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#5|僕らの心はずっと少年まま

先日、ERWITのミュージックビデオを出掛けてくれている写真家、澤平桂志くんが遊びに来た。


せっかくなのでミュージックビデオも貼っておこう。


遊びにというか、現在2人で受け持っている仕事があって、その制作ついでか。


もともと桂志くんは大学の先輩で、今もなお僕が信頼している数少ないクリエーターだ。


2人で案を出し合い、散歩して、写真をプリントして、散歩して、家の床に座り込み写真のレイアウトして、散歩して、と大学時代のグループ制作そのものだった。

僕はサウンド・インスタレーションといって、音を扱う領域のゼミだったので、フォト(写真)ゼミとは別の塔で作業をしていた。とはいえ、絵や写真などといった視覚芸術にも興味があったので、時折フォトゼミの研究室にお邪魔させてもらっていた。

その頃から、桂志くんは輝いていた。


ある時、ランドセルくらいある偉く年季の入ったカメラを桂志くんが持ってきて「実験に何枚か撮らせてよ!」と言ってきた。その姿がまるで、新しく買ったゲームを一刻も早くプレイしたい!と息巻く少年のようで、この人は本当に写真が好きなんだな、とクスッとしたのを今でも鮮明に覚えている。


その時の写真がコチラ。

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少年が撮ったとは思えない渋さである。



あれから7年も経ったのか。

感慨深い。


卒業後、僕は岐阜の大学院へ進学し、桂志くんは東京の有名なフォトスタジオへ修行しに行った。

そして、領域は違えど互いに制作を続け、再会し、あの頃を再開した。


そういえば僕が上京する少し前に、桂志くんから一通のメッセージが届いた。

「今、エスカレーターの上と下で、小学生くらいの子たちが手話を使って楽しそうにお別れの挨拶してた!めっちゃグッときたわ〜」


そんな些細な光景にグッとくる桂志くんに、僕はグッときてしまった。


最近読んでいる本、聴いている音楽、痺れた作品、グッときた光景。こういうものを共有できる友人がいるだけで、生活は豊かになるものだな、と歳を重ねて気がついた。


お金を稼ぐことは絶対に大事、うまい料理を食うのも程々に大事、だけど、文化的な事柄に触れ、それらを共有することこそが人間としての幸福に繋がるのだと知った。


桂志くんにお勧めしてもらった "暇と退屈の倫理学" という本にも書いてあった。

「わたしたちはパンだけでなく、バラも求めよう。生きることはバラで飾られねばならない」

きっとこれは、少年少女の心を、トキメキを忘れないでいようということだろう。


環境が変化しようと、少し哲学するようになろうと、髭がどれだけ伸びようと、僕らの心はずっと少年のままである。



息絶えるその瞬間まで、少年のままで在り続けたい。



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