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【食の科学】第6の味覚”コク”とは何か?

コクのあるカレーやコクのあるラーメンなど、おいしい料理を表す表現としていろいろなところで聞くコクという言葉が使われます。

しかし、このコクと呼ばれる味わいを科学的に説明できる人は多くはいないと思います。

言語化しようも、コクはコクとしか言えない…となりがりでどうにも表現が難しいのが実際ですよね。

そんな昔から知ってはいるけど、説明するのが困難なコクについての研究は進められており、徐々にその実態がわかってきたようです。
今回はコクについての科学的に紹介していきたいと思います。

コクとは

コクという言葉自体は非常に古く、その語源は濃いという言葉か、もしくは穀物が熟したことを意味する中国の酷という言葉だと言われています。

私たちもコクという言葉は普段から使いますが、それは甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の5大味覚とも異なり、刺激でもある唐辛子(カプサイシン)の辛みとも異なります。

それでもコクのあるカレーやシチューといって、おいしいことを表現する1つの表現となっていることはみなさんもご存知でしょう。

調べてみると、コクというのは何か1種類の味覚や痛覚を表しているわけではなく、味覚の複雑さや、口の中での広がり、後味といった要素によって構成される感覚のようです。

コクの3大要素と呼ばれるのは、味の複雑さ、広がり、持続性と言われています。

ただ甘いだけ、塩辛いだけ、苦いだけではコクとは言わず、うま味の中に若干のしょっぱさ(塩味)を感じたり、甘味の中にわずかな苦味を感じたりすると、その複雑さからコクがあると感じます。例としてはカレーにインスタントコーヒーをほんのちょっとだけ入れるとおいしさが向上するというものが挙げられます。

また口の中での味の広がりには口中香というものがあるそうです。これは口の中で味と香りが広がり、鼻を抜ける香りがまさにコクにつながるというわけですね。

鼻が詰まっていると味を感じにくくなるように、この香りの広がりというのはコクに大きな影響を与えます。ちなみに感覚器官としての舌は5大味覚(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)と刺激による痛覚、温度、触覚ぐらいしか感じ取れませんが、一方の鼻の場合は嗅覚受容体が396種類あり、約数十万種の匂いをかぎ分けることができると言われています。

そして3つ目が持続性です。後味が強い料理ほどコクを強く感じます。特に影響を与えるのが脂と言われています。赤身の肉よりもサシの入った肉の方がコクを感じるのがまさに持続性の影響と言えるでしょう。少量の追加油はこのコクを増強するためにとても重要な役割を果たしているわけです。

またコクとおいしさは完全にリンクするとも限りません。というのも、さっぱりしてるからおいしいフルーツなどはコクがないですよね。コクというのはおいしさの1要素であって、コクがないからおいしくないというわけではありません。

コクの研究は進行中

コクを生みだす原因はいまだにわかっていないことが多く、研究が続けられています。

コクを生み出す物質として、2-アセチルフラン、2-エチルヘキサノール、1-オクテン3-オールのように特定の分子が報告されており、これらのようなコクを生み出す分子を含有していると脳がコクのある味わいを感じとることができるようになります。

例えばグルタチオンと呼ばれるコク味成分は、味を感じ取る受容体と反応し、うま味・塩味・甘味の濃厚感や広がりを強めると言われています。

そうはいっても実際の料理ではどのようにコクを追加すればよいのでしょうか?うま味成分であれば、ダシの強い煮干しや昆布、鰹節を入れればいいのかもしれません。もしくは濃縮された味の素のような調味料でも代替可能です。

それに対してコクを生み出す調味料というのは見たことがないですよね。最近の研究ではこのコクを生み出す手段として、タマネギを加熱濃縮したものをスープに添加するとコクが強まるとわかっています。

カレーの味を決める飴色タマネギは同時にコクを生み出しているのかもしれません。もし、タマネギがあう料理を作る際には飴色タマネギペーストを隠し味として加えてみると良いかもしれませんね。


最後に

今回はコクについて調べてみました。意外と知っているようで知らないコクの世界はまさに奥が深い科学であることがわかりましたね。

おいしさの研究は人類の大きな謎の1つです。今後も味に関わる研究は進められていくことでしょう。

科学の力で解き明かされた人類の叡智を使って料理をしていくと面白いかもしれませんね。

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