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数字、数字と言う勿かれ―村上靖彦『客観性の落とし穴』

「数字で示してもらえますか」
「それって個人の感想ですよね」

強い口調でこう言われると、思わず口をつぐんでしまいます。

「数字」を根拠にしている側が絶対的な「正義」で、そうではないところで言葉を発する人は「無知」であるかのような、どこか嘲りや侮りを含んだ言葉たち。

自分に対して言われたものでなくても、それを耳にするだけで、思うよりもずっと大きめの衝撃を身に受け、時間が止まったような感覚にさえ陥ってしまいます。

でも、それらの言葉に違和感を覚えたことはありませんか?
超ドヤ顔して上からイキり迫ってくるその言葉たちに、どこかいらだちを覚えたことはありませんか?

私はあります。

何がどう、とはっきり言葉にできるわけじゃない。でも、その言葉を聞くと「何かちがう」と感じるし、こちらの意向を完全にシャットアウトしてくる態度を表明してくる語句たちに、はっきりと腹の立つこともあります。だからと言って、その腹立ちのまま言葉を返せば、相手の思うつぼなので、黙るしかなくなるのですが…

今日ご紹介する本は、「その考えは客観的なものですか」といった言葉や考え方について、

■その考え方がどこから来たのか
■なぜ違和感やいらだちを覚えるのか
■では、どうすればいいのか

などを分かりやすい言葉で論じています。

「私は違う」とどれほど思おうと、現代文明の中で生きる私たちはおそらく全員が「数値化」という錨を思考のど真ん中に下ろしています。そのことを自覚するためにも、あるいは、それが何をもたらしているのかを知るためにも、すっごく読んで欲しい1冊です。

■『客観性の落とし穴』について

■村上靖彦 著
■ちくまプリマ―新書
■2023年6月
■800円+tax

「その意見って、客観的な妥当性がありますか?」
この感覚が普通になったのは、社会の動きや人の気持ちを測定できるように数値化していったせいではないか。それによって失われたものを救い出す。

■「客観性」という網の目に

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