ひまわりの花粉からロボットを作る
嘘だろって思うタイトルですが、将来的には花粉を使ってロボットの筋肉部分であるアクチュエーターという部品を作ることが可能になるようです。
今回は、そんな花粉を使った新材料によって湿度センサーをつくり、さらにそれを応用することでロボットの部品まで作ってしまったという驚きの研究を紹介します。
この花粉がロボットになると思うとちょっと驚きですよね!
花粉を使って湿度を測る
最近台風などで天気が悪くてジメジメする時期が続いていますが、私たちの生活にとって湿度というのはとても大きな影響を与えています。わかりやすい話では、湿度が高いとカビが生えやすいですし、逆に湿度が低いと火災が起きやすいですよね。
そんな湿度を測定するための湿度計は古くは湿度に敏感な動物の毛が使われていたそうです。現在はもっと高精度なものが使われているようですが、結局湿度を測るということは湿度に敏感な材料を使うことになります。
今回、新しくつくられたのは花粉を混ぜ込んだゲルで作ったフィルムです。柔らかく伸縮自在な材料(ソフトマター)ですが、環境の水分に応じて膨張・収縮を起こします。
これはフィルム中の花粉の間に水分子が入り込むことで起きるようです。
フィルムを上手に作ると、湿度に応じてフィルムが曲がります。その曲がり方を見て湿度を測定できるというわけです。
参考文献より引用
ゴム手袋をしていると掌からの蒸発がないため水を吸収しませんが、手袋を取ると手からの水を吸収して曲がります。
湿度が高くて空気中の水分が多いと吸収して膨張するという原理としては非常に単純なのですが、比較的容易に作製できるうえ、繰り返し使用できる安定性と非常に敏感という点から、湿度センサーに期待されています。
ここまででも、とても面白い研究なのですが、この研究はさらに展開を見せます。
花粉入りフィルムを使ってロボットの筋肉を作る
ソフトロボットと呼ばれる柔らかいロボットの動きを作る筋肉はモーターのようないわゆる機械という感じではなくて柔らかなゲルやゴムのようなものが使われます。
このやわらかい筋肉は電気信号などによりゲルの状態を変えることでゲルを膨張・収縮させることで動きをもたらします。我々人間の筋肉も部位によって筋肉を伸ばしたり縮めたりすることで腕を伸ばしたり曲げたりすることができます。
今回作られた花粉入りフィルムは部位によって伸縮度合いを変えることができます。
KOHという薬品に長時間さらすことで、フィルムの厚さを薄くすることができ、それにより伸縮度合いを制御することができます。
つまり薬品を使ってフィルム内で厚みを変えることで、同じ湿度でもよく曲がる部位とあまり変化しない部位が出てきます。
その結果、まるでシャクトリムシが動くようにフィルムが動いてまるでロボットのようなふるまいをします。
参考文献より引用
将来、このままの状態でロボット化するとは思えませんが、この技術を使うことで少なくともソフトロボットの筋肉部分にはなりえます。
こちらのサイトでは論文の補足が動画になっており、わかりやすいです。最後のWalking Robotなんてまるで生きているかのような動きをしています。
最後に
私も、湿度によって構造が伸縮する材料を扱っているので、ここまで調べている研究を読むと驚きというよりも感動の方が強いです。
最近、環境の変化によって構造や物性が変わる材料が話題な気がします。(個人的見解)
これは環境変化に対して動的なふるまいを示す材料はセンサーやソフトロボットと相性がいいという背景があり、この研究もその1つととらえられます。
今後も似たような特徴を示す材料が次々報告されるのを期待しましょう。
参考文献
Ze Zhaoa, Youngkyu Hwanga, Yun Yanga, Tengfei Fana, Juha Songb, Subra Suresha, and Nam-Joon Cho, Actuation and locomotion driven by moisture in paper made with natural pollen, PNAS | April 21, 2020 | vol. 117 | no. 16 | 8711–8718.
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