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寝具に歓迎されない日

木曜日が好きじゃない。
土日が休日の私は、木曜には既に一週間分の疲れが蓄積し、明日は休みだと錯覚するほどだ。けれども明日は金曜日で出勤せねばならない。
その現実を突き付けられる木曜日がとても嫌いだ。

朝から『今日は9時に寝る!』を目標にし、晩酌もそこそこに床へと入った。
目標達成の9時だった。

ところが、いつも快適に寝られているはずの寝具が硬く感じた。木の上に寝てるのかというほどに身体が痛い。枕までもが誰かがすり替えたのかと疑うほどに高さがしっくりと来なかった。

おかしいな、このベッドはいつも私が使うものなのにと、右や上や左やらと体勢を変えながら、しっくり来るポジションを探すが決まらない。
枕も低すぎる。
どうやら今日の寝具と私との相性は最悪のようだった。
こちらが歩み寄ろうと右や上や左へと身体を動かしたとて、少しも安眠へと導いてはくれない。

私の特技は椅子に座ったまま眠ってしまえる寝付きの良い所のはずだ。横になれば5分とかからず寝落ちできるのは私の自慢だったはず。
だのに一向に眠りの世界には入れずに、時は流れて行った。

たまに、そんな具合で寝具に歓迎されない日がある。
なぜだろう……?
気合いを入れすぎて早くに床に入ったのがいけなかったのか……?
しかし昼休みは椅子に座ったままでも寝落ちできるのになぜ……?

私は滅多にしないうつ伏せ寝でアプローチしてみた。
上半身がマットレスに包まれ、少しの間は安心感にうっとりとしたが、ダメだ。頭の位置をどう枕とフィットさせるのかが分からない。まっすぐだと顔を枕に埋めることになり息苦しいし、頭だけ横に向けたとて首がぐしゃっと曲がり、時と共に痛みが増してくる。

うつ伏せ寝というアプローチも失敗に終わった。

私は上を向き、観念して目を開けた。
薄暗い中ぼんやりと天井を見る。
スマホで時間を確認すると、もうすぐ23時になろうとしていた。私はポジショニングに二時間近くを費やし、結局9時に寝るという目標を達成させることはできなかったのだ。

まあいい。そんな日もある。

私は開き直ることにした。心配ない。朝までには寝られるはずだ……と。
そう腹を括りながらも、寝心地の悪さに右や上や左へとコロンコロンと寝返りをせずには居られなかった。納得出来るポジションを探し続けて、ふと思った。

こんなにも自由に寝返りを打てる私は、なんて幸せ者なんだろう……と。

職場の寝たきりのご老人は、私たちが体位交換をしなければ寝返りも打つことはできない。同じ姿勢で寝続ければ褥瘡(床ずれ)や、その他のリスクもあるというのに自分のさじ加減で自由に右や上や左へと動けないのだ。

今日の寝具との相性は最悪だけれど、私は自己にて当たり前に寝返りが打てるありがたみを身に染みて感じさせられた。
何故かマットレスが木みたいに硬く感じる今日だけど、布団の中は暖かい。
それで充分じゃないか。
私は再び目を閉じた。

 

 

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