここにも入りやすいアミノ酸というのがあって、プロリンとヒドロキシプロリンが入りやすいと言われています。

そして、これらのアミノ酸がある程度規則的に並ぶことで、1つ1つのポリペプチド鎖(α鎖)はらせんを描きます。

α鎖と3重らせん

そもそも3重らせんを作るためには3本のポリペプチド鎖(α鎖)が必要ですよね。

この3本のポリペプチド鎖が同じ種類である場合をホモ3量体、異なる種類である場合をヘテロ3量体といいます。(ホモはよく同種のもの、ヘテロは異種のものの組み合わせを表すときに科学の世界でよく使われる単語です)

難しい用語の話は置いておいて、要は3重らせんのコラーゲンを作るには3本のポリペプチド鎖(α鎖)が必要になるというわけです。

そして、その3本のポリペプチド鎖(α鎖)の組み合わせも大事になってくるという話ですね。

たとえば、コラーゲンI型の場合は2本のα1鎖と1本のα2鎖の組み合わせでできており、種類の異なるコラーゲンIII型では3本とも同じα1鎖でできています。(コラーゲンの種類については次回詳細に説明しますね)

このようにコラーゲンのポリペプチド鎖を一つとってもかなり複雑なことになっているとわかります。

このポリペプチド鎖(α鎖)自体が左巻のらせん構造を持っています。コラーゲン自体は3本のポリペプチド鎖が右向きにらせんを巻いているので、それをほどいてもまたらせんが現れるということになります。ここまでくると複雑すぎて、頭が爆発してしまいそうですね。

wikipediaより引用

面白いことに、この複雑ならせん構造の組み合わせと、ポリペプチド鎖自体は3個ごとに最も小さなグリシンが現れる構造であるということから、グリシンはコラーゲンの内側に配置されると知られています。

コラーゲン分子を輪切りにして、見ると下図のような形になる。グリシン(G)が中心に来ていることがわかりますね。


リンク先

分子サイズのスケールでこのような幾何学的な構造を持つのは興味深いですよね。

また、グリシンに次いで存在の多いアミノ酸であるプロリンとヒドロキシプロリンですが、このうちヒドロキシプロリンの量が多くなるとアミノ酸の間に生じる水素結合の数が多くなり、コラーゲンとしては安定した構造になるようです。

水素結合って何?と思われるかもしれませんが、水が氷になるときに必要な水素を起因した結合とざっくりイメージしてもらえれば良いと思います。

コラーゲンやアミノ酸と近い領域ではDNAが二重らせんを形成するのもまたDNAが持つ塩基の間で生じる水素結合のおかげです。

コラーゲンの高次構造

さて、無事にポリペプチド鎖から3重らせん構造ができたわけですが、これで終わりではありません。

3重らせんのコラーゲンはさらに組み合わさって大きな分子へと変わっていきます。

太さ1.5nm, 長さ約290nmといった電子顕微鏡で見ても細い線にしか見えないようなコラーゲン分子はたくさん集まってきて1つの繊維になります。これをコラーゲン分子の会合といいます。

こうして細いコラーゲン分子から太くなった繊維をコラーゲン原線維(fibril)といいます。

コラーゲン原繊維自体は太さが10~300nm程度であり、67nmごとに周期的な構造が現れるというも面白いこと特徴を持っています。

このコラーゲン原繊維が集まってさらに大きなコラーゲン繊維(fiber)となります。大きなといっても、私たちの目から見るととても小さな繊維ですね。

リンク先

最終的にこのコラーゲン繊維が私たちの体の中で筋肉や皮膚などといった様々な器官を作っていきます。

最後に

今回はコラーゲンの構造について詳細に紹介しました。分子の配置にもルールがあったり、非常に複雑ならせんを描いていたりと、生命の神秘を感じる構造を持っていることがわかりましたね。

コラーゲンと呼ばれる物質がどんな構造をしているか分かったところで、次回はいろんな種類のコラーゲンについて見ていきたいと思います。

今回紹介した基本的な構造を持ちながら、さらに様々な形に姿を変えるコラーゲンの面白さについて一緒に見ていきましょう

それでは次回もお楽しみに!

参考文献

トコトンやさしいコラーゲンの本他

https://www.jstage.jst.go.jp/article/photogrst1964/61/2/61_2_72/_pdf

https://www.jstage.jst.go.jp/article/koron/67/4/67_4_229/_pdf


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