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【星の砂の秘密】気候変動のカギを握る小さな生き物

お土産などで売られている星の砂をご存じでしょうか?

その名の通り星の形をした砂のようなものなんですが、実はあの星の砂、有孔虫という生き物が作り出した殻なんです。

今回は、そんな有孔虫が作り上げる殻の不思議について紹介したいと思います。

有孔虫とは

有孔虫は海に生息する数十ミクロンから数ミリ程度の非常に小さな生き物です。

この有孔虫は自分の体の周りに石の殻で部屋を作るという特徴があります。これは貝殻やサンゴに見られるバイオミネラルの一種であり、同じように炭酸カルシウムを使って殻を作り上げます。

実は、この有孔虫の殻は過去の気候や海洋状況について教えてくれる重要なものであり、海洋の炭素循環にも大きな役割を果たしているようなんです。

今回紹介する論文では、2つのプランクトン性有孔虫、Orbulina universaとNeogloboquadrina dutertreiの殻について、その複雑な殻(星の砂)のでき方を研究しています。

左:Orbulina universaと右:Neogloboquadrina dutertrei(参考文献より引用)


有孔虫の作り出す殻の秘密

O. universaとN. dutertreiの貝殻を、湿気や乾燥の状態に応じて保管し、フォーカスイオンビーム支援透過電子顕微鏡法とフーリエ変換赤外分光法を使用して分析を行いました。

ちょっとわかりにくいかと思いますが、要は微細な構造をすごくよく見える顕微鏡で見たり、光を当ててどんな組成なのかを確認したりしています。

その結果、繊維状構造に豊富なナノメートルサイズの空孔を持つマイクロ構造が明らかになりました。

さらにこの繊維状構造は、貝殻表面に直角に整列し、同様の回折コントラストを示し、一貫した結晶学的配向を示しているようです。

普通、穴があちこちに空いているような複雑な構造ではきれいな結晶になりませんが、ここではきれいに原子が並んでいることがわかったということですね。

普通ではない結晶構造

これまでプランクトン性有孔虫の殻の結晶学構造は、従来、同じ種類の無機炭酸カルシウム鉱物の結晶学構造と考えられていました。

このような電子顕微鏡像と回折図形をもとに解析を進めていく(参考文献より引用)

しかし、本研究の発見は、有孔虫の殻が、従来考えられていたものとは異なる炭酸カルシウムの形態であるバテライトから形成されていることを示しています。

これらの発見は、有孔虫の殻の形成という基本的な生物学的プロセスに関する私たちの理解を深めるだけでなく、過去の気候変動の解析に役立つ可能性があるそうです。そんなに壮大な話になるというのは驚きですが、あの砂粒のような殻から気候変動がわかると思うとすごいですね。

現在、海洋酸性化が進行しており、これは将来的に有孔虫の殻の形成に影響を与える可能性があります。したがって、これらの研究成果は、将来の気候変動に対する対策の重要性を強調するものなんだそうです。

このように、プランクトン性有孔虫の殻の形成に関する新たな発見は、地球科学、生物学、そして環境科学の分野で重要な進展であり、将来の気候変動に対する理解を深めるために役立つことが期待されます。

また、これらの技術の進歩は、微小な生物学的サンプルを分析するための新たな手法を開発する上で、非常に重要であると言えます。

最後に

今回は星の砂を生み出す有孔虫についての研究を紹介しました。有孔虫という小さな生き物が生み出す結晶構造についてはまだまだ分からないことがたくさんありようやくその秘密が少しずつ明らかになってきたようです。

そして、こんな小さな生き物が地球上の気候変動のカギを握っていると思うと面白いですね。

参考文献

Planktic foraminifera form their shells via metastable carbonate phases

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