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博士学生の就活戦略

今回は博士学生の就活について語ってみたいと思います。

かくいう私は修士の時に就活全落ちしてどこもいくところがなかったので博士課程に進学したポンコツ大学院生でした。

そんな私でもそれなりの会社には入れたので、その時の内容を振り返って、これから就活する博士学生の踏み台にでもなれれば良いかなと思います。

というのも、実際博士学生の就活ってほとんどネットにも落ちていなくて、自分と同じような状況の人ってまず見つからないんですよね。私自身も当時は就活のためにリサーチしていましたが、本当に情報が少なくて困っていました。

いろんな人がネットの海に自分の情報を流しておけば、将来よく似た境遇の人が情報収集したい時に役に立つかなと思って、体験記を放流するのが今回の目的です。

そのためこの記事は少し長くなりますが、自分が博士課程の間に経験した就活関連のあれこれを公開します。普段書かないプライベートなことなんかも少し出てくるので、博士の就活に興味がない方はブラウザバックでお願いします。あくまで、現在(または未来の)迷える博士学生に向けてという形で書いていきます。

経歴など

正直、あまり開示したくはないのですが、これは重要な情報です。自分とかけ離れた人の就活情報を見ても比較にも参考にもなりませんからね。自分と似たような境遇かどうかはこれを見て判断するしかありません。

ここでは就活の際に関係のありそうな(履歴書に書きそうな)ことを書いていきます。(これは就活が本格化するD2秋ごろの状態です。)

年齢:26歳(当時)
性別:男
大学:地方旧帝
専攻:材料工学(物理系)
業績:国内学会5回、国際学会4回
受賞:国内1件、海外1件
論文:0本
特許:出願のみ1本
プログラミングスキル:python, C++, Javascript

ハイスペックな博士課程の学生からすればだいぶレベルが落ちますが、正直なところこんな感じです。(受賞してるじゃないかとか!プログラミングできるじゃないか!といわれそうですが、これらについても博士課程の時間さえあれば地頭や能力不要でテクニカルに解決できます。)

こちらの記事を見ていただければ雰囲気わかると思うので、興味があれば覗いてください。

ちなみにM1の就活時は20社受けて全落ち。基本的に面接を通過しませんでした。(この時点で社会性の低さはお察し…)

このことからも私の就活偏差値は明らかに下位20%に収まっているでしょう。

このような状況から、博士課程での本気の就活を経て、以下の結果で終わりました。具体的な会社名は伏せますが、その規模間がわからないと参考にならないので、上場企業かみたいなところは書いていきます。

受かったところ
医療メーカーA社(日経225)→就職
化学メーカーB社(日経225)

受けてないけど望み高かったところ
計測器メーカーC 社(日経225)
計測器メーカーD社(東証一部)

受からなかったところ
化学メーカー数社

見ていただいたらわかると思いますが、自分は日系の大手メーカーのみにフォーカスしていました。そのため外資やベンチャー志望の人には参考にならないかもしれません。

修士の就活で見事爆死し、絶望的な状態から何とか這い上がり、それなりの企業の内定を得ることができました。就活開始の序盤で決まったので、後に控えていたC社、D社は受けずに終了となりました。

ここからは、具体的にどのような戦略で就活をしたのか、順を追って書いていきたいと思います。大枠としては、置かれた状況に関わらず、誰でも実践できる悪くない手ではあると思います。

D1の春:就活の始まり

残念ながら私は今でも社会性が乏しく、就活に向いていない類の人間です。それを自覚していたので、準備は入念にすべきだと考え、D1進学時から動き出しました。

幸運にも自分のいた大学には博士学生を就活支援してくれる場所があったので、そこに駆け込みました。

できる学生なら、こんなに早い時期に行く必要はないですが、底辺大学院生だった私はこの時期にはじめて正解だったと思います。

なぜならD1の春から始めれば、一般的な本番であるD2の秋まで1年半程度の準備期間ができるからです。これは普通の修士学生が使う約10か月の就職準備よりもはるかに長い期間です。

