人間だって結晶を作るよ:バイオミネラル
前回、生き物が作り上げる結晶であるバイオミネラルについて紹介しました。
今回は私たち人間が作り上げるバイオミネラルについて紹介したいと思います。
いやいや、結晶って硬いものでしょ?そんなの人間がつくるのと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
なぜなら、私たちの体を支える骨がまさに結晶でできているわkですから。
人間だって結晶をつくる
私たちの体を支える骨もまた結晶の1つです。
骨の結晶の主成分はヒドロキシアパタイトと呼ばれる物質であり、この結晶を含んだ繊維が複雑に階層構造を持ってできています。
図をよく見てみると分かると思いますが、私たちの骨のすべてが結晶のヒドロキシアパタイト」でできているわけではありません。小さな結晶がコラーゲンの繊維の中に含まれて、骨を形作っているわけです。
参考文献[1]より引用
骨の繊維は結晶とは言わないと思いますが、配向繊維といい、向きをそろえて骨を形成しています。このような配向繊維の構造解析についてはこちらの記事をご覧ください。
骨が私たちの健康の上で重要だということは何となくわかるのではないでしょうか。
現在では、骨粗しょう症などの深刻な病気を解決するために骨の結晶の研究は積極的に行われています。
また私たちが毎日のように使用する歯もまた結晶でできています。歯のエナメル質では小さなアパタイト結晶が向きをそろえて並んでいます。これが非常に硬い機械特性を発揮することで私たちはものを噛むことができるわけです。
人に害を及ぼす結晶
反対に、結晶がつくれれば何でもいいわけではありません。
風が吹くだけでも痛いといわれる痛風は、尿酸ナトリウム結晶が成長し刺激することで激しい痛みを生じます。
尿酸ナトリウム結晶[2]
いかにも痛そうな針状の結晶です。
(形がトゲトゲだから痛いのかはわかりませんが、あんまりいい見た目ではないですね…)
他にも、尿結石も人間がつくりだしてしまう忌まわしき結晶の1つです。私は経験がないのでわかりませんが、壮絶な痛みを伴うそうです。怖いですね…
以前、参加した学会で聞いた話では、いまだに結石ができる機構は明確に解明されているわけではないようです。
とはいえ、臓器のどの位置で結晶がつくられているかなどは、だいぶ分かってきており、それが尿路などに落ちる前にどうにか処理することができれば、多くの患者を救うことができます。
最近では、病気となる結晶を作らないようにするため、結晶成長の研究者たちが結石などの研究を行っています。
結晶をつくるプロなら、できないようにすることだってできるということですね。
自分がこれらの病気にかかる前に解決策を打ち出してほしいですね!
最後に
ここでは紹介しませんでしたが、他にも魚の感覚器官である耳石や結晶ではないですが植物が生み出すプラントオパールなども有名はバイオミネラルの一種です。
普段から結晶の研究をしていても、やはりバイオミネラルはロマンがあります。
また、いつかバイオミネラルについてフォーカスしてもう少し細かい内容を紹介したいですね。
参考文献
[1] Mehdi Farokhi, Fatemeh Mottaghitalab, Saeed Samani, Mohammad Ali Shokrgozar, Subhas C.Kundu, Rui L.Reis, Yousef Fatahi ,David L.Kaplan, Silk fibroin/hydroxyapatite composites for bone tissue engineering, Biotechnology Advances 36, (2018) 68-91.
[2]https://www.wikiwand.com/ja/%E7%97%9B%E9%A2%A8
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