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【読書感想文】なぜ君は、科学的に考えられないんだ?

タイトルにあるように「なぜ君は科学的に考えられないんだ?」なんて言われたら多くの人が、なんて強い言葉を使うんだ…きつい人だななんて思うでしょう。

しかし、ある程度科学に取り組んできた身からすると世の中の多くの出来事が科学的でない観点から進んでいるようにも感じます。

そして同時に科学的に考えられない人が多いというのも事実でしょう。

そんな日本国民に向けて、ストーリー仕立ての小説で科学的に考えるというのはどういうことなのかをわかりやすく教えてくれる小説「なぜ君は、科学的に考えられないんだ?」を読んだので紹介したいと思います。

ストーリーの概要

化粧品会社に勤める文系女性の主人公が変人大学教授との出会いを通じて科学的に考えるということについて学ぶ物語です。

それだけ聞くとなんだか難しいように感じますが、そんなことはありません。まさに小説という形で科学について変人教授が教えてくれるという体を取っており、主人公はその中で少しずつ学んでいきます。

ただ大学教授が教えるだけのお話では面白くありませんよね。この小説は大学教授と科学的に考えることを学ぶ主人公の物語と並行して、パワハラ上司との戦いといったストーリーも組み込まれており、普通の小説としても楽しめます。

それでいて、やはり科学的に考えることに重きが置かれているので科学についての理解が深まるお話だったと思います。

正直、小説を普段読まない私にとっては小説という形が少々難しく感じましたが、物語に入り込めると続きが知りたいと思うほど物語としても面白かったです。

変人教授の教え

本書では次のような科学において重要なことが教えとして出てきます。どれも研究室では口酸っぱく指導される内容ですが、科学の世界になれない方はそうなんだ !知らなかった!と驚かれる内容もあるかもしれません。

  • 用語を定義する

  • プレゼンでは指示語を使わない

  • あいまいな“肌に合う”とか“熱い・冷たい”といった表現は使わない

  • 現象を理解して数値を使う

  • グラフは正しく表現する

  • 統計を理解する

  • 証拠を正しく集める

私もこのnote記事ではざっくりとした(科学的には許容されない)表現を使うことが多いです。

それはあくまで科学的に正しく書くことよりもざっくり雰囲気を理解してもらいたいというのが先行してしまっていると思います。

ベストを考えれば当然、科学的に正しく面白い文章を書くことが大事になることは明白ですが、私の力量では現状が限界といったところでしょう。(そもそも語彙力がない…)

科学的に考えられない人

タイトルの「なぜ君は、科学的に考えられないんだ?」はド文系主人公にあてられた教授からの強いメッセージのように思えますが、実はそれだけではありません。

この作品にはもう1人全く科学的に考えられない人が出てきます。それがストーリーとしてもラスボスとなる相手なわけですが、その人物は最後まで科学的に考えることができず教授と対立しています。

その科学的に考えられない人物の言い分としては、ビジネスマンはビジネスを考えることが大事で科学的に考える必要なないんだといいます。科学的に考えるのは研究者の仕事だと…

確かに科学を考えるのは研究者の仕事かもしれません。しかし、ビジネスの内容を“科学的に”考えるのは全ての人間がすべきことだと思います。

教授も科学的に考えるとは次のように言っています。

“科学的にとは、論理的に、自分も含めて世界中の人たちを納得させることだ”

本編より引用

物語の中で語られているので文脈もあるんですが、まさにわかりやすく言えば、この言葉に尽きると思います。

この表現をしたときに、数学的に物理的にといった科学の各論は必要としません。重要なのはその論理性と正しく説明し納得させられるかというところに焦点が当たっています。

そして、これを実現するためには冒頭で紹介した教授の教えを一つずつ愚直に行う必要があるんです。

最後に

活字が苦手な私でも電車の中で1日で読んでしまったので、ちょっとでも興味がある方は是非一度読んでみてほしいです。

研究などに携わる人からすると当たり前な教えかもしれません。正直内容自体は全て聞いたことがあるものでした。

しかし、このような一般的にとっつきにくい科学的な考え方というのをストーリー仕立てで多くの人に知ってもらうという取り組みはとても素晴らしいことだと思いますし、ある種エンタメに変換するというのはキュレーション活動をしている私にとっても大変勉強になりました。

残念ながら、私にはまだまだ伝える力が足りていませんが、科学というのは面白いものなんだ、科学的に考えることが大切なことなんだということを人生を通して伝えていけるようになりたいものですね。

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