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【博士課程で学んだこと】第6回:研究の作り方

このシリーズの第1回では研究開発というものは自分で生み出すものですよと書きましたが、それではいったいどのようにすれば新しい研究テーマを生み出すことができるのでしょうか。

大学の先生やベテラン企業研究員の目線はわかりませんが、平凡な一学生ができることといった観点から、研究テーマの作り方について考えてみたいと思います。

研究テーマを作るには

学部3,4年生で研究室に配属されて研究テーマを自分で作るように言われるのは極まれかと思いますが、大学院生になれば話は別です。ましてや博士学生になれば、テーマの創出は避けられません。

ここでは自分が実践した研究テーマの作り方について紹介したいと思います。

セレンディピティを探し続ける

研究には必ず目的がありますよね。目的がない研究なんて聞いたことがありません。

とはいえ、学部生や修士学生の時から目的に合わせて研究したからといってうまくいくとは限りません。余程先生やポスドク研究員のテコ入れがあって作りこまれたテーマならまだしも、そうではない場合はなおさらです。

そんな中でできることの1つとして、とにかくセレンディピティ(偶然の発見)を探し続けることがあります。正直、この方法は体力任せの方法ともいえるのであまりおすすめできませんが、希望的な展望が見えない場合はこの方法しかありません。

とりあえず、既存の目的に沿って実験をしつつ何か面白い結果が出るまで頑張るということです。そのためには、時間と資金も必要ですが、それが許されるならあとは自分の気力と体力との勝負ということになります。

実際に私も修士の頃はがむしゃらに実験を行い偶然の発見をして、メインの研究テーマを立ち上げました。当初の目的とは異なるものになりましたが、一応このテーマで学位を取ったので、最低限はクリアしていたといってもいいのかもしれません。(そう信じたい)

ちなみに、セレンディピティというと研究の醍醐味とも言え、とても面白く素晴らしいものだと思われるかもしれませんが、初めて結果を出した際には先生からかなりツッコミを受けました。

要は、セレンディピティと思っているものがただの偶然であって、本当にそれが理論として正しそうなのか?という点を強めに確認されるわけです。確かに自分が監督する立場だったら、ぽっと出の結果を鵜呑みするのは怖すぎますよね。

偶然の結果が確かに科学に新しい領域をもたらすのかを確認出来たら、ようやく研究が始まります。この偶然を見つけるまでが死ぬほど大変なのに、そこからがスタートというのも研究の大変なところでもあります。

2つの技術を掛け合わせる

次に、私が作った研究テーマは前述のセレンディピティとは真逆のすべて理詰めて考えたものです。修士の終わりに近づいてくると、それなりに研究分野への知識も深まり、その幅も広がっていきます。(毎日12時間ぐらい費やしていればそうなるでしょう)

その培った知識をかけ算することで新しい研究を創出するということですね。

ここでおすすめしたいのはシンプル×シンプルといった考え方です。

超難しい複雑な学問分野同士を掛け合わせることなど、並大抵の学生にはできません。ましてや私のようなポンコツ人間にできる芸当ではありません…

逆にシンプルなもの同士を掛け合わせるというのは、ポンコツにだってできますよね。問題はその掛け合わせでできたものが、世の中に役に立つのか?科学の進歩につながるのか?そもそも実現できるのか?といった観点から見る必要があります。

当然、自分が作り出した技術が世の中のためになることはしっかりと調査する必要がありますし、その価値をしっかりと担当教員に説明する必要があります。

しかし、この2つの技術(知識)のかけあわせというのはとても汎用的で、意外と掛け合わさってなかったりするんですよね。その盲点を突く感じで、ニッチなところを攻めれば、新たな研究テーマとして立ち上がるはずです。

他分野技術を応用させる

これは2つの技術の掛け合わせに近いですが、少しだけ異なります。

基本的に学生は研究室に入るとそこで使えるアセットがあるはずです。つまり研究室の先生が持っている研究テーマですね。

その研究をより発展させて新しいことをしようと思ったらどうするでしょうか?そこで、ヒントになるのが他分野の研究手法です。

自分たちの研究室ではやられていないけれど。お隣の研究室では普通に使われている方法っていうのもあるのではないでしょうか?

当然、それが自分たちの研究に使える保証はありませんが、もし使えそうな技術や手法があるのであれば、それを自分たちの研究に適用するだけで良いんです。

意外と簡単なわりに実用性が高い方法といえるでしょう。

また、新しく導入する手法は、自分たちの研究から離れば離れるほど面白い研究になるはずです。それは誰も予想していなかった研究内容になりますからね。

私が立ち上げたわけではありませんが、学会で見かけたとある技術を自分たちのチームに適用できないかと先生に話した内容が、今研究室で実際に行われているようです。

ここで1つ注意なのが、他の研究室オリジナルの手法をパクるわけではないということです。

ある分野では一般的に使われているけど、自分たちの分野では使われていない方法を採用するというのが正しいかと思います。

最後に

今回は研究テーマの創出方法について、ポンコツなりに書いてみました。ポンコツ学生だった私にでもできたので、きっと誰でもできるはずです。

ただ前述したようにセレンディピティを探すのは研究室の資金力と当人の気力・体力に依存するので要注意ですね。

これから研究室に入って、研究を始める学生さんも多いと思いますが、可能であれば自分の研究テーマを作るのをおすすめします。それがインパクトのある内容だったらきっと先生も容認してくれるはずです。

会社に入って新しいテーマを立ち上げようと思うと並大抵の努力では難しいですからね。研究室ぐらいの小さなコミュニティで一度練習をすると思ってやってみるのがいいのではないでしょうか。


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