そのため自分はポンコツだ、底辺だと意識している方は恥じらいなど捨ててD1の春から就活をすべきだと思います。

ちなみに四六時中就活のことなど考えてはいませんし、考える必要もありません。基本は研究一筋です。ただ早く始めればその分つかめるチャンスが単純に増えるんです。次からその例を紹介をしていきたいと思います。

まず駆け込んだ博士課程の就活支援室では、担当の先生に就活の基礎を教えてもらいました。これはどこの大学にでも存在するであろう就活相談の先生を頼れば習得できるはずです。

当初はそれほど急ぐことはないと、言われて定期的に面談してもらながら自分の興味や行きたい業界などについての話をしていました。要は多くの就活性が行う自己分析や業界研究というやつに近いものです。

D1の夏:インターン

基本的に就活能力ゼロなので、インターンも通りません。当時の私は数打てば当たる作戦で、10社ぐらいに応募しました。

ありがたいことに、そのうち一社(冒頭のC社)のインターンに参加することができました。普通の修士に向けたインターンでしたので、当然自分以外は皆M1の学生でした。

当時は1つ受かるまで応募し続けようと考えていました。研究もあるので、1週間から2週間程度のインターンに1つ参加するのが限界でした。

研究の合間にエントリーシート(ES)を作成するのは少々骨が折れますが、6月~7月に行われる期間限定のイベントなのでひたすら応募し続けました。それにインターンに受かれば後はいくだけですからね。

実際にインターンに行くと、その会社の人事の方から個別に連絡が届き、その後も数回会社の就活イベントに参加させてもらいました。その中には一般の修士理系向けのものから博士課程向けのものまでありました。ここで1つ目のコネクションができます。

D1の夏:合同企業説明会

インターンは完全に個人で動きましたが、大学の博士学生の就活支援室では、大学に企業を呼ぶ博士向け合同説明会を開いてくれていました。

形式としては学生がポスターで発表を行い、それを企業の人に見てもらうという形です。そこで企業の人と仲良くなって就活につなげましょうといった感じです。

主な参加者はD2,D3,ポスドクですぐにでも内定が欲しい人たちです。D1の人のほとんどは様子見になりますが、それでも行っておくのはおすすめです。

なぜなら、企業の人向けのポスター発表は学会とまるで違うからです。自分の研究をがっつり発表したところで、それを理解してくれるような人はほぼいないでしょう。

むしろ、自分の研究をどんな会社の人に対してもざっくりと伝える訓練が必要とされます。要は厳密性よりもわかりやすさが重視される発表です。これは学会慣れしている人でも練習していなければ、かなり難しいでしょう。

D1の秋:他大学主催の合同企業説明会

自分の大学ではそんな企業との合同説明会は開かれないよ、という方もいるかもしれませんが、意外と他大学で行われている説明会に参加することも可能です。

私の場合は就職支援室を経由して応募しましたが、民間がやっている合同説明会もあるので、探してみると良いと思います。交通費はかかりますが、旅行だと思って参加すれば、研究の息抜きになるでしょう。(現在はコロナ禍ということもあり、オンラインの方が多いと思います)

結果的に、D1で参加した合同説明会は練習という形に終わりました。

D2の夏:インターン

冬から春にかけては本採用面接の時期になるので、会社公式のインターンなどは少なくなります。修士向けの冬のインターンに申し込んだり、この時期にも開かれる合同説明会にタイミングを見つけて参加したりするのもありだと思います。

D2の夏もD1の夏と同様でした。受かるまで応募し続けるだけです。

ただ、これまでに1年間の修行を積んできているので応募が先に進む数が少しずつ増えていきます。それでも、人並みといったところでしょうか。(ポンコツにとっては大きな前進です。)

これが就活苦手な学生が早めに始めた方が良い理由です。D1の時は思う存分失敗できます。D2からやって間に合う優秀な人は問題ないでしょうが、全落ちのトラウマを抱える残念博士学生は経験値を積んでおいたのが吉と出ました。

