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漫画日記2 未来へ運ぶ

こんにちは。
初心者書店員えりたです。
本日は漫画日記です。

というか、
コミック担当なのに
あまりコミックのことを書かないのは
どうしても活字に流れてしまうから(笑)
読みたい本が多すぎて
コミックまで辿り着かないんですよね、
体力とか時間とか集中力が。
でも、まぁ少しずつ読んでいきます。

そんなこんなで。
本日のコミックです。

『葬送のフリーレン』①~⑦(以下続刊)
■原作:山田鐘人
■作画:アベツカサ
■小学館 少年サンデーコミックス

先日、最新⑦巻が発売になった
『葬送のフリーレン』。
2021年マンガ大賞を受賞していますし。
うちのお店でもよく売れていますし。
たくさんの方が知っているとは思いつつ。

『葬送のフリーレン』はこんな物語です。

勇者たちとの過去を未来へ運ぶ
魔法使い・フリーレン。
今は亡き勇者たちへ捧ぐ
”後日譚”ファンタジー!
『葬送のフリーレン』⑦帯の文言より

フリーレンは魔法使い。
勇者ヒンメルたちと共に旅をし、
ついに魔王を倒すのです。
そして、時は経ち。
勇者たちは黄泉の国へ旅立ちました。

けれども。

フリーレンはエルフだから。
10年や100年など
ほんの一瞬のものでしかなかったから。
彼女だけは変わらず、歩き続けます。

でも、仲間たちの死に接して
彼女は思い知ります。

…人間の寿命は
短いってわかっていたのに…
…なんでもっと
知ろうと思わなかったんだろう…

そこから本当の意味で
フリーレンの旅は始まるのです。
①巻の裏表紙にある
「物語は”冒険の終わり”から始まる」
という言葉が
この物語を端的に言い表しているかなと。

そして、この発想がすばらしいなと思うのです。

勇者の冒険そのものではなく
その後日譚、しかも、
その勇者たちの去った後の物語を
過去と現在をクロスさせながら描く。
この物語を初めて読んだ時
「その発想はなかった」と
マジで感嘆したものです。

・・・

終わりから始まる物語だからか
この『葬送のフリーレン』には
いつもどこかにせつなさがあります。

そのときにはわからなかった
勇者ヒンメルや仲間たちの言葉や行動を
フリーレンは旅路を辿り直すことで
ようやく理解していく。

そのせつなさ。
そんな自分の変化を
仲間たちに直接伝えることは
もうできないかなしみ。

彼女の理解はもしかすると
遅すぎるとも言えるかもしれない。
でも、きっとヒンメルたちは
そんなフリーレンを
「フリーレンらしいよね」と
ほほえんで受け入れると思うんです。

そして、何より。

後悔もせつなさも
全部受け入れて。
前に進んでいく強さ。
それらを全部糧にして微笑むしなやかさ。

思い出はいつもキレイだけど
それだけじゃお腹が空くの。

この物語を読むたびに
ジュディマリの『そばかす』の歌詞を
思い出したりしながら。
フリーレンの強さ、しなやかさを
少しの痛みと共に感じ、
彼女の心の中にいる
ヒンメルたちの温かさに触れ
やさしい気持ちが湧いたりするのです。

・・・

今のフリーレンの旅の仲間である
フェルンやシュタルク。
彼らもヒンメルたちが繋いでくれた縁です。

過去を未来へ運ぶ。
それは魔法でできることではなくて。
「現在」を精一杯生きるからこそ
可能になるものなのだなと。

人は変わるし、変わらない。
それでも。
過去の思いがあるから
現在を生きられることだってあるし
その現在をけん命に紡ぐことが
過去を未来へ運ぶことになる。

分かりやすいカタチ
たとえば、
銅像(笑)とか記録とか
そんなものはなくても
きっと残るものはある。

ちょっとズレるかもしれませんが。
私が国語講師という仕事を続けていたのは
「私」という人間のカケラが
教えた生徒たちの
どこかに残ってくことが
幸せだったというのも
理由の一つなんですよね。

私には子どもはいません。
諸事情があり
子どもを持つという選択肢は
私にはありませんでした。

それでも。

教えた生徒たちが
私のカケラを持っていってくれると
なぜか信じていたから。
それを無邪気に信じられたから。
だから、
わりとブラックな仕事っぷり(笑)でも
がんばれたのかな、などと
思ったりするのです。

閑話休題。

『葬送のフリーレン』は
少年マンガにはめずらしく
淡々と穏やかに進む物語です。
読むと、
やさしく温かな気持ちになれること
請け合い。
今ならまだ浅い巻ですし、
ぜひぜひお手に取ってみてください。

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