指を鳴らして4000℃以上を発生させるエビ
みなさん、テッポウエビというエビをご存じでしょうか?
薬を使って一時的に超能力を使えるようになるプロジェクトパワーという映画で「テッポウエビが動物の中で一番強い」というフレーズがありました。
ハリウッド版テラフォーマーズといわれるのも納得の映画なんですが、テッポウエビはハサミから衝撃波を発生させて獲物を捕獲・威嚇するというので、気になって調べてみました。
テッポウエビとは
テッポウエビは大きなハサミを持っており、これを強く閉じることで気泡が発生し4000℃を超える衝撃波を出して、敵を気絶させます。
https://www.youtube.com/watch?v=XC6I8iPiHT8
動画を見てみると爆発というよりは相手に向かって放つ衝撃波という感じですね。
人間がこの能力を使ったら指を鳴らしただけで、高温衝撃波を発生させて周りのものを焼き尽くしてしまうんですね。映画のネタバレをするのは良くないですが、確かにすごい描写でしたね。
というか、指先が4000℃になったら体がもたないんじゃなかとも思いますが、そんなことができる動物がいるなんて驚きです。
キャビテーションとは
そもそもテッポウエビはどのように衝撃波を発生させているのでしょうか?
テッポウエビが大きなハサミを閉じるときに水の流れが生じます。
急激な水流は、キャビテーションと呼ばれる現象を引き起こし、これが衝撃波を生み出します。
キャビテーションとは水圧の高いところと低いところが生じることで、小さな気泡が生み出される現象です。この小さな気泡が消滅する際に急激な温度上昇と衝撃波が発生するようです。
キャビテーション自体は古くから知られており、高速で回転する船のスクリューがボロボロになってしまう現象もキャビテーションが原因だといわれています。
テッポウエビを模倣したエコな衝撃波装置
このテッポウエビの面白い特徴を真似することで、人工的に強力な衝撃波を作り出す研究がされています。
水中でものを高速で動かせばキャビテーションが起きるんでしょと思いますが、実はそんなに単純な話ではないようです。というのも、キャビテーションを発生させることはできてもそれを特定の方向に発射するのは難しいのです。
なおかつ、高温プラズマ衝撃波は非常にエネルギーが高い状態なため、人間が使おうとすると無駄にエネルギーを使う必要があります。
その点、テッポウエビのハサミは特殊な形をしており、この形状がキャビテーションを決まった方向に発射することができるようになっています。さらに、無駄なエネルギーを消費することなく自然に優しいプラズマ衝撃波装置となります。
そこで、研究者たちはまず脱皮したテッポウエビのハサミから型を作り、プラスチック製の人工ハサミを作りました。
しかも、ばねを使った簡易的な動力を用いてハサミを閉じることで、テッポウエビが行うようにプラズマ衝撃波を狙い撃ちすることができるようになりました。
最後に
実際のところ、気泡が4000℃以上になっているのはわかりませんが、それに相当するエネルギーを発生させているということなのでしょう
また、この能力はキャビテーションを利用しているため、空気中ではできないような気がします。とはいえ、水中でもこんなすごいパワーが出せるのは驚きです
私は泡・キャビテーション関して知識が少ないのでざっくりしたレビューになってしまいましたが、良かったらググってみてください。微小気泡ファインバブルなんかは最近流行りなので、時間があったら調べてみたいですね。
参考文献
Xin Tang and David Staack, Bioinspired mechanical device generates plasma in water via cavitation, Sci. Adv. 2019; 5.
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