D2の夏は興味のあった業界である医療メーカーA社のインターンに参加しました。結局、就活本番ではここの早期選考を受けられ、内定をもらえたので、こちらに就職しました。

D2の夏:合同企業説明会

毎年開催される合同説明会ですが、自分にとってはD1の夏と秋に続き3回目になります。

そのため、どのようなポスターを作ればよいか、どのように企業の人にコンタクトを取ればよいか見てきています。これまで見てきた優秀な博士学生の動きを真似て、実践します。

ポスター作りはすでに書いたようにわかりやすくすること。そして、もう1つ大事なことは浅く広く企業を捕まえるのではなくて、発表を聞いてもらって感触の良かった企業と深く仲良くなることです。

私はこの時、後に内々定をくれる化学メーカーB社の人事と深めのコンタクトを取りました。研究内容は全く関係ないものの、なぜだか自分に興味を持ってもらえたので、こちらとしても話しやすかったです。

そして本番の就活の際に明らかになったのは、人事の影響力は偉大だということです。かなり親身になってくれて3回ある面接も無事通過し内々定をいただくことができました。

D2の秋:本番前

本番に差し掛かる直前までにしておいたほうが良いことがもう1つあります。それは就活用のスカウトサービスへの登録です。覚えている限りでは、以下のサイトに登録しました。

アカリク
Offerbox 
Offerbox Ph.D
Ph.D-engine wakate
LabBase
iroots

ただ、これらはあまりあてにしない方が良いです。スカウトのほとんどは自分の興味と異なる企業からになりますからね。

結果論になるので、バイアス込みの評価にはなりますが、LabBaseからはかなり丁寧なスカウトが来ていたと思います。大手計測器メーカーD社からのスカウトもこのサイトを通じてきました。

具体的にどのような部署にアサインしたいといった旨の内容だったので、もし入れたらどうなるのかの想像がしやすいというのもありがたかったです。

その後、オンラインで面接がありインターンのお誘いもありましたが、選考が遅かったこともあり、受けませんでした。

D2の冬:本番

とりあえず、ダメ元で早期選考が始まっていた化学系のメーカーには出しました。案の定落ちました。

もともとの就活戦闘力がないポンコツがなんの準備もなしに挑戦したところで、勝ち目はないとわかりました。

重要なのは、自分がこれまで手に入れてきたチャンスをきちんとものにできるかです。すなわち、インターンに参加させてもらった企業や説明会で自分に興味を持ってくれた企業に対して、内定を勝ち取るのが重要ということになります。

結果は冒頭に書いた通り、インターンに参加した医療メーカーA社と説明会で仲良くなれた化学メーカーB社の内々定をいただき、A社に決めて終わりました。(内定をたくさん獲得する能力も時間もないので)

その直後に、インターンに参加した計測器メーカーC社と、スカウトをくれたD社から連絡がありましたが、お断りという形になりました。

聞かれたこととしては、ありきたりなことでググれば出てくるような内容です。一方で、博士学生ならではかもしれない設問としては以下の通りです。

・分野外でも一生懸命取り組めるか?
・後輩への指導と指導教官との関係性
・卒業のための論文の状況

そして周り(特に修士学生)と差をつけなければならないのは、研究紹介のわかりやすさです。ここまで長々と書いてきましたが、本番までにさまざまなケースで練習しているので大丈夫でしょう(研究歴も長いわけですし)。

逆に、学会しか経験していないと就活における研究紹介が全然だめで話を聞いてもらえない…なんてこともありえるので、練習だと思っていろいろ参加しておくのは大事です。

最後に

誰の得にもならないので普段自身のプライベートな情報は出さないようにしているのですが、今回ばかりは仕方なく開示しています。ちょっと恥ずかしいですね。

もし、博士学生で就活にお困りの人がいたら、noteのコメント欄でもTwitterのDMでも相談に乗ります。(役に立てるかはわかりませんが)


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